2018/3/28
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金子三勇士 インタビュー ~ピアノ・リサイタルに向けて~
2018年4月13日、東京オペラシティ コンサートホールでピアノ・リサイタルを行う金子三勇士。コンサートに向けたインタビューをぜひ、ご覧下さい。
「6年前にスタートしたこのシリーズへの出演が、僕のデビュー公演でした。実はオペラシティには他にも思い出があります。ハンガリーに住んでいた9歳の頃、日本に一時帰国した時、ちょうどオペラシティができたばかりで遊びに行ったことがありました。タケミツメモリアルではピアノの弾き込みが行われていて、僕も弾かせていただく機会があったのです。その時、いつかこういうところでコンサートができたらいいなと言ったことを覚えています。それから13年後、実際にそこでデビューすることになったわけです。今回はそんなステージに戻ってきたということで、これまでを振り返り、また新しいチャレンジとなるようなプログラムにしたいと考えました」
午後のひとときに演奏する作品としてまず選んだのは、敬愛するリストの名曲だ。
「リストの生き方を通していろいろなことを発信していきたいという想いがあるので、後半は彼の作品で固めました。リストというと超絶技巧のイメージがついてきますが、今回はロマンティックで時にメランコリックな彼の一面を紹介します」
そして前半は、自作の「イントロダクション」で始める。これまでプログラムを決める際、「開演前から高まるみなさんの期待感に応え、さらに会場の空気をまとめられるような、はじまりにピッタリの曲がないことが悩みだった」という金子は、「日本とハンガリーのテイストを少しずつ取り込んだ自己紹介のような曲」を用意することにしたそう。新しい試みだ。そして続く作品としてモーツァルト、ベートーヴェン、ショパンを選び、後半のリストへの流れをつくる。
「モーツァルトのソナタは可愛らしい曲なので、9歳で初めてオペラシティにお邪魔した時に戻るような感覚で演奏したいです。また、ベートーヴェンの『エリーゼのために』では、リストの視点で見たこの作品を表現するつもり。普段皆さんが耳にするものとは、少し違った音楽をお届けできるのではないかと思います」
最近特に、こうした有名曲に取り組む楽しさに目覚めたという。
「メジャーで皆さんが好きな曲ほど、弾く上でスリルと責任がありますよね。他の奏者と違う表現をするなら説得力が必要で、それにはあらゆる方向から作品を見なおして解釈を創らなくてはいけません。最近は他のピアニストの録音を聴くことが減り、楽譜と向き合う時間がますます長くなっています。『ラ・カンパネラ』も、高音の表現に工夫を加えたりして、去年あたりからやっと納得がいく形になったと感じています」
ところで、ハンガリーと日本の血を引き群馬に生まれた金子は、わずか6歳のときにどうしてもハンガリーでピアノを学びたいと主張し、親元を離れて留学している。今回は子供の頃の気持ちに立ち返る公演・・・ということなので、その時の自身の決断についてどう思うかを聞いてみた。
「今6歳の子供を見ると、こんなに小さくてよくそんなことを言ったなと自分でもびっくりしますね。ピアノや当時出会ったハンガリーの先生のことが、本当に好きだったんだろうと思います。あのとき行って良かったです。ただ、振り返ると大変だったことのほうが多かったようにも思うので、人には勧めませんが(笑)」
ユニークな生い立ちならではの感性、新しい解釈や挑戦を取り入れた今回のアフタヌーンコンサート。公演の最後にはサプライズも用意されているというので、楽しみだ。
高坂はる香(音楽ジャーナリスト)
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金子三勇士ピアノ・リサイタル ラ・カンパネラ
2018年4月13日(金) 13:30開演 東京オペラシティ コンサートホール
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