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2017年11月4日チョ・ソンジンがベルリン・フィルと初共演!

チョ・ソンジンがベルリン・フィルと初共演11月4日、ピアニストのチョ・ソンジンがサイモン・ラトル指揮ベルリン・フィルハーモニー管弦楽団の特別演奏会に出演し、ベルリン・フィルとの初共演を果たした。そもそもは、11月のベルリン・フィルのアジアツアーにソリストとして同行するはずだったラン・ランが左腕の腱鞘炎によりキャンセルしたことで、チョに白羽の矢が立ったため。チョが香港と韓国、もう一人のユジャ・ワンが中国と日本での公演を分け合う形でプログラムが組み直されることになった。この日、ツアーに向けたいわば総仕上げの位置づけで行われたフィルハーモニーでの演奏会は、一公演のみとあって完全にソールドアウト。立ち見席まで満員という盛況ぶりを見せた。

 R. シュトラウスの≪ドン・ファン≫の演奏に続いて、チョが登場。彼が置かれた状況を想像するとこちらの方が緊張してしまうほどだが、椅子に座ったチョからはそんな気負いは感じず、鞭の音とともにラヴェルのピアノ協奏曲が始まると、シャンパンがしゅわっと吹き出したような生きのいい音楽が展開される。下手をすれば曲芸のような印象を与えてしまう冒頭部分だが、チョは華やかな技巧を余すところなく聴かせながらも、その音楽にはまだ20代前半と思えない落ち着きがある。とりわけ幸福な時が訪れたのは、ピアノのカデンツァの直後。ラトルがチョに一瞬視線を向けたかと思うと、弦楽器の伴奏に乗って音楽が熱を帯びて膨らんでゆく。聴き手もふわりと浮き立つような瞬間だった。

 第2楽章では、ピアノのソロに続いて、ベルリン・フィルの木管の名手たちと繊細な対話が交わされる。フルート、オーボエ、クラリネット……。最初は昼間の風のささやきを思わせる雰囲気だったのが、徐々に色合いが濃くなってゆく。イングリッシュホルンによる心のこもった歌に乗ってピアノがアラベスク風の音を奏でるところでは、ホールの大きさを忘れてしまうような、親密な時間が流れていた。

 フィナーレに入ると、Esクラリネットのザイファルト、トランペットのタルコヴィらの名手らが作り出す街の喧噪に乗って、チョが若いエネルギーを存分にぶつけてくる。ベルリン・フィルの音圧に一歩も引かず、自身の音楽を貫くまっすぐさが小気味よい。それでいて、チョのピアノにはいい意味での節度と思慮深さが通底している。

 盛大な拍手に応えて、チョはアンコールにドビュッシーの≪映像≫から<水に映る影>を披露。幾重にも重なる音の織物を精巧に、かつ詩情を込めて弾き上げた。チョ・ソンジンが、ベルリン・フィルへの堂々たるデビューを飾ったことを喜びたい。

文:中村 真人(ジャーナリスト・ベルリン在住)
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2015年 第17回 ショパン国際コンクール第1位受賞!!
チョ・ソンジン ピアノ・リサイタル
2018年1月30日(火) 19:00開演 東京オペラシティ コンサートホール
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