2012/10/24

ニュース

  • Facebookでシェア
  • Twitterでツイート
  • noteで書く

名旋律を繰り出す天才、プッチーニ『ジャンニ・スキッキ』の魅力!

山崎睦(音楽ジャーナリスト ウィーン在)

稀代のメロディー・メーカーであるプッチーニ。『ボエーム』、『トスカ』、『蝶々夫人』等、数々の傑作オペラで知られる彼は、ココゾという決定的なシーンで名旋律を繰り出す天才だ。なかでも『ジャンニ・スッキッキ』に出てくる「O mio babbino caro (私の愛しいお父さん)」は、プッチーニの才能に、恐らく神が加護したとしか考えられないような、とびっきりの名アリアだと確信するのだが、どうだろう!

花の都・フィレンツェへの“賛歌”ともいうべき、この「O mio babbino caro」を歌うのがラウレッタ役の小林沙羅なのだ。「もしリヌッチョと結婚できないのなら、ポンテ・ベッキオ(古い橋)からアルノ川に身投げするわ!」と、父親のジャンニ・スキッキに懇願し、なかば脅迫するアリアだ。娘の一途な思いに心動かされた父親は、一旦は拒絶したブオーゾの親族の頼みを引受け、遺言書偽造という悪事を働いてしまうのだが、これもひとえに娘かわいさの親心である、というオチが最後に付く。
このように、ラウレッタのアリアは本作品のドラマトゥルギー(作劇法)上、重要なポイントになっているのだ。

小林沙羅
(ラウレッタ役の小林沙羅)

そこで小林はフィレンツェ市街の中心部に架かるベッキオ橋を訪れ、アルノ川のほとりを歩いてみた。「すべての状況が実感を持って把握できました。フィレンツェという街は、『ジャンニ・スッキッキ』の出典である13世紀のダンテの時代以来、変わっていないのですね。ラウレッタがポルタ・ロッサ(赤い門)のお店に行って指輪を買うというテキストもあわせて、このオペラ全体が、たいへん身近になりました」と興奮して語る。

ソフィア国立歌劇場
(「私のいとしいお父さま」を歌う小林沙羅)

 生き生きとフレッシュな魅力でソフィア・デビューを成功させた小林沙羅の父親役、ジャンニ・スキッキにはウラディミール・サムソノフとビゼル・ゲオルギエフが交代で登場する。マリインスキー劇場(サンクト・ペテルブルク)専属のバリトンであるサムソノフは、男声低音歌手の宝庫として知られる同劇場で、しかもモルドヴィア出身の外国人ながら、しっかり自分のポジションをキープしているのは立派だ。
 おおらかな包容力が感じられる彼のスキッキに対して、ゲオルギエフ(今回、日本で『トスカ』のスカルピアも歌う)は、もっと狡智に長けたワルな雰囲気が濃厚で、二人それぞれの持ち味で勝負するステージに期待される。

ソフィア国立歌劇場
(左:サムソノフ 右:ゲオルギエフ)

≪小林沙羅出演日≫
11月4日(日)15:00 よこすか芸術劇場 <問合> 046-823-9999
11月7日(水)富山オーバードホール <問合> 076-445-5511
11月10日(土)兵庫県立芸術文化センター <問合> 0798-68-0255
11月11日(日)17:00 千葉県文化会館 <問合> 043-222-0077
11月15日(木)18:30 東京文化会館 <問合>03(5774)3040 

その他の公演(シルヴィア・テネヴァ/リュボフ・メトディエヴァ出演日)

ソフィア国立歌劇場
(左:テネヴァ 右:メトディエヴァ)
11月8日(木)愛知県芸術劇場 大ホール <問合> 052-957-3333
11月14日(水)盛岡市民文化ホール <問合> 019-621-5100
11月19日(月)アクロス福岡シンフォニーホール <問合> 092-725-9112

「トスカ」公演日
公式サイト⇒ https://www.japanarts.co.jp/special/sofia_opera2012/

ページ上部へ