2016/3/1
ニュース
調べてみました。聞いてみました。 Vol. 1 聖トーマス教会合唱団「マタイ受難曲」
人類最高の音楽遺産、最大の傑作と讃えられているJ.S.バッハ「マタイ受難曲」。まもなく来日する聖トーマス教会合唱団&ゲヴァントハウス管弦楽団の公演を前に、バッハがカントールを務めた聖トーマス教会や、マタイ受難曲についてなど改めてご紹介していきます。
初回はライプツィヒや聖トーマス教会についてです。
Q1:聖トーマス教会のあるライプツィヒは、どのような街なのですか?
ドイツの東部にある都市です。首都ベルリンの南西、ドレスデンの北西に位置し、特急列車で1時間30分もあれば着いてしまう街です。その昔12世紀の頃、ライプツィヒはヨーロッパ全体の中心地、縦横にのびる街道が交わる場所として、交易が盛んに行われた“商業の街”だったそうです。東西南北の新しいものがもたらされる刺激に富んだ街として発展しました。J. S. バッハが後半生を過ごしたことから“バッハの街”として有名ですが、メンデルスゾーン(1809~1847)がゲヴァントハウス管弦楽団の常任指揮者として亡くなるまでを過ごし、シューマンがクララに出会い新婚時代を過ごし、ワーグナーが生まれた街でもあるのです。
Q2:静かな街だと思っていました・・・。勝手なイメージですが。
伝統の街であることは確かです。歴史的な建物が残っており、街を歩くと歴史を感じることができるそうです。ドイツで2番目に古い大学(ライプツィヒ大学)があり、ゲーテ、ニーチェなどが学び、森?外も留学していた、と聞くと落ち着いた静かな、少し難しい街のイメージが沸いてきます。しかし、ドイツ最古のコーヒー店(カフェ・バウム)がライプツィヒにあると聞くと、また少しイメージが変わります。芸術家たちが集って語りあっている様子を想像するだけで楽しくなってきてしまうから不思議。そう言えば、J.S. バッハには『コーヒー・カンタータ』と呼ばれる作品もありますね。経済的な発展を基盤に、人々が集まり、芸術文化が花開き根づいていった街。進取の気風にも満ちた街だったのでしょう。
Q3:では、聖トーマス教会とは、どのような教会なのでしょうか。
ライプツィヒには、聖ニコライ教会と、聖トーマス教会という2つの主要な教会があります。聖ニコライ教会は商業の守護聖人ニコライに捧げられ市民に広く信仰されたのに対し、聖トーマス教会はライプツィヒを所領していた辺境伯が設立した修道院の付属教会として建てられました。その修道院で学ぶ少年たちは、聖職者になるための教育と音楽教育を受け、聖トーマス教会での典礼(礼拝)だけではなく、聖ニコライ教会でも歌を捧げるなど重要な活動を行ってきました。その後、ルターの宗教改革に伴い、聖トーマス教会は市民の教会となり、付属学校と合唱団もライプツィヒ市の管理下におかれますが、聖トーマス教会合唱団を指導する音楽監督(トーマスカントール)が、ライプツィヒ市全体の音楽を統括・推進する役割も担うようになりました。J. S. バッハも1723年から亡くなるまでの27年間トーマスカントールを務め、多くの作品を残しました。
Q4:バッハが「マタイ受難曲」を作ったのはいつ頃なのでしょうか?
マタイ受難曲は1727年に初演され、1729年に再演されました。その後1736年に改訂され、こちらは後期稿と呼ばれています。今回上演されるのはこの後期稿です。
Q5:マタイ受難曲は当時から人気の作品だったのでしょうか?
1750年にバッハが亡くなってから、次男のカール・フィリップ・エマヌエル・バッハが部分的に上演をしていたようですが、18世紀後半には全曲演奏の記録はありません。1829年にメンデルスゾーンが復活上演に成功すると、ドイツ各地で盛んに上演されるようになりました。ちなみに、メンデルスゾーンは14歳の時、祖母からクリスマスプレゼントとしてマタイ受難曲のスコアを贈られたそうです。
Q6:受難曲とは、いったい何でしょうか。
イエス・キリストが十字架にかけられた日を「受難日」、磔刑にされる前と後の物語を「受難物語」と言います。その物語は、暗唱や朗唱で後世に伝えられてきました。教会の拡大とともに次第にしっかりとした作品「受難曲」へと発展しました。新約聖書にはイエスの弟子4名それぞれが伝えたイエスの物語が記されています。その中の一人マタイが伝えたものをもとに、バッハが作曲したものがマタイ受難曲です。
– – – – – – – – – – – – – – – – – – – – – – – – – – – – – – – – – – – – – – – – – – – –
人類最高の音楽遺産
聖トーマス教会合唱団&ゲヴァントハウス管弦楽団
J.Sバッハ『マタイ受難曲』
2016年03月09日(水) 18時30分開演 サントリーホール
2016年03月11日(金) 18時30分開演 東京芸術劇場 コンサートホール
⇒公演詳細はこちらから