2018/11/20

ニュース

  • Facebookでシェア
  • Twitterでツイート
  • noteで書く

メータとキーシン。早く世に出て、息の長いキャリアを歩む[バイエルン放送交響楽団]

公演迫る「ズービン・メータ指揮 バイエルン放送交響楽団」。11月22日から指揮を務めるズービン・メータ、26日・27日に共演するエフゲニー・キーシンについて、音楽ジャーナリストの池田卓夫さんがご執筆くださいました!ぜひご覧下さい!

メータとキーシン。早く世に出て、息の長いキャリアを歩む
ドイツ・バイエルン州の州都ミュンヘンに本拠を構えるバイエルン放送交響楽団。2018年アジアツアーは急病の首席指揮者マリス・ヤンソンス(75)に代わってズービン・メータ(82)が指揮、すでに公演を終えた台湾からは絶賛の知らせが届いている。メータとミュンヘン、ヤンソンス、実は深い縁がある。インドのムンバイに生まれたメータが1954年、ウィーン国立音楽大学に指揮を学びにきた当時の先生はハンス・スワロフスキー。ヤンソンスも「旧ソ連から初めて『西側』への留学が認められ、ウィーンでスワロフスキー教授に師事した」と私に語っていたので、メータは同門の先輩に当たる。2003年にヤンソンスがバイエルン放送響のシェフに就いたとき、メータは同じバイエルンの州立歌劇場(ミュンヘン・オペラ)で音楽総監督を務めていた。さらに04年、市立オーケストラであるミュンヘン・フィルハーモニー管弦楽団から名誉指揮者号を授かった。「春の祭典」(ストラヴィンスキー)と「英雄の生涯」(R.シュトラウス)。メータがツアーのメインに選んだ2曲は1962~78年(26~42歳)に米ロサンゼルス・フィルハーモニーック(LAPO)の若さあふれる音楽監督として頭角を現し、「ズービン・ベイビー」の愛称でスターダムを駆け上った時代、英デッカの録音で世界を制覇した勝負曲だ。69年にLAPOと初めてツアーで訪れて以来、日本との結びつきも約半世紀に及ぶ。

特に2011年3月11日、イタリアのフィレンツェ五月音楽祭劇場オペラとの日本公演中にナンシー夫人ともども東日本大震災に東京で遭遇したのは「事件」だった。オペラの打ち切りが決まった時点で即、私を呼び出し「必ず単身、できるだけ早いタイミングで日本に戻り、大変な困難に直面している人々のため何かの役に立ちたい」と言い、記事にすることを望んだ。1か月後の4月10日、メータは約束通りに東京へ戻り、NHK交響楽団とベートーヴェンの「第九」交響曲を震災と原発事故の犠牲者・被災者のために捧げた。細部を極めるより楽曲全体の波動を大きくとらえ、豊麗なサウンドで再現するメータの流儀には賛否両論あるが、共演者も聴衆も大きなプールでゆったり泳ぐような気分に浸れるのは確か。人柄そのものの、心温まる音楽の時間を体験できるはずだ。一方、日本各地のリサイタルを終え、バイエルン放送響のツアーソリストに加わるのはエフゲニー・キーシン。1986年、15歳で日本にデビューしたロシア少年も47歳となり、世界の巨匠ピアニストへの道を一直線に歩んでいる。メータより35歳年少だが、日本との付き合いは32年と、かなり長い。鍵盤を華麗に鳴らしきり、楽曲の核心へと一気に迫るヴィルトゥオーゾ(名手)のソロ、横綱相撲の指揮、スーパー高性能のオーケストラの3拍子がそろった瞬間、作曲家自身が世紀のヴィルトゥオーゾだったリストの「ピアノ協奏曲第1番」は最高の輝きを放つことだろう。

池田卓夫 (音楽ジャーナリスト)
– – – – – – – – – – – – – – – – – – – – – – – – – – –
ズービン・メータ指揮 バイエルン放送交響楽団
11月22日(木)19:00開演 東京芸術劇場 コンサートホール(ロビー開場 18:00)
《プログラム》

モーツァルト:交響曲第41番ハ長調「ジュピター」
マーラー:交響曲第1番ニ長調「巨人」キーシンとの奇跡の共演!!
11月26日(月)19:00開演 サントリーホール(開場 18:20)
《プログラム》

リスト:ピアノ協奏曲第1番 変ホ長調 S. 124/R. 455 (ピアノ:エフゲニー・キーシン)
R. シュトラウス:交響詩「英雄の生涯」 作品40

11月27日(火)19:00開演 サントリーホール(開場 18:20)
《プログラム》

リスト:ピアノ協奏曲第1番 変ホ長調 S. 124/R. 455 (ピアノ:エフゲニー・キーシン)
ストラヴィンスキー:バレエ音楽 「春の祭典」
公演詳細はこちら

ページ上部へ