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ブルガリア・ソフィア通信第2弾 [ブルガリア国立歌劇場]

湯山玲子氏による、ソフィア(ブルガリアの首都)レポートが届きました!

2日目は、コーディネイターのソニャ嬢が見つけてきた、ソフィアから北上すること二時間弱のブラッァVratsaというエリアの「民俗音楽フェス」に直行。ヨーロッパ大陸のドライブはいつも快適。ガンガンにマイipodで音楽をかけたいところだが、システムが合わず断念。なので、運転手のアンナ嬢のR&B三昧。お若いのに趣味が渋く、ボズ・スキャッグスの「Low Dow」のfeat、チャカ・カーンなどがかかる。街道の脇には小さい町が点在していて、そこに異様にそびえ立つのは、共産圏時代のアパート。デザイン的に好物なんですが、なんだかすすボケていましたね。エアビーで出物があったら是非泊まりたい物件ではある。広大な草原の地形を生かしたフェスは、参加者や見物客がそれぞれ民俗衣装を着ていて、お祭り気分はマックス。なんでもこの日の午後の目玉は、伝統的な様式に従ったリアル結婚式で、市長も民族衣装を着て祝辞を述べていました。(こりゃ、絶対に離婚できないわな)草原にラグをひいてその上で宴会する形式も再現。ご親戚もいるんでしょうが、出演者のみなさん全員の楽屋代わりになってるらしいムード。伝統的楽器によるバンド演奏もあれば、ブルガリアの流行歌のシンガーも出てくるというプログラムは、やっぱり全てにバックビートが強い。四つ打ちの一拍に三連音符のタタタ、タタタが入っていくタイプが、最近のエレクトロが入った流行歌の基本のよう。

輪になって、ステップを踏む踊りである「ホロhoro」。みなさんが気軽に盆踊りのように参加するのだが、そのステップは地域やリズムによって千差万別。ソニャ情報によると、学校での体育の時間にガンガンに習うらしく、みんなが踊れるのだそう。「温泉スパがある」と帰りに立ち寄ったのは、Varshetsヴァルシェッツの「Medicusメディクス」というスパリゾートホテル。ええ、泳ぎましたともさ!!!! 気温も水温も24度という悪条件の中、プール独り占め。プールを見下ろすホテルのベランダからの「マジかよ」という視線をはねのけて。しかしながら、雲が切れて日が差すとそこは天国。緯度の高い場所の透き通った光線を浴びて、超リラックス。一方、室内のジャグジーが日本的に「いい湯加減」なので浸かっていたら、バーサンが二人入ってきました。一人が英語づかい(ブルガリアでは珍しい)だったので、いろいろとおしゃべり。ダンナをおいて女友達二人で遊びに来たそう。

温泉がバンバン吹き出ているのに、あまりスパが盛んでないのは、国民性だとソニャ嬢。イスラムに500年支配された中では、ハンマムというイスラム圏の蒸し風呂も持ち込まれただろうに、それが定着しなかったのは、文化的反発なのかも。この地では温泉というと、完全に湯治という治療目的なのだそう。ソフィアの中心部にもナチュラル適温の温泉がバンバン沸いていて、そこは健康のための「温泉汲み場」になっている。ああっ、もったいない。

観光立国を目指すと言うブルガリア。ハンガリーのブダペストが宮殿のような公衆浴場で世界中から観光客を集めているわけで、ここはひとつ、温泉に開眼していただいて、自然の地形を利用した、とんでもない露天風呂を作って欲しいところ。こちらのデベロッパーの方々に是非、湯布院あたりを視察していただきたいものです。もう、スパじゃなくて、露天岩風呂ですよ!!!『テルマエロマエ』ブルガリア版てなことでどうでしょ。

3日目は、ソフィアから東に向かって2時間。職人集団と貿易で栄え、ブルガリア解放運動の発生地になったでもって、またしても「海外において出会いの引きが強い」と言われる私のブルガリア版が発生。Koprivshtitsaコブリフシュティツァ(超発音が難しい)村に行った時のこと。木造の歴史的建造物の街並みが美しいこの町の教会で、ちょっと中を見せてもらおうと僧侶に声をかけたら、その彼が人懐っこくて、「アレクサンダー・ネフスキー寺院のミサの音楽に感動した」話をしたら、なんとその場で祈りの歌を唄ってくれたのです。

彼(その名もボコミールwwwニックネームはブギwwwww)は土地の顔役らしく(当たり前か)、気がつくと市長が花束をもって現れて、その流れで市長さんとともに(どういう流れだ!!!)横にある接待所(可愛い!)で、ラキヤという伝統的な果実酒を市長とブギとでガン飲みするハメに!!!

自称「俺って。目が青くて若い時は美青年で教師たちの人気者だった」って、もうさ、BLじゃないんだから。しかし、その名残はちょっとあって、アラン・ドロンやヘルムート・バーガーの老境変化から妄想すると、相当な美青年だったことは確か。

見せていただいた、ミサ曲の楽譜は4線のネウマ譜よりも素朴な、線と点だけのもの。これで8声までが記譜され、コーラス隊の面々はこれを歌うのだそう。感心していたら、なんと、その今使用中の楽譜本をプレゼントされてしまったのですよ。

一方、喧嘩の強そうな市長さんも、歌える歌があるというので二重唱。彼の望みは、日本の桜の木を送ってもらって、その町と姉妹都市になりたいとのこと。

こういう町の土産物屋にお宝が眠っている、というのは長年の私の旅の知見なのですが、その通り、ちょっと奥に引っ込んで、本当に愛想の悪いおっさんがやっている店の奥に倉庫のような展示があったので、覗かせてもらったら、ビンゴ!! 200年前と思われる銅貨を使った首飾り、伝統的な織物であるヤギの毛のラグ、小学生の教材っぽいブルガリアの地形図などをゲットしました。本当はずっとその村の片隅にあり続けるはずだったモノが、東京の私の家に来る。この「時空越え」は、結構、好きなイメージ。映画『君の名は。』のモチーフの一つにもこの感覚がありましたね。

<湯山玲子>
日本大学芸術学部文芸学科非常勤講師。自らが寿司を握るユニット「美人寿司」、クラシックを爆音で聴く「爆音クラシック(通称・爆クラ)」を主宰するなど多彩に活動。現場主義をモットーに、クラブカルチャー、映画、音楽、食、ファッションなど、カルチャー界全般を牽引する。著書に『クラブカルチャー』(毎日新聞社)、『四十路越え!』(角川文庫)、『女装する女』(新潮新書)、『女ひとり寿司』(幻冬舎文庫)、『ベルばら手帖』(マガジンハウス)、『快楽上等!』(上野千鶴子さんとの共著。幻冬舎)、『男をこじらせる前に 男がリアルにツラい時代の処方箋』(KADOKAWA)などがある。
湯山玲子公式サイト:http://yuyamareiko.blogspot.com/

ブルガリア国立歌劇場
10月5日(金) 18:30 「カルメン」
10月6日(土) 15:00 「カルメン」
10月8日(月・祝) 15:00 「トゥーランドット」
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