2017/1/13
ニュース
ウラディスラフ・ラントラートフに聞く[ボリショイ・バレエ]
すらりとした容姿に甘いマスク。バレエダンサーかくあるべし!という理想を体現する若手プリンシパルの筆頭。レパートリーも幅広く、王子から革命を引っ張る義勇軍戦士まで、今回も見逃せない活躍が期待される。 [past_image 1] ボリショイ・バレエを代表するダンスールノーブルとして活躍なさっていますが、近年はクラシカル・バレエの他に「じゃじゃ馬ならし」(マイヨー)、「ハムレット」(ポクリタリ)、「現代の英雄」(ポソホフ)などのモダン・バレエもレパートリーに入れていらっしゃいます。
日本公演で踊ってくださる「パリの炎」ももちろん楽しみですが、「椿姫」「オネーギン」「スパルタクス」(クラッスス役)も楽しみです。
それぞれの作品を、どのように踊られるか・・・と観客に興味を持たせるラントラートフさんですが、
個々の作品に入っていく時に心がけていること、忙しく体力的にも厳しい毎日だと思いますが、
自分に課していることはどのようなことでしょうか? 全く異なった演目、振付家との仕事ができて、僕はとても幸運だと思います。もちろんすぐにこういった役が回ってきたわけではなく、クラシック・バレエの経験を重ねて経験を積んできてから、徐々に始まったことです。
今日は古典作品、明日はモダン、と大変ですが、自分の中での頭のスイッチを入れ替えています。「今日は・明日は」というよりも、時間ごと、その時・その時で切り替えをしているかも知れません。
モダンは自分の身体の中に新しい動きを探し見つけ出す作業ですが、クラシックというのは我々にとって何事のも一番のベースになっています。ですので、もしクラシックが踊れれば、他の踊りは何でも踊れるのではないでしょうか。それくらいクラシックというのは踊りの土台になるものだと思います。つまりその基礎があって初めて次の段階に上がれるのだと思います。
レッスン前後のストレッチはモチロンですが、リハーサル後にダンベルなどを使って筋トレをすることもあります。女性のリフトがあるので背中や上半身を鍛えることはマストですね。そして鍛えると同時に、使った後の筋肉の緊張をほぐしたり伸ばしたり等ケアすることはとても大事なことです。怪我のないよう、健康でいられるよう、常に動ける身体にしておくことは踊り手として大切なことです。
休日に本当に何もしたくなくて1日家でごろごろ映画見たり本を読んだり全く動かずにいると、翌日、逆に身体がぎしぎしして動けなくてしんどいだけで・・・。休みの日も何かしら動いていないと後が大変なんですよね。(笑) 舞台後もケアをちゃんとしていますか?? いえ、舞台が終わるのは遅く23時頃ですし、疲労困憊しているのでただただ食べて寝たいですね。(笑)だから公演後にストレッチ等のケアは難しいからこそ、翌朝のレッスンに必ず行きます。 このように役柄のレパーとリーが増えるということは、ラントラートフさんにとってどのような意味を持っていますか? どんな作品であれ、準備不足だとやはり緊張が大きいですが、普通にきちんと準備が出来ていれば大きな満足感を得ることが出来ます。経験を重ねることは、自分への信頼感を得られるものだと考えます。自分を信じられると言うことは舞台で自分が何をしているかを理解していることです。つまり身体を自由に使えることが出来るということなんですね。だからこそとても大きな満足を得ることが出来るようになります。
つまり「経験」出来るということは、自分を信じられるようになっていくことなんだと思います。 [past_image 4] 先日のロンドン公演でも「パリの炎」は反響が大きかったと聞きました。日本ではこの(ラトマンスキー版)「パリの炎」は初演です。全幕を演じるにあたって、フィリップの役に対するお考えを聞かせてください。どのような存在として描き出したいですか? 実はフィリップ役は自分のキャリアにおいて初めて貰った大役でした。入団して2シーズン目にラトマンスキーは当時19歳の僕を信頼しこの役を与えてくれました。だから「パリの炎」は僕にとって本当に特別な物語なのです。大好きだし、大切にしているし、本当に1番。そう、初恋なんです。(笑)だからこそ、日本で踊れるのはとても嬉しいです。エネルギーに溢れ情感豊かで、日本のお客さんには楽しんで貰える要素が沢山あるので、きっと満足して貰えるでしょう!フィナーレに向かっていく中で、パ・ド・ドゥは大変有名ですが、それだけではなく数々のドラマがあり、踊りがあり、味わい深い個性豊かな人間の世界と歴史が描かれています。 バ・ド・ドゥは世界中あちこちで踊られていますが、全幕を見る機会がとても少ない演目なので、日本で観られるのが楽しみです。 まかせてください!決してがっかりさせません(笑)。フィリップはただ単純に力強く民衆を率いる男ではなく、逆にジャンヌを気遣う優しさや周囲への思いやりに溢れています。そして皆がより良く生きるにはどうすれば良いのかを常に考え、民衆を支配しようとするのではなく民衆の為に全力を掛ける男なのだと思います。そういう彼の人間くさい面を大事にしているので、僕のフィリップはただ強いだけの男ではないと思います。 [past_image 3] 「パリの炎」とは打って変わって、「ジゼル」も踊ってくださいますが、
