2015/5/11

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ザ・フィルハーモニクス 公演レポート&メンバーインタビュー

ザ・フィルハーモニクス「春のファンタジー」

 2015年3月、ウィーン近郊に位置するラクセンブルクという小さな町で、ザ・フィルハーモニクスが出演する演奏会が開かれた時のこと。会場はフランツェンスブルクなる城の広間であって、通常彼らが定期的に演奏会を開いているウィーンのコンサートホール(コンツェルトハウス大ホール)の何分の一、という小ささだ。城の広間の常として、コンサートホールに比べて残響も多く、力で押し切っただけでどうにかなるものではない。
 そんな会場でザ・フィルハーモニクスが行った演奏は、単に音量を抑えるとか、遅めのテンポを設定するとかいった次元にとどまらず、何よりも「親密に聴き・語り合う」ものだった。それはまるで信頼しあう仲間同士、大声で言葉を尽くさずとも、相手が何を言いどのようにしたいのかを、互いが熟知して対話をしているかのよう。室内楽を指して、「音楽による対話」という比喩があるが、彼らはそれをものの見事に実践した格好だ。
この日の演奏会のタイトルは「春のファンタジー」。副題を訳すならば、「音楽のいろいろ色遊び」とでもなるだろうか? J.シュトラウス?のワルツ『春の声』、アーヴィング・バーリンの『ブルースカイ』などの春にゆかりの曲を、クラシックはもとより映画音楽やジャズといった幅広いレパートリーを縦断するかのように演奏する中で、腕利きの奏者それぞれの個性的が開き、重なり合い、さらに豊かな色合いを増してゆく。春まだ遠い地にあって、そこだけはたしかに色とりどりの音の花が豊かに咲いていた。
 ウィーンではプロ・アマを問わず、親しい人間が集まり室内楽を自ら演奏して楽しむという文化が長い間にわたって培われてきた。ザ・フィルハーモニクスもまさにそうした文化に根ざした上で、広範なレパートリーや闊達な解釈を通じ、新たな時代の室内楽の道を切り開いている。だからこそ、親密に聴き・語り合うという室内楽の基本中の基本を踏まえた彼らの演奏は、限りなくしなやかでかつ暖かい。単なる新たなスタイルを目指すアンサンブルという目先の興味に終わらず、深く広く音楽の楽しみに満ち溢れている。

文:小宮 正安(ヨーロッパ文化史・ドイツ文学研究家)

2014年の秋、ウィーン・フィルの公演で来日したメンバーにインタビューをしました。

<左から、オッテンザマー(クラリネット)、ラーツ(コントラバス)、フェヒナー(ヴィオラ)>

 2014年夏、初めての日本ツアーご成功おめでとうございます。
 いずれの公演地も大反響でした。終演後のCD売り場には客様が殺到して売り切れ状態。サイン会も長い列ができていましたね。日本ツアーを振り返り、感想をお聞かせいただけますでしょうか?

ティロ・フェヒナー(ヴィオラ):
 日本のお客様がどんな風に反応されるだろうか、最初は少しだけ心配でもありました。でも、1曲1曲演奏が進むごとに、お客様の目がキラキラと輝いてくる様子を見て、嬉しくなりました。もちろん、ウィーン・フィルのコンサートにお越しくださるお客様も喜んで聴いてくださりいますが、それよりも更に瞳が輝いて見えたような気がします(笑)。

エーデン・ラーツ(コントラバス):
 お客様の反応がとても良かったです。僕たちのFacebookにもたくさん反応してくれるし。
 今回のウィーン・フィル日本ツアーでサントリーホールに入るとき、「ザ・フィルハーモニクスの人ですね!」と声をかけてくれる人もいたのですよ。

ダニエル・オッテンザマー(クラリネット):
 ヨーロッパで受入れられている僕たちの音楽を、日本のお客様は良いリアクションとともに受け入れてくれました。コンサートで、ステージ上の僕たちとお客様とのやりとりが感じられたのです。とても嬉しく思います。

著名オーケストラの演奏者で作られる室内アンサンブルは他にも色々ありますが、これが「ザ・フィルハーモニクス」という特徴や違いを教えて頂けますか?

ラーツ(コントラバス):
 どんなクラシック音楽、どんなにジャンルを超えたものを演奏しようと、まずメンバー全員がテクニックにおける問題は全く無い。何を演奏しても最高の音楽を届けることができるのです!

オッテンザマー(クラリネット):
 僕たちの演奏する曲は、皆自分達独自でアレンジしています。楽譜はどこにも売っていないのですよ(笑)。つまり、僕たちだからこそ演奏できる、誰にも真似できない、という点が、他のアンサンブルとの大きな違いではないでしょうか。

今後、どのようなプログラムに取り組んで行きたいですか?

フェヒナー(ヴィオラ):
 まず大切なのは、僕たちの音楽はジャンルを超えた演奏ですが、クロス・オーヴァーではありません。クラシック音楽を軸に、ということは変りません。
 僕たちは、たくさんのレパートリーを持っています。ウィーンでは、コンツェルトハウスで定期公演を行っていますが、来てくださるのは毎回同じお客様。ですから、お客様に常に新鮮な気持ちを味わっていただけるよう、異なるテーマを決めて、毎回違うプログラムで演奏しています。皆でディスカッションしながらプログラムを決めるので、容易ではなく、時には大きな声でケンカをしているように見えるかもしれません(笑)!
 いつも最後がワッと盛り上がるプログラムにできるよう工夫をしています。コース料理の締めくくりに、とびきり美味しいデザートを味わっていただけるように!
 2015年の日本ツアーを楽しみにしていてくださいね。

 今回、ウィーン・フィル日本ツアーで来日中の3人。大阪から始まり地方公演を重ね、東京公演の合間にインタビューに応えてくれました。「東京に来るとホッとするんだ」と静かに微笑むフェヒナー。【ザ・フィルハーモニクス】の演奏は、オーケストラでもオペラでも体験できない音楽だとのこと。メンバーの皆が、この活動を心から楽しんでいる様子が伺えました。

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ウィーン・フィル公認のスーパースター軍団、待望の再来日!
ザ・フィルハーモニクス

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