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指揮者フィリップ・ジョルダン その人と音楽 その1

12月にウィーン交響楽団と来日する、フィリップ・ジョルダン。インタビューを交えたフィリップ・ジョルダンのご紹介を2回わたってお届けいたします!!「私の考えでは、ブラームスはあまり重く演奏すべきではありません。叙情性と室内楽の精神、そしてシューマンの音楽のような親密さが必要です。交響曲第1番の冒頭はあくまでフォルテ。世界の多くのオーケストラはフォルティッシモで演奏しますが、大きな誤解だと思うのです」

 ウィーンのカフェでのインタビューで、フィリップ・ジョルダンは端正な表情でこう語った。この時私は、ジョルダンという指揮者の内面的で繊細な側面を垣間みた思いがした。

 フィリップ・ジョルダンは1974年、指揮者アルミン・ジョルダンの息子としてチューリヒに生まれた。スイス・ロマンド管弦楽団の首席指揮者を務めるなど、著名な指揮者である父親を見て育った影響はやはり大きかったようだ。6歳でピアノを始めるも、「一人ではなく、人と共に創造的な仕事をすることに惹かれて」9歳の時にはもう指揮者になりたいと思ったという。チューリヒはスイスの中でもドイツ語圏の都市で、この街で音楽や演劇、オペラ、ムジークテアターに深く結びついた生活を送ったことがジョルダンの芸術の基礎を形成した。ウィーン交響楽団のコンサートマスター、ビリー・ビュッヒラーはジョルダンについて、「特にマエストロはドイツ・ロマン派に精通しています。ドイツ文学をよく理解しているので、作品が本来こうあるべきだという姿で表現することができるのです」と述べているが、それは冒頭のジョルダンの言葉とも重なり合う。

 ジョルダンは、昨今では数少ない劇場でのたたき上げの指揮者といえる。早くも19歳の時にウルム市立歌劇場のコレペティトゥアとして最初のキャリアを積み始め、後にカペルマイスターになる。大きな転機になったのは、1998年から4年間、ベルリン国立歌劇場でダニエル・バレンボイムのアシスタントを務めたことだろう。筆者がジョルダンの名前を知り、頻繁に実演に接したのもこの頃だった。興味深いことに、ジョルダンがバレンボイムから学んだ特に大きな点は、「答えを出すことではなく、問いかけること」だったという。「誰かを真似したりコピーしたりするのではなく、自分で自分の解釈を見つけること。ベートーヴェンの交響曲も、常に新しい問いを投げかけ、その度に違う答えが出てくるものだと思います。答えが1つしかないのなら、それは死んだ音楽も同じですから」

 バレンボイムの背中を見ながら、多くの公演を振る機会に恵まれたジョルダンは、そこでさらにレパートリーを広げ、表現を深めることになった。現在彼は、パリ・オペラ座の音楽監督として年間約50の公演を振り、2014年からはウィーン交響楽団の首席指揮者としてシンフォニーのレパートリーも精力的にこなす。早くから注目され、世界中を飛び回る現代のスター指揮者のような派手な道は歩まなかった一方、時間をかけてじっくりと音楽の養分を吸収した。オペラ、シンフォニーの両方で信頼できるパートナーを得て、いよいよ才能の花を咲かせようとしているのが、フィリップ・ジョルダンという音楽家なのである。

文:中村 真人(ジャーナリスト・ベルリン在住)

◆オンエア情報 NHK-Eテレ「旅するフランス語」
「第16章 大人のたしなみ1」ジョルダンの特別インタビューが放送されます。
http://www2.nhk.or.jp/hensei/program


◆フィリップ・ジョルダンのプロフィールなどアーティストの詳細
http://www.japanarts.co.jp/artist/PhilippeJORDAN


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ジョルダンが聴衆を熱くする、ウィーン響の覚醒と新時代!
フィリップ・ジョルダン指揮 ウィーン交響楽団 ヴァイオリン:樫本大進
2017年12月1日(金)19:00サントリーホール
12月3日(日)14:00 サントリーホール
詳しい公演情報はこちらから