エサ=ペッカ・サロネン

指揮
Esa-Pekka Salonen, Conductor
※招聘オーケストラとの来日
エサ=ペッカ・サロネン
©DG

バイオグラフィー

 指揮者であり作曲家でもあるサロネンは、ヘルシンキに生まれた。当地のシベリウス音楽院に学び、1979年、フィンランド放送交響楽団を指揮してデビュー。1985年から95年までの10年間は、スウェーデン放送交響楽団の首席指揮者、1995年と96年には、ヘルシンキ音楽祭の音楽監督を務めた。また、1992年から2009年まで、ロサンジェルス・フィルハーモニックの音楽監督を務め、2009年4月には、同楽団の桂冠指揮者の称号を授与された。
 
彼は、2008年9月よりフィルハーモニア管弦楽団の首席指揮者・芸術顧問を務め、2012/2013シーズンには就任5年目を迎える。就任1年目のシーズンには、「夢の都、ウィーン」というプロジェクトを立ち上げ、リーダーシップを発揮した。これは、9ヶ月におよぶ一大プロジェクトで、1900年から35年までのウィーンの音楽や文化を紹介しようというもの。マーラー、シェーンベルク、ツェムリンスキー、ベルクらの作品が、社会的、歴史的背景を踏まえて上演された。同シリーズは、ヨーロッパ18都市においてコンサートが行われ、セミ・ステージ形式によるベルクの「ヴォツェック」(タイトル・ロールをサイモン・キーンリーサイドが歌った)で、クライマックスを迎えた。
また、このプロジェクトのレコーディングは、2009年9月発売の「グレの歌」を皮切りに、フィルハーモニア/シグナム・レーベルから順次発売された。2009/10年シーズンの主な活動としては、マグヌス・リンドベルイ「グラフィティ」のイギリス初演、ヨーロッパ各国や今回の日本ツアーなどが挙げられる。

エサ=ペッカ・サロネンとフィルハーモニア管の芸術的コラボレーションの主軸となっているのは、様々な目標を掲げた有名音楽祭への参加、20世紀の主要な作曲家による作品の開拓、そして、彼らが置かれている文化的、社会的、歴史的な状況における可能な限り幅広い音楽活動である。フィルハーモニア管は、2013年に、サロネンの音楽の師であり、また、よき助言者でもあったヴィトルド・ルトスワフスキの生誕100年を記念して、「言葉の終わるところから音楽が始まる」と題したルトスワフスキ・プロジェクトを、ヨーロッパ各地で開催する予定である。2013年という年は、もう一つの重要な100周年の年でもある。つまり、ストラヴィンスキーの代表作「春の祭典」が初演されてからちょうど100年目に当たる年である。エサ=ペッカ・サロネンはこれを記念して、100周年記念日の頃にフィルハーモニア管を率いてパリのシャンゼリゼ劇場(1913年に世界初演が行われた場所)とロンドンのロイヤル・フェスティバル・ホールでこの曲を演奏する予定である。2012年秋からは、フィルハーモニア管を率いた大規模なアメリカツアーを開始するが、ツアー中には、カリフォルニア大学バークレー校のレジデンスとなることも予定されている。
 
こうした共演を重ねることによって、サロネンとフィルハーモニア管の25年以上におよぶ信頼関係は、さらに揺るぎないものとなった。サロネンは1983年9月(25歳の時)、同楽団を指揮してロンドンでのデビューを果たした。これは、マイケル・ティルソン・トーマスの体調不良により、急遽代役でマーラーの交響曲第3番を指揮したものだが、その演奏は今や伝説的名演と言われている。この成功により、たちまちフィルハーモニア管の信頼を勝ち取り、団員たちと強い絆で結ばれることになった。彼は1985年から94年まで首席客演指揮者を務め、それ以降も定期的に同楽団を指揮。この期間にフィルハーモニア管が取り組んだ最も意欲的かつ重要なプロジェクトの多く ─ リゲティ「時計と雲」(1996)からマグヌス・リンドベルイ「リレイティッド・ロックス」(2001-02)に至る多数の作品─ が、サロネンのもとで演奏された。
 
エサ=ペッカ・サロネンは、オペラにおいても、ワーグナーからサーリアホに至る、従来のレパートリーの枠を越えた幅広いレパートリーに取り組んでいる。2013年には、ファン待望のパトリス・シェローの新演出によるリヒャルト・シュトラウスの「エレクトラ」を、エクサン・プロヴァンス音楽祭で演奏する予定である。

 2009/10年シーズンは、ニューヨーク・フィルハーモニック、マーラー室内管弦楽団、バイエルン放送交響楽団等にも客演し、2009年8月には、ザルツブルク音楽祭でウィーン・フィルハーモニー管弦楽団を指揮した。また、メトロポリタン・オペラとミラノ・スカラ座では、パトリス・シェロー演出によるヤナーチェクのオペラ「死者の家から」を指揮した。2009年のメトロポリタン・オペラのオープニングを飾ったこのプロダクションは、後に「オペラティック・イベント・オブ・ザ・イヤー」という高い評価を得た。なお、2013年の新演出による「エレクトラ」は、ミラノ・スカラ座とニューヨーク・メトロポリタン・オペラの共同制作であるが、その後のシーズン中にも、サロネンの指揮で引き続き公演が予定されている。

