2015/12/5

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ダンサー・インタビュー:スコーリク&パリッシュ/クラエフ、コルスンツェフ(マリインスキー・バレエ)

◆『白鳥の湖』2日目のマチネ公演で、主役のオデット&オディールを踊り、登場の瞬間からラストまでダイヤの輝きを放ち続けたオクサーナ・スコーリク。客席からも、頻繁にため息が湧き起り、チャイコフスキーの美しい音楽に相応しい幻想の世界を描き切った。舞台では威厳そのものだったスコーリクだが、終演後の表情はとても優しく、可愛らしい。短い時間に色々な質問をしてみました。

―ゴージャスで完璧な踊りでした! 3年前に日本で白鳥を踊ったときより、ものすごく成長したのではないですか?
「舞台の恐怖感が少なくなったと思います…(少し沈黙して)変化といえば、それくらいでしょう(笑)。本当に昔はドキドキしながらやっていたので」

―身体のラインもさらに美しくなり、特に背中が柔軟になったように見えたのですが、調整の仕方を変えたりしましたか?
「水泳をやることが多くなりました。泳ぐのが好きなんですよ」

―相手役のザンダー・パリッシュはいかがでしたか?
「パートナーとして、一緒に踊っている感じがします。お互いに接することの多いバレエですから、この『一緒にいる』という感覚が大事なんです」

―黒鳥のグランフェッテは見事でした! 32回回っているとき何を考えているのですか?
「足がとても疲れるんですよ(笑)。足のコントロールが大切なので、そのことを考えています」

―確かに疲れそう…(笑)。目標にしているバレリーナはいますか?
「たくさん見てはいますが、特に目標にしている人はいません。誰かのコピーはしたくない。自分だけの踊りを追求していきたいと思っています」

―素晴らしいです。スコーリクさんを見ていると、舞台に人生のすべてを捧げている人に見えるのですが、普段の生活も楽しんでいますか?
「そうですね…たまには…」

―やはりバレエ中心なのですね。最後に、誕生日を教えてくれますか?
「4月20日です。頑固なひとでしょう?(笑)牡牛座ですからね」

◆ロミオに続いて、『白鳥の湖』のメインロールであるジークフリート王子を踊ったザンダー・パリッシュ。パートナーを引き立てる演技で、彼自身の見せ場も正確にこなしていた。舞台に出てきただけで優しい気分になる不思議なダンサーだ。
―今回はスコーリクが相手役ですね。
「彼女はとても美しい…そしてとても強いんです(笑)。ファンタスティックなダンサーです」

―ザンダーさんは、展開していく情景ごとに、照明やダンサーたちと完璧なハーモニーを醸し出しているように見えます。
「素晴らしい雰囲気を味わいながら踊っていますよ。そういう作品ですから。音楽も照明も、全体のムードも気に入っています」

―日本のテクニカル・スタッフはいかがですか?
「最高です。ものすごくいいです」

―英国のインタビューでは、相手役が必要なものを知るために、そのダンサーの映像を見て準備すると答えていましたね。
「相手役によってやるべきことが少しずつ変わってくるところがあります。女性を的確にサポートすることが大事です」

―理想のダンスール・ノーブルですね。
「ありがとう!」

◆『ロミオとジュリエット』では、父権主義的なジュリエットの父を演じ、『白鳥の湖』では、ジークフリートの家庭教師をコミカルに演じていたソスラン・クラエフは、ほぼ毎回ステージに登場する「マリインスキーの縁の下の力持ち」だ。現地サンクトペテルブルグでも、子供向けの創作バレエで父親的な役を表情豊かに演じていて、彼にしか表せない個性を感じさせた。素顔は、とても温かい人柄の男性だった。

―ジュリエットの父と、今日は王子の家庭教師を演じていました。
「とても面白い役どころですよ。ジュリエットの父親役では、ラストで本当に涙が溢れてくるんです。俳優としての演技が必要ですが、そばにいる相手役が誰であるか、ということが重要ですね。ジュリエットを誰が演じるかによって、ラストで泣くタイミングも変わってきます」

―そういえば、三回とも別のタイミングだったように思います。
「毎回変わりますよ(笑)」

―個人的には、シリンキナのジュリエットのときのソスランさんの泣き方にもらい泣きしてしまいました。普段のレッスンは、演技中心なのですか?
「いえ、皆と同じクラス・レッスンを受けています。マリインスキーにはベテランから伝わる役の伝統があり、いつもアドバイスを聞いてきました。そうやって、ひとつひとつ演技を作っていくんです」

―素晴らしいですね…! 本当に、日本に来てくれてありがとうございます。
「こちらこそ、本当にありがとう!」

◆超満員となった『白鳥の湖』のソワレ公演で、ウリヤーナ・ロパートキナのパートナーを務めたダニーラ・コルスンツェフ。美の化身のようなカリスマ・ダンサーと自然に踊ることが出来るのは、長年一緒に踊っていたコルスンツェフ以外にはいない、そう思わせるほど完璧なサポートだった。背が高く、高貴な雰囲気を漂わせながら、親しみも感じさせる魅力的な踊り手だ。

―マリインスキーは何年目になりますか?
「19年です。その前にモスクワ・クラシック・バレエで6年踊っていました。ウリヤーナとも一緒にこの役を踊って19年になります。他のパートナーともたくさん踊りましたが、一番多く踊ったのはウリヤーナです」

―では、ごく自然に踊ることのできる相手といえますね。
「踊りはパートナーとの接触が出来ているか出来ていないか、ということが重要なのです。私は彼女のことをよくわかっているんです。今日はこんな調子だから、あそこはああやるだろうな…とかね。踊りながら一体化しているので、テクニック的なことを意識することはありません」

―究極のパートナーシップですね。19年前に王子を踊ったときのことを教えてください。
「たくさんのことをしなければならないので、とても緊張して、忘れないように全部紙に書いて暗記していました。あそこでああやって…というのをメモに書いて覚えたんです。それは今でも残してありますよ」

―忘れられない思い出ですね…マリインスキーのジークフリートについてはなんでも知っているコルスンツェフさんですから、後輩ダンサーから教えを請われることも多いのではないですか?
「実際、今のバレエ団では指導する側になりつつあります。マリインスキー・バレエの伝統的なスタイルを身に着けることが大切です。それは脈々と引き継がれてきたものですからね」

取材:小田島久恵(音楽ライター)

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いよいよ最終日!
世界のバレエの至宝。ロシア芸術の都サンクトペテルブルグの高貴な華
マリインスキー・バレエ<キーロフ・バレエ>
2015年来日公演

詳細はこちらから

「白鳥の湖」
 12月6日(日) 13:00 東京文化会館

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