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横山幸雄 デビュー25周年記念リサイタル「何度も演奏している曲は、完成度と即興性をより自然に共存させることができる」

デビュー25周年を迎えた横山幸雄が、来る1月にサントリーホールで記念リサイタルを行う。取り上げるのは、自身のピアニスト人生にさまざまな形で関わってきたレパートリーだ。
「コンセプトを決めるにあたって、改めて25年前と比べて最も変化したことは何かと考えてみたのです。学生として音楽を勉強していた頃は、昔から聴いてきた巨匠のレコードや先生の言葉が少なからず表現に影響していました。でも歳を重ね、その“呪縛”のようなものから自由になって、自分の表現を追求できるようになった。これが最大の変化だと思いました」

 そんな自由で即興的な表現の境地を投影するべく、モーツァルト、シューマン、シューベルト、ショパン、リストの幻想曲や即興曲に関連する作品を集めた。
「昔の作曲家は即興演奏が得意でしたが、その録音はもちろん残っていません。これがもし採譜されていたら、幻想曲や即興曲のようなものになっていたと思うのです」

 冒頭で取り上げるのは、モーツァルトの幻想曲とピアノソナタ第14番というつながりのある2作品。それに続くシューマンの「幻想曲」は、意外にも、これまでステージで弾いたことがないレパートリーだという。
「シューマンのピアノ曲には、一人の人間が10本の指でピアノを弾いたのでは表現しきれないような、爆発的なイマジネーションが込められています。彼自身が卓越したピアニストでなかったこともあり、自然に指が動く形で書かれているわけでもありません。さらに、繰り返される音楽が毎回わずかに変えられている部分も多く、稀にそれがミスプリントということも。一つ一つの音を納得したうえで弾きたいと思うととても時間がかかって、なかなかステージにのせられませんでした。頭の中で、時間をかけて熟成させてきた作品です」

 最近の録音で取り上げたシューベルト「即興曲」や、15年ぶりに弾くというリストの「スペイン狂詩曲」も聴きものだが、やはり楽しみなのは、横山のピアニスト人生にとって欠かせないレパートリーであるショパン。今回は、アンダンテスピアナートと華麗なるポロネーズ、バラード第1番、幻想即興曲やノクターン遺作といった、比較的初期の作品を取り上げる。
「デビューから一貫して弾き続けてきた作品ばかりです。何度も演奏している曲は、どこに寄り道をしても戻ってくることができる。完成度と即興性をより自然に共存させることができます」
ショパンの独奏曲全曲を1日で弾く演奏会をはじめ、類まれなバイタリティで、次々驚くような企画に取り組んできた横山。「人間は、追い込まなくては楽なほうにいってしまう。毎日のように本番があるくらいの生活だからこそ、緊張感を保つことができる」というが、その“追い込み方”にも変化が現れてきたようだ。
「全体を知ってから突き詰めたいという想いがあって、若い頃はレパートリーを増やしていきました。でもこれからは、じっくり一つの作品に向き合うことで生みだされるものも大事にしたいと感じています」
 25周年の節目に立ち、より深く自由な表現を求めていく横山の姿を見ることができそうだ。

高坂はる香(音楽ライター)
photo:吉田タカユキ
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デビュー25周年記念
横山幸雄 ピアノ・リサイタル
2017年1月21日(土) 18:30開演 サントリーホール
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