 ロサンジェルス・フィルの音楽監督在任中に行った主な活動としては、ザルツブルク音楽祭(1992年)におけるメシアンのオペラ「アッシジの聖フランチェスコ」や、パリ・シャトレ座でピエール・ブーレーズとの協力により開催した「ストラヴィンスキー・フェスティバル」(1996年)の他、数え切れないほどのヨーロッパ・ツアー、日本公演などがあり、2009年4月には、彼の音楽監督在任17年を祝して、記念コンサート・シリーズが行われた。サロネンは客演指揮者としても大いに活躍しており、ウィーン・フィル、バイエルン放送交響楽団、北ドイツ放送交響楽団、シカゴ交響楽団、ニューヨーク・フィルなどには定期的に客演している。
 
権威ある賞も数多く受賞しており、1992年には、彼の作品「フルーフ」によりユネスコ国際作曲家会議賞、1993年には、キジアーナ音楽院から指揮者としては初のシエナ賞、1995年には、ロイヤル・フィルハーモニック・ソサイエティーからオペラ賞、1997年には、同ソサイエティーから指揮者賞、1998年には、フランス政府から芸術文化勲章「オフィシエ」、2003年には、フィンランドのシベリウス音楽院から名誉博士号、2005年には、同じくヘルシンキ・メダルを授与された。2006年には、ミュージカル・アメリカにより「ミュージシャン・オブ・ザ・イヤー」に選出。さらに2009年6月には、香港演芸学院から名誉博士号を授与された。2010年4月には、アメリカ芸術科学アカデミーの名誉会員に選ばれ、2010年5月には、南カリフォルニア大学から、2011年5月には、ロンドン王立音楽大学から、それぞれ名誉博士号を授与された。2012年には、ルイヴィル大学(アメリカ)のグロマイヤー賞(作曲部門)を受賞した。

 現代音楽の解釈に定評があるサロネンは、多数の初演を手がけており、ベルリオーズ、リゲティ、シェーンベルク、ショスタコーヴィチ、ストラヴィンスキーなどの作品でも大絶賛を博している。サーリアホの作品には特に力を注ぎ、2006年、パリ・オペラ座バスティーユでオペラ「アドリアナ・マーテル」を初演。2004年にフィンランドで初演された最初のオペラ「はるかな愛」も、彼の指揮によるものであり、2007年には、ヘルシンキ・フェスティバルにおいて、ピーター・セラーズ演出によるオラトリオ「シモーネの受難」(フィンランド初演)を指揮した。

彼はまた、バルト海音楽祭の共同創設者であり、2003年より芸術監督も務めている。これは、毎年8月に世界の一流オーケストラ、指揮者、ソリストらを招いて、ストックホルムなどバルト海沿岸の地域で開催される音楽祭で、沿岸諸国の協調と環境保全への意識を高めることを目的としている。2012年の夏には、サロネンが考案し高い評価を獲得しているワーグナーの「トリスタンとイゾルデ」のユニークなプロダクションを、フィンランド放送交響楽団とともに同音楽祭で演奏する予定である。2004年にロサンジェルスで初演されたこのプロダクションは、サロネン、演出家のピーター・セラーズ、映像アーティストのビル・ヴィオラという三者の緊密なコラボレーションによって生み出されたものである。さらにこのプロダクションは、2012年8月のヘルシンキ・フェスティバルでも演奏されることになっている。

 サロネンは作曲家としても活躍しており、彼の作品は世界中で定期的に演奏、および放送されている。「フルーフ」と「LAバリエーションズ」はモダン・クラシックというジャンルの曲として認められている。彼のヴァイオリン・コンチェルトは2009年、リーラ・ジョセフォウィッツのヴァイオリン・ソロとロサンジェルス・フィルにより初演され、2012年、ルイヴィル大学のグロマイヤー賞(作曲部門)を受賞した。以来、このコンチェルトは、ヨーロッパやアメリカで広く演奏されている。彼の作品が取り上げられたこれまでの演奏会のうち特筆すべきものとしては、以下の3つの公演がある。一番最近のものは、2011年2月、パリのプレザンス音楽祭における公演であり、残る2つは、2004年10月のストックホルム国際作曲家音楽祭と、2003年3月のヘルシンキ・ムジカ・ノヴァ音楽祭における公演である。これらはいずれも満場の聴衆の前で演奏され、批評家たちから高い評価を獲得した。サロネンはオーケストラ曲もいくつか完成させており、その例としては、フィンランド放送交響楽団の委嘱による「フォーリン・ボディーズ」(2001年)、東京のサントリーホールとハンブルクの北ドイツ放送の共同委嘱による「インソムニア」(2002年)、2004年6月にウォルト・ディズニー・コンサートホールで初演された「ウィング・オン・ウィング」などが挙げられる。「ウィング・オン・ウィング」は、ロサンジェルス・フィルが新しい拠点ホールを得たことを祝して、サロネンが同オーケストラに贈った曲である。2007年2月には、サロネンがイェフィム・ブロンフマンに捧げたピアノ・コンチェルトを、サロネン指揮ニューヨーク・フィルとブロンフマンのピアノ・ソロで初演した。このピアノ・コンチェルトはニューヨーク・フィル、BBC放送、ラジオ・フランス、およびハンブルク北ドイツ放送の共同委嘱によるものでもあった。なお、エサ=ペッカ・サロネンの作品は、チェスター・ミュージック社が専属出版している。

