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来日直前!シューマン・ツィクルス現地レポート ティーレマン指揮ドレスデン歌劇場管弦楽団

創設470年の伝統が紡ぐ、豊潤で味わい深いシューマンの交響曲。現地ドレスデンを経て、いよいよ東京へ。 クリスティアン・ティーレマンがシュターツカペレ・ドレスデン(ドレスデン国立歌劇場管弦楽団)の首席指揮者に就任して以来、このコンビはブラームス、そしてブルックナーの交響曲ツィクルスに取り組んできたが、彼らが次に挑んだのはシューマンの4つの交響曲だ。10月17日、本拠地のゼンパーオーパーで行われた第2ツィクルスの1日目を聴いた。
 プロイセンの首都だったベルリンからかつてのザクセン王国の都ドレスデンにやって来ると、旧市街の重厚さ、そして劇場の絢爛さにいまさらながら驚く。オーケストラはその都市の歴史を写す鏡とも言われるが、筆者にとってシュターツカペレ・ドレスデン(ドレスデン国立歌劇場管弦楽団)はドイツの名門楽団の中でもとりわけゴージャスな夢を見させてくれるオケという印象が強い。その期待は今回も裏切られなかった。
 ティーレマンの長い指揮棒が振り下ろされると、交響曲第3番《ライン》が壮麗に鳴り響く。どっしりとした重厚感がありながらも、決してうるさくはならない。各セクションが絶妙にブレンドされた響きを聴く充足感は例えようもないほどで、一人一人が意識を研ぎ澄ませて聴き合い、音楽を作っているのが如実に伝わってくる。これこそが、創設470年という途方もない時間を生き抜いてきたこのオケの伝統なのだろう。第2楽章スケルツォの冒頭のシンプルなメロディなど、ティーレマンの手にかかると、彼が得意とするワーグナーを思わせる滔々とした時の流れを持つ音楽に聴こえてくるから不思議だ。第3楽章では主題間のカラーの違いを際立たせることで深みのある陰影が現出。フィナーレではかなり思い切ったアッチェレランドを付けていたが、これもこの音楽が持つ喜びの発露を自然な形で表現したものだった。 続く第4番では、さらにティーレマンらしさが前面に出る。第1楽章の主部に入ってからの音のうねりは、人間の内に沈潜する暗い感情をあぶり出すかのよう。これほどロマンティックな演奏は昨今ほかではなかなか聴けないだろう。そのような流れに身を浸していると、第2楽章のヴァイオリンの独奏やスケルツォの中間部での光が差し込むような親密な音楽が、いっそう愛おしく感じられてくる。大きな聴きものとなったのが、スケルツォからフィナーレへの壮大な移行部とフィナーレでの情熱的な歩み。シューマンの「第4」は近年初稿版で上演される機会も増え、それもまた興味深い体験だが、ティーレマン&シュターツカペレのコンサートではやはりシューマンが最後に手を加えた改訂版でこそ聴けてよかった。
 「シューマンの音楽が持つ幻想、詩的さ、ビーダーマイヤーの深みは、このオーケストラが得意とするところです。彼の音楽はシュターツカペレの魂の一部なのです」とティーレマンは語る。実際のところ、多くの聴き手がシューマンの音楽に求めるであろう要素が、過不足なく満たされた一夜だったのである。

中村真人(在ベルリン/ジャーナリスト)
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ティーレマン×シューマン~陶酔のロマンティシズム
クリスティアン・ティーレマン指揮 ドレスデン国立歌劇場管弦楽団
2018年10月31日(水) 19:00開演 サントリーホール
2018年11月1日(木) 19:00開演 サントリーホール
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