2012/10/26
ニュース
白夜祭レポート(5)サンクトペテルブルグ マリインスキー劇場
いよいよ公演が近づき、テレビ、新聞などで【マリインスキー・バレエ】の名前をご覧になる機会も増えてまいりました。
中でも、皆さんにご注目いただきたいのが11月1日に発売される「家庭画報」です。白夜の時期の取材ですから、普段から美しい写真がたっぷりで読み応えのある「家庭画報」がさらに“美”が深くなること間違いなし!私たちもとても楽しみにしています。
https://www.kateigaho.com/
その「家庭画報」の中でも注目されているアレクサンドル・セルゲーエフのインタビューを今日はお届けします!
マリインスキー&ボリショイ合同ガラ公演をご覧になった方は、モダン作品で見せたエッジのきいた踊りが鮮やかな記憶として残っているかと思いますが、実はダンスール・ノーブルの典型のようなダンサー。インタビューからは幅広い興味を持ったスマートさが伝わってきます。
Q:セルゲーエフさんは、古典作品はもちろんモダン作品も素晴らしいと評判です。特にモダン作品を踊るときには、拍の中に踊りと感情とすべてを入れるのが難しいのではないでしょうか?
A:そうですね。難しいのは、たとえばある一定の音から踊り始めるところなどですね。水のように同じ音がずっと流れていて、そのあと突然鐘の音や何かが鳴るんです。その瞬間、僕たちは決まった場所にいない・・・などということがあります。
Q:これまでに、ラトマンスキーの作品も多く踊っていらっしゃいますが、彼の振付の特徴、魅力はどのようなところにあると思いますか?
A:まず僕が思うラトマンスキー作品は、究極に音楽的だということです。彼はとても繊細に音楽を聞き分け、一緒に仕事をしているダンサーたちにもそれを打ち込んでいきます。また素晴らしいユーモアのセンスがあります。もちろん「アンナ・カレーニナ」では少ないですが、他の作品には超えてはいけない境界線ぎりぎりの、デリケートなユーモアがあります。それからこれは「アンナ・カレーニナ」で再確認したことですが、手と足の動きが分離しているのです。つまり彼の振付は、たとえば手が前に行こうとしているのを足が追いつこうとする、そういう動きがあるのです。これがすごいんですよ!!!
ラトマンスキーは誰も見たことのないような新しい動きを思いつくんです。それから、また別の特徴として彼のデュエット作品があると思います。彼の作るデュエットでは、踊っている男女の関係性が明らかになっていきます。シンデレラと王子、イワンと姫君、ブロンスキーとアンナ、アンナとカレーニン…どれもそれぞれ違っていて、見ているだけで二人の関係性がわかってきます。それはすべて動きで伝わってきます。
Q:マリインスキーはクラシック・バレエの最高峰ですが、そういうコンテンポラリーのものをやってわかったことというのは、またクラシックを踊るときに生かされているんでしょうか。
A:そうですね、結局、身体能力が広がるので、自然とそれはクラシックを踊る上でも使うようになります。
Q:自分の体の中に発見があるということですか?
A:そうです。また、ストーリーのない作品の場合は、ダンサー本人にカリスマ性がないとだめですね。“自分自身”という確固たる個性がないと、つまらない舞台になってしまう。例えば、フォーサイスの振付で要求されるエネルギーは、踊る人の個性を開花させ、見る人を楽しませるエネルギーを呼び起こしていくんです。ストーリーがないわけですから、観客はほとんど裸のダンサーを見ているだけですよね。そこに個性があって、面白い動きをすれば、すばらしい舞台になるのです。
Q:こんどは日本で踊っていただく伝統的なクラシック作品である「白鳥の湖」の王子役について教えていただきたいのですが、最初に踊ったのはいつですか?
A:初めて踊ったのは2年前、カザンで行われたヌリエフのバレエ・フェスティバルでした。そのあとマリインスキーでは去年のシーズンで2~3回踊りました。
Q:ワガノワ・バレエ・アカデミーで勉強していた子供の頃に踊りたいと思っていた役は何ですか?
A:本当に小さい頃ではなく、卒業に近くなった15~17歳頃だと、踊りたいと思っていたのは「ジゼル」のアルベルトでした。そしてその夢は叶いました。いま踊りたいと思っているのは「マノン」のデ・グリューです。ラトマンスキーの「シンデレラ」の王子もずっと踊りたいと思っていました。そしてそれはすぐに叶いました。
Q:踊りたい役がある時は、ファテーエフ監督と話すのですか?
A:そうですね。監督に僕がその役に合うかどうか、まず意見を聞きます。答えがイエスなら、練習してもいいかどうか聞きます。
Q:次に踊りたい役はありますか?
A:ロミオ役を踊りたいと思っています。マキューシオ役を踊ってもう6年になりますから。
Q:いま26歳だと思いますが、バレエダンサーとしていま自分はどのような時期だと思いますか?
A:自分でも考えたことはありますが、それは難しい質問ですね。まだ26歳ですが、これまでにたくさんの作品を踊ってきましたし、いろいろなことに挑戦してきました。まだ踊ったことのないクラシック作品は数作品だけですが、それでも追求し続けていきたいと思っています。と同時に、マリインスキーでまた面白い新作が生まれることにも期待しています。
僕は、プロデューサーが何かのプロジェクトをゼロから作り上げていくようなことが好きです。それは劇場でのことだったり、自宅に関する問題だったり、とにかく何か複雑なプロセスに取り組むことが好きなのです。いつも頭を動かしていたい。もし仕事上で抜け出ることのできないものにぶつかったら、喜びと勇気を持ってそれに取り組むと思います。
Q:いつか劇場のプロデューサーになりたいと思いますか?
A:そうですね。劇場の中ではなくて、独立してプロジェクトを立ち上げるとか、そういったことなら面白そうですね。いつか振付・演出をやってみたいなと思う瞬間が来るんじゃないかなと思います。「月に憑かれたピエロ」をラトマンスキーと準備していた時に、彼から「サーシャ、君は振付をやるべきだ」と言われたんです。その言葉が頭に残って、そのことを考えるようになりました。でもいまはまだ心の準備ができていませんけれども。。。
トリビア⑤
アレクサンドル・セルゲーエフは、マリインスキー・バレエ団のファースト・ソリストですが、劇場のホームページを見ていたら、ティムール・アスケロフも、同じファースト・ソリストになっていました。以前、(この劇場のプリンシパルだった)サラファーノフが「ホームページを見てプリンシパルになったことを知った。でも何も変わらないよ!」と話していましたが、今はどうなのでしょう?アスケロフが来日したら聞いてみますね!