2016/10/6
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ゲルギエフが抜擢した期待のテノール!エフゲニー・アフメドフに聞く[マリインスキー・オペラ]
10月15日の「エフゲニー・オネーギン」でレンスキー役のゲルギエフが抜擢した期待のテノール、エフゲニー・アフメドフのインタビューです。
『エフゲニー・オネーギン』という演目は、ロシアを代表するオペラの一つですし、それをマリインスキー劇場が上演するということで日本の観客はとても楽しみにしています。どういうレンスキー像を日本の観客に見せたいですか?
レンスキーは、クラシックな青年、典型的な若くて恋をしている青年というイメージです。あらゆることに少し真面目すぎるところがあって、カッとなりやすく、嫉妬心の強いところがあります。僕もまだ若いので、レンスキーに共感できます。彼が感じているいろいろな気持ちもよく判ります。彼という人間を理解するのは難しくはありませんが、時代が違うので、振る舞いや歩き方、動きは、少しクラシックスタイルになるよう心がけています。
新しい演出だと聞いていますが、その特徴、面白さ、難しさなどを教えてください。
この作品は、僕がマリインスキー劇場にデビューした作品です。ステパニュク監督は天才的なオペラの演出家で、特にオペラ歌手の特徴を理解しているところが素晴らしいと思います。今回の『エフゲニー・オネーギン』でも、歌手が音楽家として最高のパフォーマンスができる環境を作ってくれています。また、舞台装置も衣装も美しいですね。そういう要素もこの作品に出演する時に気持ちを盛り上げてくれます。緞帳が上がった瞬間、客席から拍手が沸きおこるくらいです。
この作品がマリインスキーでのデビューだったそうですが、どのようにデビューが決まったのでしょうか?
プロダクション制作が始まった時、僕はまだマリインスキー劇場のアカデミーの学生でした。それと同時にミハイロフスキー劇場でも歌っていました。その頃、ミハイロフスキー劇場では『皇帝の花嫁』のプロダクション制作が進んでいて、僕は両方のリハーサルを行ったり来たり、忙しくしていました。もともと、僕はプレミエ公演で歌うことはないと思っていたんです。レンスキー役の候補は僕のほかに2人いましたから。そうこうしているうちに、いよいよ本番日も近くなり、ゲネプロが行われました。リハーサルに参加している歌手がステージ上で全員歌い、最後にマエストロ・ゲルギエフが初演は僕が歌うように、と決めたのです。それは僕にとって大事件でした!なぜならそのゲネプロまで、僕はマエストロ・ゲルギエフをテレビでしか見たことがなかったからです。雲の上の存在だったのです。本当に緊張しました。でも本番はとてもうまくいって、今こうしているわけです!(笑)
ゲネプロまでは3人のレンスキーがいて、そのうちの1人だったのですね。
はい。プレミエ公演は3回あったのですが、僕は初日と3日目に歌いました。
3日間のうちの1日目、ということは正真正銘の第1キャストですね。3人のテノールのうち誰がメインになるかということは、ゲネプロまで決まってなかったということですね。それは本番の何日前に決まったのでしょうか?
本番の2日前でした。これはいつものマリインスキー劇場のやり方で、どの作品でもわりと本番ギリギリまで自分の出演があるかどうか知りません。常にスタンバイ状態ということですね。常に準備万端にしている、ということです。
レンスキーは3人のうち誰がメインで歌うか判らないままゲネプロをやったわけですよね。
実際は、ゲネプロですら直前まで誰が歌うかわからないことも時々あります(笑)。僕の場合は「ゲネプロでは君は歌わないよ。他の2人のレンスキーが歌う」と言われていました。でも、歌わなくてもその場にはいなくてはいけなかったので、ゲネプロには行き、客席に座っていて見ていました。最初に1人目のレンスキーが歌い、その後2人目が出てきて歌いました。マエストロ・ゲルギエフが順番に歌わせていたのです。オネーギンとレンスキーの決闘のシーンの前に休憩があり、ステパニュク監督が近寄ってきて「ジェーニャ、これから決闘のシーンとアリアだけど歌えますか?」と聞かれました。僕が「歌えます!」と答えたら、「ではすぐに着替えてきてください。」と言われたのです。急いで着替えながら発声練習をして、そのまま舞台に上がったのです。
今の話を伺うと、なぜマリインスキーから若い歌手がどんどん新しく出てくるのか、という秘密の一端を知ったような気がします。アーティスト側は常に準備できていなければいけないと、いつ何を歌えと言われても、準備OKですと言わなければいけないんですね。すごく大変ではないですか?
