2018/2/16
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阪田知樹がライプツィヒのゲヴァントハウスにデビュー
2018年1月27日にライプツィヒのゲヴァントハウスでリサイタルデビューを行った阪田知樹の公演レポートが届きました!
阪田は2016年にブダペストで開催されたフランツ・リスト国際ピアノコンクールで優勝し、併せて6つの特別賞を受賞するという快挙を成し遂げた。今回のリサイタルはその受賞記念といえるもので、ゲヴァントハウス内のメンデルスゾーン・ザールにて行われた。
プログラムは、バッハが編曲したマルチェッロのオーボエ協奏曲より第2楽章から始まった。阪田は豊かな詩情をこめて切々と奏でる。それが、次のフランス組曲ト長調にアタッカで入った瞬間、突然目の前にまばゆい陽光が差したかのようで、聴き手の頬も緩む。ここでの陰と陽の対比は鮮やかで、阪田からバッハ縁のライプツィヒの聴衆へのオマージュのように感じられた。彼のバッハは音楽の造りが大きく、奇をてらうような表現は皆無で、安心して身を委ねられる。各舞曲のコントラストも利いており、第6曲のルールでは右手と左手の独立した動きが耳を楽しませ、終曲のジーグでは舞踏の快楽へと導いてくれた。
続くブラームスのパガニーニの主題による変奏曲。超絶技巧を要求される難曲だが、阪田の手に掛かると、この作品の多彩な側面が浮かび上がってくる。特に印象深かったのは、一瞬の間を置いて始まった第11変奏のアンダンテと第12変奏で、この作曲家の晩年の小品を聴くかのような趣きがあった。
後半はオール・リスト。まさにリスト・コンクールを制した阪田の面目躍如といえるプログラムだろう。まずは超絶技巧練習曲から4曲。〈鬼火〉での目がくらむような細かい動きに漂う詩情。〈雪あらし〉では、吹雪を思わせる大きなうねりの中から聴こえてくる低音の動きにポエジーを感じた。特に感銘を受けたのは、オペラ《アイーダ》からの神前の踊りと終幕の二重奏。オルゴールを思わせる高音の繊細な動き、そして終幕での切れ入るような儚さ。阪田は単に腕が立つというに留まらず、リストが作品に込めた文学的、オペラ的な要素をしっかり咀嚼し、音楽的に表現できる資質を備えているように思われた。
最後のスペイン狂詩曲では、オクターブの動きにも余裕を感じさせ、後半のホタ・アラゴネーサからは雄弁さに加えてほとばしる勢いが加わる。万雷の喝采に応えて、リスト編曲によるシューマンの《献呈》を演奏。爽やかな余韻が残った。現在ハノーファー音大で研鑽を積んでいるという阪田だが、これからじっくり時間をかけて表現と活動の幅を拡げていってほしい。今後が楽しみな逸材である。
中村真人(在ベルリン/ジャーナリスト)
◆阪田知樹のプロフィールなどアーティストの詳細
⇒ https://www.japanarts.co.jp/artist/TomokiSAKATA
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