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《スペードの女王》現地取材レポート【マリインスキー劇場】

2019年11月からの日本公演に先駆けて3月に行われた現地での鑑賞レポートを公開します。「3枚のカードの謎」にとり憑かれた男の数奇な運命とは・・・!?ぜひご覧ください!《スペードの女王》(2019年3月8日)
サンクトペテルブルグを訪れてみて、一日のうちにコロコロと変わる空模様には驚いた――これはまさに《スペードの女王》の世界ではないか!貧しい士官ゲルマンと、婚約者がいながら彼との恋を夢見る娘リーザ、彼女の祖母で、若い頃のパリでの栄華が忘れられない伯爵夫人。三人三様に激変する心の裡が描かれる、暗い情熱に満ちたオペラである。

新館マリインスキー劇場Ⅱで上演されたアレクセイ・ステパニュク演出《スペードの女王》では、天井部に手前から奥へ並べて吊るされた横棒と柱が上下左右に動き、そこに紗幕が組み合わさって、公園の木立から兵舎の小部屋、宮殿の大広間など、次々と多様な空間を作り上げていく。時にめまいすら感じさせる大胆な空間変化のプロセスは、音楽に描き込まれた登場人物たちの劇的な心情変化を形にしたものでもある。この体験は、映像ではとらえきれない、まさに劇場ならではのものだ。また最近は伯爵夫人に関して、その複雑な心理に分け入り、突っ込んだ表現をする演出が世界的潮流である。彼女はかつてパリの社交界で「モスクワのヴィーナス」と呼ばれた美女で、「三枚のカードの秘密」と共にその記憶を現在まで大切に抱きつづけている。本人の意識の中では、孫娘と対等に「女として現役」なのである。しかし現実の肉体は老いている。そんな彼女の、パリでの栄華の記憶への妄執やゲルマンとの関係がどのように描かれるか、ここは本演出の見どころのひとつであった。

狂気をたたえたゲルマンにはこの役で高い評価を得てきた大ベテラン、ヴラディーミル・ガルージン。昨年のザルツブルクでも同役を歌ったトムスキー役のヴラディスラフ・スリムスキーの「三枚のカードのバラード」は聴きものだった。そしてイリーナ・クリロヴァの豊かな声と、正確かつ情熱的な表現でリーザを聴ける幸せ。
この歌劇場ならではの歌手の充実も楽しんだ。

森岡実穂(中央大学准教授)

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巨匠ゲルギエフ&ロシア芸術の殿堂 マリインスキー歌劇場が総力を結集して贈る
マリインスキー歌劇場 チャイコフスキー・フェスティヴァル2019
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歌劇「スペードの女王」
2019年11月30日(土)15:00 東京文化会館
2019年12月1日(日)15:00 東京文化会館
歌劇「マゼッパ」(コンサート形式)
2019年12月2日(月)18:00 サントリーホール
マリインスキー 歌劇場管弦楽団 演奏会
2019年12月5日(木) 19:00 サントリーホール(チェロ:アレクサンドル・ブズロフ)
2019年12月6日(金) 19:00 東京文化会館(ヴァイオリン:五嶋龍)
2019年12月7日(土) 13:00 東京文化会館(ピアノ:セルゲイ・ババヤン、辻井伸行)
2019年12月7日(土) 18:00 東京文化会館(ピアノ:セルゲイ・ババヤン)

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