 サロネンの自作曲を収録した2012年の新しいCDとしては、ドイツ・グラモフォンからヴァイオリン・コンチェルト(リーラ・ジョセフォウィッツのヴァイオリン・ソロ)、2011年作曲のオーケストラ曲「ニュクス」(フィンランド放送交響楽団と共演)がリリースされる予定である。また、ソニーからはサロネンの5曲のオーケストラ曲を収録したCDがリリースされている。この他にも、ドイツ・グラモフォンからは、サロネン指揮フィンランド放送交響楽団によるサロネン自作のオーケストラ曲集のCDと、サロネン自作のピアノ・コンチェルト、オーケストラ曲「ヒーリックス」、およびピアノ曲「ディコトミー」を収録したCDがリリースされている。後者はロサンジェルス・フィルとイェフィム・ブロンフマンとの共演によるものであるが、このCDは2009年11月にグラミー賞にノミネートされた。

 サロネンの自作曲以外のCD録音も多く、フィルハーモニア/シグナム・レーベルからは、2009年9月の第1弾「グレの歌」に加えて、マーラーの交響曲第6番、第9番、ベルリオーズの「幻想交響曲」などが発売されている。ドイツ・グラモフォンからは、2012年中に、ショスタコーヴィチの近年新たに発見されたオペラ「オランゴ」のプロローグ(ロサンジェルス・フィルとの共演、世界初録音)や、アンリ・デュティユーの主要作品を収録したCD(フランス放送フィルとの共演で作曲者自身の立ち合いの下に収録)がリリースされる予定である。さらに同レーベルからは、フィンランド国立歌劇場におけるカイヤ・サーリアホのオペラ「はるかな愛」のDVD、エレーヌ・グリモー(ピアノ)との共演によるペルトとシューマンの作品集(2枚)などがリリースされている。2006年10月にリリースされた、ロサンジェルス・フィル/ドイツ・グラモフォンというコンビとしては初録音の、ストラヴィンスキーの「春の祭典」(ウォルト・ディズニー・コンサートホールにとっては初のCD収録)は、2007年12月にグラミー賞にノミネートされた。さらに、ソニー・クラシカルでも長年にわたって録音を行い、マーラーからレヴエルタス、リンドベルイそしてサロネン自身の作品まで幅広いレパートリーの膨大な数のCDをリリースしている。なお、彼の作品の大半はi Tunesの「ドイツ・グラモフォン・コンサーツ・シリーズ」からも入手可能である。

 2010/2011シーズン始めから、サロネンは、ドルトムント・コンツェルトハウスのレジデンス・アーティストとなった。3シーズンにわたる同地での芸術的生活の中で、サロネンは「エクスペディション・サロネン」と銘打ったプロジェクトを通して、ドルトムント・コンツェルトハウスという組織に、指揮者、作曲家、そしてクリエーターとして、自身の人生の足跡を残してきた。ドルトムント・コンツェルトハウスでは、フィルハーモニア管弦楽団、マーラー室内管弦楽団、バイエルン放送交響楽団などを指揮した他、フィルハーモニア管とのインタラクティヴ・デジタル・プロジェクトとして大成功を収めた「Re-Rite」(ストラヴィンスキーの「春の祭典」)のバーチャル・コンサート(2011年秋)も行った。

 サロネンがテクノロジーやデジタル環境の応用と普及に力を注いでこられたのは、数々の斬新なプロジェクトにおけるフィルハーモニア管の協力によるところが大きい。2012年には、同管弦楽団デジタル部門とのコラボレーションにより、インタラクティヴで高解像度のオーディオ・ビジュアル設備「音の宇宙」を、ロンドンの国立科学博物館に開設した。また、2009年にロンドンで初演されRPS賞を受賞したバーチャル・コンサート・プロジェクト「Re-Rite」は、その後のシーズンにも引き続き、ドイツ、ポルトガル、中国、トルコなどで公演され、2013年春には「春の祭典」100周年を記念するイベントの一環として、再びロンドンで公演される予定である。

オフィシャル・ホームページ: esapekkasalonen.com
ツイッター: @esapekkasalonen

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