2016/10/18

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レイフ・オヴェ・アンスネスのレポート&インタビューチラシが完成しました!

レイフ・オヴェ・アンスネスのレポート&インタビューチラシが完成しました!是非ご覧下さい。

 3年半に及んだ〈ベートーヴェン・ジャーニー〉プロジェクトでは一人の作曲家の世界に専念したレイフ・オヴェ・アンスネスだが、昨年秋よりふたたびバラエティに富んだレパートリーでのリサイタルを再開している。この夏は母国ノルウェーでローゼンダール室内楽フェスティヴァルという新しい音楽祭を立ち上げ、またオリンピックで話題のリオ・デ・ジャネイロをはじめとする南米でのリサイタル・ツアーも行なうなど、ますます充実した活動ぶりを見せている。

 筆者は先日、ロンドンでのリサイタル(9月19日)を拝聴し、それに先だって11月の日本公演のプログラムについてお話をうかがった。
 シューベルトの「3つのピアノ曲D946」は、アンスネスにとって新しいレパートリーだという。この夏のローゼンダール室内楽フェスティヴァルではシューベルトの最後の年〈1828年〉をテーマにしたそうだが、これも最後の年の作品だ。「後期三大ピアノ・ソナタの影に隠れがちですが、驚くべき名作です。シューベルトのエッセンスが凝縮され、しかも多様な世界が描かれています」と語る。アンスネスはかねてよりバリトン歌手のマティアス・ゲルネとコンビを組んでおり、歌曲を通してもシューベルトの音楽の理解を深めている。

 さて今シーズン、アンスネスが特に力を入れているのはシベリウスのピアノ曲とショパンの4曲のバラードで、どちらも近々レコーディングの予定だという。「シベリウスのピアノ音楽は祖国フィンランドでさえほんの一握りの作品しか知られていませんそのうち40%ぐらいはすばらしい作品です。彼はピアノ奏者ではなかったので、ピアニスティックでない表現もあるのですが、彼のオーケストラ作品の色彩感を想像しながら演奏すればその魅力を引き出すことができます。シベリウスは、曲の雰囲気をつかむ能力に長け、その音楽にはどこかしみじみとした味わいがあります」
 リサイタル後半は、ドビュッシーの《版画》とショパンの《バラード》第2、4番と《ノクターン》第4番(op.15-1)で構成される。「ドビュッシーやショパンの音楽はきわめてピアニスティックで、鍵盤に手を置くだけでぴったりとはまる感覚です。《版画》はたしか17歳の時に初めて弾いたドビュッシー作品で、久しぶりに弾くのでとても新鮮です」
 この後半の演目はロンドンでのリサイタルで聴いたが、アンスネスのドビュッシーはかなり淡い色彩で描かれ、表現も繊細かつ精緻だ。もっとシャープなタッチでくっきり弾く奏者もいる中で、彼はまるで過去を回想するかのように、しっとりとしたドビュッシーを聴かせた。

 そして締めくくりはショパンの《バラード》第2、4番。今回アンスネスのショパンを聴いて感じたのは、彼がベートーヴェンの側からショパンにアプローチしているということだった。楽譜と真摯に向き合い、けっして勢いでは弾かず、ルバートも控えめであっさりした味わいの演奏ながら、曲の内的なドラマを鮮やかに浮かび上がらせる。実際、「ショパンの音楽は主観的でありながら古典的な点が特色だと思います」とアンスネスは語る。

 「私にとって4曲のバラードは、指揮者にとってのブラームスの交響曲のような大きな存在です。特にバラードは10代の頃から夢中でした。ショパンを弾くのは久しぶりですが、一つにはモダン・ピアノではショパンの繊細さを出すのが難しいと感じるからです。ショパンの音楽は想像以上に複雑に書かれているため響きのバランスに配慮が必要です」
 このようにどの作曲家とも謙虚に向き合い、その音楽を深く掘り下げていくアンスネス。颯爽とした青年の面影は今もあるが、静かに成熟を重ねている尊敬すべきアーティストである。

後藤 菜穂子(音楽ライター/ロンドン在住)

レイフ・オヴェ・アンスネスのインタビューはこちらから
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語り継がれる巨匠への道を、一途に向かう
レイフ・オヴェ・アンスネス ピアノ・リサイタル
2016年11月25日(金) 19:00 東京オペラシティ コンサートホール
公演の詳細はこちらから

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