2018/7/27
ニュース
湯山玲子氏が観たブルガリア国立歌劇場~カルメン 後半
『カルメンCarmen』はビゼー、『トゥーランドットTorandot』はプッチーニという稀代のメロディ&和声メーカーの響きは、まさにこの歌劇場によって、再認識させられることは間違いない。感情を使わず、メロディーに声自身を同化していくがごとくのその音響の豊かさに心を掴まれた。
それにしても、このオペラ『カルメン』の楽曲の魅力には舌を巻く。エキゾチックな節回しを取り入れながら、人が持つメロディーセンサーをグラグラ揺さぶってくる名アリアの数々。あの有名なタンタカタカタカ、タンタカタカタカ、第1幕の前奏曲<闘牛士>の能天気さと明るさは、嫉妬とプライド、恋の罪という実は相当暗い男と女の物語の非凡なプロローグとして、あまりにも効果的。こういった音楽の「置き方」は、現代ではクエンティン・タランティーノ、ペドロ・アルモドバル等の、耳の良い映画監督が得意とする手法であり、そういった現代的なセンスを先取りしていたビゼーの表現力に今更ながら、驚いてしまう。
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<湯山玲子>
日本大学芸術学部文芸学科非常勤講師。自らが寿司を握るユニット「美人寿司」、クラシックを爆音で聴く「爆音クラシック(通称・爆クラ)」を主宰するなど多彩に活動。現場主義をモットーに、クラブカルチャー、映画、音楽、食、ファッションなど、カルチャー界全般を牽引する。著書に『クラブカルチャー』(毎日新聞社)、『四十路越え!』(角川文庫)、『女装する女』(新潮新書)、『女ひとり寿司』(幻冬舎文庫)、『ベルばら手帖』(マガジンハウス)、『快楽上等!』(上野千鶴子さんとの共著。幻冬舎)、『男をこじらせる前に 男がリアルにツラい時代の処方箋』(KADOKAWA)などがある。
湯山玲子公式サイト:http://yuyamareiko.blogspot.com/
ブルガリア国立歌劇場
10月5日(金) 18:30 「カルメン」
10月6日(土) 15:00 「カルメン」
10月8日(月・祝) 15:00 「トゥーランドット」
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