アルブレヒト役でダンサーに求められているものは何だとお考えでしょうか? アルブレヒトはここ3年踊ってない!踊れるなんて嬉しい(笑)
この役に求められるのは、舞台を生きること、ですね。3時間の人生を生きるんです。とても小さい人生ですが、愛し合い、失い、ジゼルを想う。愛があり悲劇があって2幕はもう全てが詰まっている。そして新たに生きなくてはならない魂の世界なんです。
ジゼルは僕にとってまた特別な作品で、ラブロフスキーとこの役作りをしました。彼は正真正銘のボリショイのダンサーです。その彼から受け取った「ボリショイ」そのものを、今度は僕が自分の身体に染み込ませ観客に見せることで引き継いでいく。この経験が出来た事、そして得られたものは何ものにも代え難い贈り物です。この役は「心からの人生」であり、それを踊るだけ。他に意味はありません。 [past_image 2] そして「白鳥の湖」は確か日本でこの役を初めて踊られたのではなかったでしょうか?
古典中の古典、ボリショイ・バレエの「白鳥の湖」は特にダンサーに取って過酷だと思いますが、
最初に踊った頃から、変わってきた部分、変わってきた感情などはありますか? 2年前富山で初めて踊りました。富山は山の綺麗な所ですよね。舞台も大きくて素晴らしいですし。
その頃から、もちろん違いはあります。日本で踊るときも準備はしましたが、衣装をつけて舞台装置があって他のダンサー達とリハーサルする時間が少なく、最初から最後まで踊れるか不安だったのを覚えています。それにグリゴリーヴィチと仕事をしたことは、僕にとって大変意味のあることでした。彼の振付は動き一つ一つに意味があるし、ドラマがある。とにかく踊りが多くて肉体的にも苦労します。そしてこのグリゴローヴィチの作品によって新たなクラシックへの理解というか、新しい視線を得られました。2幕4場の体力配分を考えていかに全てを踊りきるか、自己調整を行うということを学べた作品で、新しい感覚を身体で体感出来た作品です。
黒鳥のパ・ド・ドゥが特に好きです。音楽の対話があり、オディールの思考が音楽であり、その音楽に合わせた動き全てに意味があります。クラシック作品の中の1つのドゥエットなのにそこに主題があるんですよ。つまり、単なる「踊り」ではなく「2人の対話」という主題がデュエット(踊り)になっているんです。こんなパ・ド・ドゥは他に本当にありません。 来年の来日公演は、ボリショイ・バレエが初めて来日してから60年という節目になります。
お待ちしている日本のファンにメッセージをお願いいたします。 日本は常に心地良く、僕にとって特別な国です。とても誠実に舞台を観てくれるし、心からの言葉をかけてくれます。お客さんの温かい反応は僕たちアーチストに忘れられないほどの感動を与えてくれるんですよ。とにかく感謝しています。御礼が言いたい!
整えられた街並や生活の質、全てにおいて日本はどの国とも違う素晴らしさがあります。特に空港に着いた時のあの日本の匂いがたまりません!早く日本に行きたいです。というかいつでも行きたい国です。僕たちを日本へ呼んでくれて、楽しみに待っていてくれてありがとうございます。僕も6月がとても待ち遠しいです。 お待ちしております!! ありがとうございます。僕も待っています(笑)! ▼来日60周年 お年玉キャンペーンページはこちらから▼[past_image 5] --------------------------------------------------------------- 初来日から60年、バレエの殿堂が魅せる輝きと進化。 ボリショイ・バレエ6月4日(日)13:00「ジゼル」オブラスツォーワ/ツヴィルコ
6月4日(日)19:00「ジゼル」ザハーロワ/ロヂキン
6月5日(月)19:00「ジゼル」クリサノワ/ラントラートフ
6月7日(水)18:30「白鳥の湖」スミルノワ/チュージン
6月8日(木)13:00「白鳥の湖」シプーリナ/オフチャレンコ
6月8日(木)19:00「白鳥の湖」ザハーロワ/ロヂキン
6月11日(日)18:00「白鳥の湖」ステパノワ/オフチャレンコ
6月12日(月)18:30「白鳥の湖」スミルノワ/チュージン
6月14日(水)19:00「パリの炎」クリサノワ/ラントラートフ
6月15日(木)19:00「パリの炎」シプーリナ/ワシーリエフ ⇒ 公演の詳細はこちらから