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樫本大進 記者懇親会レポート(「ル・ポン国際音楽祭 赤穂・姫路」)

ベルリン・フィルハーモニー管弦楽団日本公演でコンサートマスターとしての大役を務め、現在【樫本大進&小菅優&クラウディオ・ボルケス トリオ】ツアー中の樫本大進の記者懇親会を行いました。
今回の話題の中心は、今年10年目を迎える「ル・ポン国際音楽祭 赤穂・姫路」です。
Q:樫本大進さんが音楽監督を務める「ル・ポン国際音楽祭 赤穂・姫路」は、どのようなことを目指してスタートしたのでしょうか。
樫本大進:この音楽祭はまず僕の母の実家があり、僕自身も小さい頃から度々訪れていた日本における故郷、赤穂市でスタートしました。「日本らしさを感じられる場所」で、そして「子どもたちにもクラシック音楽を身近に感じてもらいたい」という思いから始まっています。もともとは、もう10年以上前に、エマニュエル(・パユ)、ポール(・メイエ)、エリック(・ル・サージュ)が南仏のプロヴァンスで行っている音楽祭に呼んでもらって、そのアットホームな雰囲気、音楽を街の人たちと手作りで一緒に楽しんでいることに感激したことがきっかけです。ぜひ僕もこういう音楽祭を行いたい、と思い、赤穂の市長さんに直談判したのです。

Q:2007年に第1回目を開催された赤穂市ですが、初回からご主催いただいている赤穂市文化とみどり財団の理事長 岡島三郎さんにも一言いただけますでしょうか?
岡島三郎:2005年頃に最初に樫本さんから音楽祭の構想を聞いた時、本当に出来るのか、アーティストは来てくれるのか、予算はどれだけ必要になるのか、と沢山の心配が頭をよぎりました。しかし、樫本さんがこだわった「気軽に足を運べる音楽祭に」という理念に賛同し、素晴らしいアーティストが無償で集まって下さることになり、地元の方々からの温かい協賛・寄付も頂戴し、チケット代1,000円で素晴らしい音楽を聴くことが出来る音楽祭が実現したのです。この音楽祭を始め、今年10回目を迎えることができるのは、まず「アーティストの皆さんの素晴らしい演奏」があったこと、そして「珍しいプログラム(曲目)」を恐れずにむしろ楽しんできたからだと思います。実は知っている曲、有名な曲をプログラムに入れて欲しい、と樫本さんにお願いしたこともあったのですが「赤穂でしか聴けない曲を披露していくことも大事。そうすると赤穂だけでなく日本中の皆さんが聴きに来て来てくれることになる。」と樫本さんに説得されました。今ではその言葉どおり、日本各地からこの音楽祭を聴きに来てくださる。嬉しいですね。

Q:赤穂市と一緒に音楽祭を開催なさっている姫路市の東京事務所から所長の阪口昌弘さんからも一言いただけますでしょうか?
阪口昌弘:姫路市では2008年から音楽祭を行っています。コンサートホールでのコンサートだけではなく、姫路城や書写山圓教寺での趣のあるコンサートはやはり特別です。姫路城には普段夜は入れませんが、コンサートが開催される夜は特別ご入場いただけます。ライトアップされたお城の横でのコンサート。ぜひ皆さんもいらしてください。
<写真左:姫路市東京事務所所長、阪口昌弘氏。右:赤穂市文化とみどり財団理事長 岡島三郎氏>
Q:この音楽祭には「ル・ポン」という素敵な名前がついていますが、その由来を教えていただけますか?
樫本大進:赤穂に続き、姫路で音楽祭をスタートする時に、姫路市の市長さんが「架け橋」という意味のタイトルをつけたらどうか?とご提案くださったのです。いろいろな言葉を考えていくうちに「架け橋」という意味のフランス語「ル・ポン」が響きも美しく、ぴったりだと思ったのです。

Q:ソリスト、コンサートマスターなどとしてお忙しい中、10年間毎年、赤穂と姫路に帰って音楽祭を行っているのはなぜでしょうか?
樫本大進:日本に帰ってくると東京に音楽会が集中していることを感じます。世界に目を向けてもパリ、ロンドン、ニューヨークなど大きな都市に集まってきています。でも僕が育って今も住んでいるドイツは、もちろんベルリンは大きな都市ですが、ミュンヘン、フランクフルト、ケルン、ハンブルクなど、それぞれの街にそれぞれの街のコンサート会場や劇場があり、それぞれの文化を担っている。このことは本当に大切だと思います。これはアイデンティティーにつながる重要なものなのです。
音楽会というのは、楽しみに行く場所だと思うのです。それが少し難しく、固苦しいものになってしまっていることがあって残念だなぁと思うこともあります。音楽の原点に戻れる、音楽家も、聴きに来てくださる方も音楽をリラックスして楽しめる、そんな音楽祭を赤穂・姫路で行うことに、僕は意味を感じています。

