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[ブラック・ダイク・バンド]音楽監督・首席指揮者 ニコラス・チャイルズ インタビュー

2019年10月27日より日本公演をスタートする、ブラック・ダイク・バンド。東京公演は10月31日東京芸術劇場コンサートホール、11月2日すみだトリフォニーホールにて行われます。2年ぶりの日本ツアーに対する想い、演奏する曲目について、ブラック・ダイク・バンドの音楽監督・首席指揮者を務めるニコラス・チャイルズが語りました。ぜひご覧下さい。

ブラック・ダイク・バンドが帰ってくる!
「音楽への情熱を皆さんの心に届けたい」
―音楽監督・首席指揮者、ニコラス・チャイルズが語るー
ブラスの壮麗な響きに精細な情感をすみずみに通わせ、彩りにあふれる世界を映し出して、音楽とともにある喜びでステージと客席を一体にする英国の名門、ブラック・ダイク・バンド(BDB)の来日公演が間もなく開幕する。ヨーロッパ選手権優勝13回をはじめ、全英選手権で23回、ブリティッシュ選手権では30回も最高位の栄誉に輝いてきた伝統の楽団だ。心から音楽を愛する腕利きたちを率いる音楽監督で首席指揮者のニコラス・チャイルズは、2年ぶりとなる日本ツアーに向け、よりいっそうの感動を届けたいと胸を躍らせている。「私たちBDBのメンバーはオリンピック精神、つまり友情と連帯を重んじ、努力を惜しまない精神を通して互いを理解しあい、世界最高のパフォーマンスを目指す存在でありたいと思っています。私たちはたくさんの選手権に参加してきましたが、世界のバンドの中でも、より多くの賞を手にし、史上最多優勝記録も打ち立ててきました。とにかく私たちは音楽が好きなのです。BDBのメンバーひとりひとりが胸に秘めている音楽への情熱こそが、私たちの音楽に欠くことができない資質の一つなのです。それは私たちが音楽を心から楽しんでいるということであり、それがまた聴衆の皆さんの心に届くのだと信じています」

《正統派を貫き、新しい伝統を生む》
チャイルズが深い愛情を込めて語るBDBは1855年に創立され、その前史を1816年までさかのぼることができる。イングランド北部のウエスト・ヨークシャー州、クイーンズバリーで産声を上げ、本拠とする村の名前をそのままタイトルとした作品は、彼らのテーマ曲となっている。今シーズンから新しい振り付けが施され、今回の日本公演で披露することを心待ちにしているという。

「《クイーンズバリー》は私たちにとって欠かすことのできない作品です。プログラムに載せないと会場から強いリクエストが寄せられ、この曲を演奏しなければコンサートが終えられないのです。私たちは今でもこの村でリハーサルを行っていますが、ここは私たちの歴史を築いてきた地であり、150年以上にわたって同じ場所で研鑽を積んでいるのです。それだけに、この場所には愛着だけでなく、誇りを持っています。特にリハーサル室の音響には定評があり、ここでの練習はとても重要なものとなっています。世界中から私たちの建物を見学にいらっしゃる方がいるほどなのですよ。この地の名を関した作品は今でもオリジナル楽譜で演奏するため、他にこの作品を演奏するバンドはいません。私たちは先人の思いも一緒にその楽譜から受け止めながら演奏しています」基本的な楽器配置として、客席に向かって半円形や台形に並んで寄り添うように演奏し、2016、17年と続いた日本公演でも、精妙にブレンドされた柔らかで独特の温かみをたたえた響きで満員の会場を魅了した。超絶技巧を極めた鮮やかな名人芸も、息をのむような神秘的なまでの弱音の美も、作品それぞれのスタイルと精巧に組み合わせられたステージ上の動きとともに披露して、熱狂的な拍手を巻き起こしている。

彼らは「金管バンド」を意味する「ブラスバンド」の中にあって、トランペットやフレンチ・ホルンなどを使わない。BDBの草創期と同時期に活躍し、音楽の可能性を拡大させたアドルフ・サックス(1814~94年)が開発して、コルネット、フリューゲル・ホーン、テナー・ホーン、バリトン、ユーフォニアムなど、さまざまな派生楽器を生んだ「サクソルン属」を中心に据えた「英国式」ブラスバンドの正統派として重要な位置を占める。

「伝統を大切にしながら前に歩み続けるのは決して容易なことではありません。でもそれができるのは、私たちが自分たちの歴史と伝統を心から誇りに思っているからです。その名に恥じないバンドとして活動を続けるために、私たちは日々努力を重ねています。何よりもBDBが現在していることが、将来のBDBの歴史になるのです。そのためにも私たちは誇りを持って前に進まなくてはならないのです。歩みを止めるわけにはいきません。私たちBDBのコンサートにいらしたお客さまは、誰もが私たちと一緒に一つの旅に出るのです。それはBDBというバンドの始まりから現在の私たちの世界へと続く旅なのです」