歌手や楽器奏者は毎日練習を続けなければいけません。もちろん長期休暇をとったり、普段の休みもあったりするわけですが、毎日の練習は欠かせません。だから逆に言えば、今日は歌えるけど明日は歌えない、という状況はありえないのです。
ある意味、スポーツ選手のようですね。サッカーの選手はグラウンドに出てない人でも、お前いけるか?と言われたらすぐに行けるように準備しているわけですから。
アーティストだって人間ですから、やはりリハーサルや本番がたくさん続いたりすると、心が空っぽになってしまうことがあります。でも、僕たちの前には、弛むことなく働き続けるマエストロ・ゲルギエフという素晴らしいお手本がいます。その姿にハッとさせられ、力をもらっています。
普通の劇場ですと、表に出る歌手と控えのままでいる歌手と決まっていることが多いようです。
僕はまだ劇場でのキャリアは長くありませんが、すべてはその人自身によるのではないでしょうか。運にもよると思いますが、いい意味での野心があるかどうかも大事だと思います。自分は「準備OKです」と意思表示をすることは大事だと思います。必要とされたその瞬間、スタンバイできているようにすることが大切だと思います。そういう意味で音楽家は、謙虚で、正直で、誠実であるべきだと思います。それに、自分の中に伝えたい何かがあるとき、表現したい気持ちが溢れそうなときには、それを抑えることはできません!
テレビでしか見たことのないようなマエストロだったのに、急にステージの上でマエストロの指揮を見て歌うとなったとき、実際のマエストロはどのような印象でしたか?
僕はとても緊張していました。マリインスキー新劇場の舞台に立つのも初めてでしたし、舞台に上がったとして、どこの何がどうなっているのか・・・想像すらできませんでした。歌い始めてマエストロを見たとき、体が震えました(笑)。でもそれはそれでよかったんです。そのとき歌っていたのは、決闘でこれからレンスキーが死ぬというシーンですから、僕はレンスキーとほとんど同じような気持ちになっていたわけです(笑)。
マエストロのエネルギーはいかがでしたか?
もちろん、マエストロ・ゲルギエフのエネルギーを感じました。彼と共演できるのは大きな喜びです。それから、僕も一緒に一つの仕事をしているんだという実感がありました。つまりマエストロが一方的に舞台を進行させているのではないのです。マエストロからも直接、君が主導権を発揮するのが好きだよと言われたことがあります。自分が確信を持って表現するとき、彼はそれを受け入れてくれるのです。それはとても貴重なことです。
最後に日本のファンに向けてメッセージをお願いいたします。
親愛なる友人のみなさま!マリインスキー劇場公演『エフゲニー・オネーギン』をぜひ見にいらしてください。私たち全員、このチャイコフスキーの素晴らしい音楽を心から喜んでお届けします。みなさまに素敵なひと時をお贈りできるよう、全力でがんばります。
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帝王ゲルギエフ&伝説の劇場が威信をかける2演目
マリインスキー・オペラ 来日公演2016
「ドン・カルロ」
10月10日(月・祝) 14:00/10月12日(水) 18:00
「エフゲニー・オネーギン」
10月15日(土) 12:00/10月16日(日) 14:00
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