Q:今回10年目ということで東京のサントリーホールで演奏会を行いますが、意気込みをお聞かせいただけますでしょうか?
樫本大進:10年目を迎え東京でコンサートを行いたい、ということですが「東京だから特別なものを!」と特段意識しているわけではないのです。むしろ赤穂・姫路でしていることを、愉しんでいる雰囲気をそのまま東京に持っていきたいと思っています。いつものように、のびのびと自由に音楽を愉しんでいる僕たちの演奏を、一緒に愉しんでいただけたらと思います。
普通、演奏会を行う時はプログラムを決めてからアーティストに出演を依頼することが多いかと思うのですが、僕の場合は逆なのです。まず出演して欲しいと思うアーティストに声をかけて、それで集まった仲間たちでプログラムを考えるのです。だから、その編成の曲を探したり、研究したり、意見を聞いたり・・・しながらプログラムを組むのです。ただやはり今年に関しては、エマニュエル(・パユ)、ポール(・メイエ)、エリック(・ル・サージュ)の3人には絶対に参加してもらいたかった。その願いが叶って本当にうれしいです。

Q:音楽監督としてのご苦労はありますか?
樫本大進:おかげさまで、僕はアーティストやプログラムのこと、音楽に関わることだけを考えていれば良い、という状況にしてもらっているので、本当に感謝しています。それぞれの市の行政、スタッフ、ボランティアの皆さんに支えてもらっていることが本当にありがたいです。アーティストたちも最初は「日本の美味しい食事と、温泉が楽しめる」と言って誘っていたのですが、今では一度参加した人がまた次も参加したいと言ってくれたり、その評判が口コミで広がったりして、参加したいと言ってくれる人がたくさんいる。嬉しいです。

Q:ボランティアの方々はどのように関わっていらっしゃるのですか?
岡島三郎:ボランティアの募集は、赤穂と姫路で連携をしながら一般公募しています。アーティストのお手伝いをする通訳ボランティアと当日の公演会場でお客様をお出迎えしたりご案内したりするボランティア、2種類の参加形態があります。
阪口昌弘:特に姫路城のような野外会場では、入口から実際の特設ステージまで少し距離がありますので、お客様を誘導するためのボランティアの方々には多数ご活躍頂いています。
樫本大進:毎年たくさんのボランティアの方々に支えて頂いています。いまでは毎年のように繰り返し参加してくださっている方も多くなりました。アーティストとボランティアの距離もとても近く、手作りのケーキを持ってきて下さったりもします。このように毎回温かく迎えてくださる方々がいるからこそ、アーティストの皆さんにも「また帰ってきたい」と思って頂けるのだと思います。

Q:10年の間に、ベルリン・フィルのコンサートマスターに就任されたと思いますが、そのことが音楽祭の活動に影響を与えていることはありますか?
樫本大進:逆ですね。ベルリン・フィルの活動が室内楽の演奏に影響するというよりは、音楽祭での室内楽の経験がベルリン・フィルでの活動に良い影響を与えていると思います。サイモン(・ラトル氏)も良いコンサートの後に「室内楽のようにに演奏できた!良かった!」と言うことがありました。一緒に音楽する、みんなが自発的に演奏して一つものを作りあげる、という室内楽の精神がベルリン・フィルでの演奏の姿勢につながっていると思います。

Q:今年はDAISHIN YEARということで、コンサートマスターに続き、トリオ、ソリストなどさまざまな形でコンサートがあります。ベートーヴェンの作品は小さい時からずっと演奏なさってきたと思いますが、今向き合ってみてそれはどのように変わってきたのでしょうか?
樫本大進:ベートーヴェンは何回演奏してもアーティストとして満足しきれない、次に弾く時にはまた違う何かを発見できる作曲家です。ソナタをレコーディングして演奏会を行ったことが最初ですが、ベルリン・フィルで交響曲全曲でき、トリオも取り組んでいっていますが、どこまで行っても終わりのない「永遠の作曲家」です。

Q:ベートーヴェンのヴァイオリン協奏曲を共演するのはパーヴォ・ヤルヴィ指揮ドイツ・カンマーフィルです。
樫本大進:パーヴォはベルリン・フィルに指揮しに来た時や、彼がベルリンに(他のオーケストラを指揮しに)来た時など、一緒に食事をしていました。でもソリストとして協奏曲で共演するのは今回が初めてです。ずっと親しくしていたので、ずっと一緒に音楽をやってきたような感覚はあります。2013年にパーヴォがパリ管弦楽団とのツアーのために来日した時、僕もベルリン・フィルの日本公演で日本にいました。ソリストとしてプロコフィエフの協奏曲を演奏したコンサートをパーヴォが聴きに来てくれて、ぜひ近いうちにコンチェルトを一緒にやろう!と言って下さり、とても嬉しかった。
パーヴォもドイツ・カンマーフィルとベートーヴェンを集中的に取り組んできていますので、共演するならベートーヴェンを弾きたい!と思いました。


<5月22日サラマンカホール終演後>
現在、ベートーヴェン:ピアノ三重奏曲でツアー中の樫本大進。
3公演を終え、各地で前半から大きなブラボーを呼び起こす熱演を繰り広げています。
ツアー最終日の5月30日東京オペラシティ公演では、あらゆるピアノ三重奏曲の中の『王様』、第7番「大公」が演奏されます。
時代を担う若き3人の実力派ソリストによる共演。ぜひご期待下さい!
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小菅優 新プロジェクト「ベートーヴェン詣」第1弾!深遠な世界を創り上げる、至福の室内楽
樫本大進&小菅優&クラウディオ・ボルケス トリオ

2016年5月30日(月) 19:00開演 東京オペラシティ コンサートホール
公演詳細はこちらから
≪全国日程≫
5/26(木) 京都・青山音楽記念館(バロックザール)
5/28(土) 兵庫県立芸術文化センター
5/29(日) 横浜みなとみらいホール
5/30(月) 東京オペラシティ コンサートホール


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