そう語るチャイルズは、今回の日本ツアーで取り上げるブルース・ブロートン(1945年~)曲の《ヒーローズ》は象徴的な作品の一つだとする。

「ブロートンの作品は《34丁目の奇跡》や《ロスト・イン・スペース》などの映画音楽でも世界中の人に親しまれていますが、《ヒーローズ》はまさに未来へと進む私たちが選んだ作品の1つです。これはアポロ11号の月面着陸から50年を記念したものです。私たちはコンサート会場に集まってくださった皆さんにアポロ11号が刻んだストーリーを語りかけ、皆さんを一つの旅路に誘いたいと考えています」

吹奏楽の愛好家はもとより、日本でも広く知られる人気作曲家、ピーター・グレイアム(1958年~)の作品も、《バリトンのための協奏曲》、《キャッツ・テイルズ》より《カタロニア》《スキャット》、交響詩《ダイナスティ》など、多くの作品が今回も取り上げられる。「彼はシンフォニックな作品で大きな成功を収めた作曲家ですが、BDBのコンポーザー・イン・レジデンスも務めた大切な存在です。私たちとの絆は深く、どのバンドにも先駆けて、彼の作品を披露することが許されることも多いのです。今回の日本ツアーでも、皆さんに必ず楽しんでいただけると自信を持っています。現代の作曲家の作品を取り上げることは、とても重要なことですが、現代の作品を選択するときには、会場の皆さん全員が心から楽しんでいただけるものをと特に心を砕いています」

《多彩なプログラムでたどる音楽の旅路》
ビートルズが創立したレコードレーベル、アップル・レコードで名曲「イエロー・サブマリン」を録音するなど、これまで積み重ねてきたディスコグラフィーは350アイテムを超える。

「BDBは演奏する音楽のジャンルにおいても、とても広範囲に及んでいます。ビートルズもBDBが好きで、お互いにとても相性が良かったのです。BDBには皆さんにお話ししたいような歴史がいっぱいあります。つい先日、私がBDBを指揮して100タイトル目となるレコーディングも行いました。私は音楽監督としてプログラムの決定などをいたしますが、メンバーの誰もがブラス音楽に限らず、この曲はどうだろう、これが面白いのでは、とひっきりなしに提案をしてくれます。私はそれらの交通整理をして新しいレパートリーの開発、プログラム構成を考えています。メンバーの中には指揮や編曲ができる者もいますし、何よりも彼らはヴィルトーゾな演奏ができますから、可能性は無限大です」

ヴェルディのオペラ《運命の力》と《ナブッコ》の序曲、ロドリーゴ《アランフェス協奏曲》に、前回の日本公演でもスペクタクルな演奏で魅了した映画「007」の音楽と多彩なプログラムが用意され、洗練を極めた妙技で夢の世界へと誘う。「レスピーギの《ローマの松》も取り上げますが、金管楽器はもとより、交響楽団と同等の充実した打楽器セクションを備えた私たちだからこそ、この作品が持つ本当に豊かな色彩を表現することができるのです。はるか遠くから聞こえてくるような響きで静かに始まり、ローマの街に壮大な行進が向かってくる感覚を必ずや体験していただけるはずです。私たちは巨大なクレッシェンドばかりでなく、最高の弱音をお聴かせできることも誇りとしています。オーケストラのコンサートならば通常、プログラムは多くても4、5曲ほどです。しかし、私たちの演奏会では15曲以上の作品が並ぶことも日常的です。そこで私たちは、時には興奮を覚えるような、時には心が静かにしんみりするような、さまざまな物語を届けることができるのです。そうしたたくさんの物語を通して、皆さんと共に楽しい音楽の旅路をたどるのが私たちのコンサートなのです。そして一つの旅が終わったら、また次の旅に行きたくなるような音楽の旅路に皆さんをお連れしたいのです」

インタビュー・文:谷口康雄(音楽ライター)、久野理恵子(通訳)

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英国ブラス頂点のパワーが炸裂!旋風再び!
ブラック・ダイク・バンド
2019年10月31日(木)19:00 東京芸術劇場 コンサートホール
2019年11月2日(土)15:00 すみだトリフォニーホール
上記、10/31&11/2の公演当日に両公演分(10/31&11/2)のチケットを会場受付にお持ち頂くと、もれなく2019年来日記念ポスターをプレゼント!
公演詳細はこちらから<東京公演以外の公演日程>
2019年10月27日(日) 15:00 大阪狭山市文化会館SAYAKAホール
(問)大阪狭山市文化会館SAYAKAホール 072-365-8700
2019年10月29日(火) 19:00 札幌文化芸術劇場hitaru
(問)道新プレイガイド 0570-00-3871(日曜定休)
2019年11月1日(金) 19:00 四日市市文化会館 第1ホール
(問)四日市市文化会館 059-354-4501