2014/7/28
ニュース
チョ・ソンジン インタビュー
今回のリサイタルプログラムについてお聞かせください。
モーツァルトとシューベルトが少し似た系統の色を持っているところに、バルトークという全く異なる世界を持つ作品を入れることで、さまざまな色を感じていただけるプログラムにしたいと考えました。ひとつの色しかないプログラムだと、聴いているみなさんはつまらないと思うので。
ショパンについては、「幻想曲」を14歳のときに演奏したことがあるだけで、他はほとんど初めての作品です。大好きな作曲家なのでたくさんの作品に取り組みたいと思っています。ショパンコンクールも視野に入れて、レパートリーを増やしています。
中でもバルトークの「野外にて」は、ルービンシュタインコンクールでの演奏を聴きましたが素晴らしかったです。最近はプロコフィエフやバルトークのような作品に積極的に取り組まれているようですね。
はい。こうした独特のリズムを持つ作品は弾いていて心地よいです。もっともっと理解を深める必要はあると思いますが。
以前はこうしたレパートリーを弾くことがありませんでしたが、ミシェル・ベロフ先生のもとで学ぶようになって、興味を持つようになりました。先生の演奏するバルトークは、とてもすばらしいですから。
ベロフ先生のレッスンはどのようなものですか?
先生のレッスンは週1回です。僕のレッスン時間は、いつも月曜日の朝9時、一番目と決まっています。他に人がいないからたくさん先生と話をすることができるので、自分でこの時間を選んだのです。音楽についてはもちろん、人生についても本当にいろいろな話をします。先生のことは、音楽家としてだけでなく、人間としてとても尊敬しています。とても個性的です。それに、すごく優しくて……僕とは正反対です(笑)。
正反対、ですか(笑)?
はい、僕はあんなふうに、誰かのいいところを素直に言葉にして、たくさん褒める、なんていうことはできませんから。僕はとてもシャイなんです!
パリに留学されて2年が経とうとしていますが、ご自身の音楽に変化を感じることはありますか?
実は、留学によって演奏が変わったという自覚はあまりありません。ただ、チャイコフスキーコンクールを受けた後には、僕の中で何かが変わったかもしれません。あのときはまだ17歳でしたから、おとなしかったですね。世界や人生のことも、なにもわかっていませんでした。今のほうが感情を表に出すようになったと思います。
今回の来日中には、東京フィルハーモニー交響楽団の定期演奏会で、プレトニョフさんとショパンのピアノ協奏曲第1番を演奏されます。2012年にすでに共演されているそうですが、プレトニョフさんについての印象は?
最初にお会いするまで、実はすごく緊張していました。ポーカーフェイスのイメージから、真面目で全然笑わない方なのではないかと思っていたので。でも、実際にお会いしてみるととても優しくて、素敵なユーモアのセンスをお持ちでした。これは、彼の音楽からも感じられますよね。あのユーモアのセンスには本当に憧れます。うらやましいくらいです。そういうことは、学んで身につけられることではありませんから。
この5月で二十歳を迎えられましたね。
はい、ルービンシュタインコンクール、ファイナルの最中でした。その日に演奏があればステージで二十歳を迎えられると思っていたのですが、演奏順の都合でそうはならなかったので、当日は誰にもおめでとうと言われることなく、練習室で一日過ごしました。さみしかったです(笑)。この夏には4週間、兵役に行きます。髪も短くしますし、きっと肌も焼けていると思うので、みなさんステージに出てきたのが僕だとわからないんじゃないかと、ちょっと心配しています。
今年もまたすばらしい音響の浜離宮朝日ホールで日本のみなさんのために演奏できることを、とても楽しみにしています。
インタビュー:高坂はる香(音楽ライター)
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気鋭の『今』を聴く
チョ・ソンジン ピアノ・リサイタル
2014年10月27日(月) 19時開演 浜離宮朝日ホール