2015/7/28
ニュース
トゥーランドットを歌う ヨルダンカ・デリロヴァのインタビュー
「ヨルダンカ・デリロヴァです。日本でトゥーランドット姫を歌います。日本の皆様とお会いすることを、大変楽しみにしています」
今回は久しぶりの来日です。どの様なお気持ちですか?
「本当に久しぶりですね。日本での思い出は素敵なことばかり!初来日の<アイーダ>は2001年。ホセ・クーラ氏との共演で東京や大阪を訪れ、思いがけない体験ができました。日本のお客様にも感激したわ。各公演の後に長い行列ができ、写真を撮ったりサインをさせてもらったり。会場での熱烈な喝采も忘れられません。だからこそ、今回のツアーも大変楽しみなの。観客の皆様、日本文化や伝統、全ての再会が待ち遠しいです」
デリロヴァさんは、ディミトローヴァの再来とも言われています。
「おおおお・・・(笑)。“ディミトローヴァの再来”とは! ・・・・素敵な響き。光栄です」
トゥーランドットを、どの様に演じ、歌いたいですか?
「トゥーランドット姫も他の役も、私は作曲家が書いたように演じるよう努めています。もちろん、常に演出家とその要求に従うことは前提ですが、私は作者も重視します。作曲家の書いたもの、リブレットにあるもの、いつも小さな活字の方をさきに読んでしまう。作品の起源や背景についても詳しく調べます。作者の要求に近づいて演じるようにしています。
私はトゥーランドット姫の実像を演じたいと思います。傲慢さ、嘲り(あざけり)もね。最終的に愛がすべてに勝ち、彼女の冷たい心が和らいでいくところ、全てを。
今回日本で披露する<トゥーランドット>は、ゲーナ・ディミトローヴァさんも出演したとても美しいプロダクション。クラシカルで伝統的、とても美しく豪華な衣装を使い、本当に観る価値があると思います」
デリロヴァさんは、ヴェルディの10作品、プッチーニ、ワーグナー、R.シュトラウス、ショスタコーヴィチ、モーツァルトなど大変幅広いレパートリーをもち、輝かしいキャリアを築かれています。その秘訣は何でしょうか?
「特に秘訣はないかもしれません・・・。強いて言えば、私が積んできた経験や難しい役のお蔭かな。私のデビューはドン・カルロのエリザベッタですが、それは決して誰もがデビューに歌う役ではありません。でもね、私は十分勇ましい人間ですから、もちろんやり遂げましたが(笑)!しかもね、実は夫と二人でのデビューだったのです。彼はフィリッポ2世を歌ったの。とても面白かったわ。私にとって初舞台でしたので大変ワクワクしました。今は多くの劇場で歌いながらレパートリーを広げ、それぞれの役への挑戦から、何か新しいものを頂いていると思います。いつも必ず何かを教わっています。
具体的に、どのようなものを得られていますか?
「多くの演出家や指揮者との触れ合いの全ては、私の成長につながり、技術的にも演劇的にもマスターできるチャンスです。例えば、<エレクトラ>や<ニーベルングの指環>のブリュンヒルデなど難しい役に挑むときは、大きな成長の機会だと思います。ブリュンヒルデは、話の展開ごとに徐々に変わり、少しずつ成長していくキャラクター。まずは一人の戦闘好きのワルキューレ(笑)、そのあとジークフリートとの愛に生き、最後に一番高いポイント<リング>の絶頂とも言える「神々の黄昏」までに至る・・・私にとって、とても興味深い役柄です。ブリュンヒルデの生涯を通して、彼女の成長と共に私自身も異なる顔を演じるのです。ですが、それは歌手にとって、丈夫な基礎と経験の積み重ねがない限り、決して歌えるものではありません。本物のブリュンヒルデを演じるためには、歌手には幅広いレパートリーが必要。肉体的にも、精神的にも、とても高いエネルギーが要求されます。<ニーベルングの指輪>や、<エレクトラ>などは、経験の浅い歌手には歌いこなせない役だと思うので、私が劇場で重ねてきたこの貴重で豊かな経験は、大切な財産となっています。
新しい作品との出会いは、私の歌と芸術に有意義な影響を与えてくれます。我々歌手たちも、人間として仕事に尽力し、より多くの役を作るように努力する、ごく普通のことをしています。私の様に多くの劇場で働いていると、各地でそれぞれ異なる作曲家の作品を歌う機会を与えられ、このようなステップを重ねるうちにレパートリーが広がり、数多くの役も身につけられます。それは大変ありがたいことですね」
オペラ歌手として、ひとりの女性として、大切にしていることがありましたら教えて頂けますか?
「そうね・・・私はとても幸せです。キャリアはさておき、私は人間として大変幸せです。そばに素敵な夫がいて、最愛の子供も1人いますよ。私たちは本当に幸せな家族。家族の存在は、歌手である私の成長にも幸せなキャリアそのものにも、大変重要です。プライベートと仕事とを調和させることは容易ではありませんし、ものすごく大事なことです。幸い夫も歌手なので、彼から刺激を受けるだけでなく、彼は私をよく理解してくれて、私が求めるものや必用なことの全てを分かってくれます。お互いが補い合うことができるのね。これだけです。私の幸せの元となる最も大きなものは家族とのふれあいの時間です」
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ブルガリア国立歌劇場 2015年日本公演
プッチーニ:歌劇「トゥーランドット」10月10日(土) 15:00 東京文化会館
ボロディン:歌劇「イーゴリ公」10月11日(日) 15:00 東京文化会館
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