2019/3/14

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”エイフマン・バレエとは…” ボリス・エイフマン スペシャル・インタビュー Vol.3

Vol.1Vol.2を通して、日本公演の2つの演目について、掘り下げてお話しいただきました。連載最終回のVol.3は、ずばり“エイフマン・バレエ”の何が他のバレエカンパニーと一線を画すのか。その秘密の一端が解き明かされます。音楽の秘密
エイフマンさんのバレエでは、音楽との親和性も感動的なものです。どのように音楽を構成されていらっしゃるのでしょうか。

ボリス・エイフマン(以下B.E.):それは、とても大変なプロセスです。今まさに、ヨハン・シュトラウスの音楽を使って≪ピグマリオン・エフェクト≫というバレエを製作中です(2019年2月に世界初演を果たしました)。ヨハン・シュトラウスの曲は、とても有名なものが多いですが、この半年以上、ポルカ、ワルツ、ギャロップなど、彼の音楽を聴き続け、未知の音楽がまだあることに気付かされています。
音楽の中には、作曲家自身、思いもかけなかったようなドラマが秘められていることがあります。ですから、ワルツやポルカも、人間の深層心理を表現することが出来るのです。
もしこれらの曲をコンサートホールで聴いたら、全く別の印象を受けるでしょう。しかしそれを、劇音楽として聴くと、全く違ったイメージが浮かんできます。音楽が、違う響き方をしてくるのです。
以前、ある指揮者と話をしました。彼は私のバレエ≪チャイコフスキー≫を見て、その後、チャイコフスキーの交響曲5番をコンサートで指揮しなければならなかったそうです。彼は「頭の中にバレエのシーンが浮かんできてしまって、なんと指揮がしにくかったことか…」と言っていました。(※注:チャイコフスキーの交響曲第5番はバレエ「チャイコフスキー」の中で印象的に使用されている楽曲)
良く知られた音楽であっても、バレエの中の身体の動きと同一化します。それが、皆さんが驚嘆することなのです。馴染み深い音楽のはずなのに、突然、知られていなかった秘密のベールが開くような。
チャイコフスキーは、私のために音楽を書いてくれたのでは、と思うほどに感じます。作品の進化
エイフマンさんは、ご自身の作品のタイトルを変えたり改訂したりということを頻繁になさっています。作品に常に進化を求めていらっしゃるのですか?

B.E.:おっしゃる通りです。一つの演目を常に新しく変え続けているのは、世界でも私一人くらいではないでしょうか。
この数年でも、≪チャイコフスキー≫≪レクイエム≫≪カラマーゾフの兄弟≫≪赤いジゼル≫≪ロシアン・ハムレット≫などを更新しています。
バレエは、古くなっていくものです。ですから、私がまだ現役でいられる間は、聴衆に、いつも新しい新鮮な何か、息吹を感じてもらえるようにし続けたいと考えています。

それは、時代性もあって?

B.E.:それだけではありません、すべてが変化しています。バレエの技術も、アーティストも、そして私自身も変わります。私は、自分の古いバレエを見る気にはなりません。
最後に日本公演を行ったのは、約20年前でしたね。当時の日本では、私たちのバレエの捉えどころを見出すことが出来ないでいるように感じました。エイフマン・バレエとは?古典バレエなのか?現代バレエなのか?
私たちは、この20年間で、独自の個性・歴史を築いてきた非常にユニークな新しいバレエ団になりました。20年前とは全く違うバレエ団として、私たちは再来日いたします。なぜなら、私たちは常に進化し、常に新しいものを追い求めてきたからです。技術的にも、ロシアの伝統的な古典バレエと世界のモダンバレエのスタイルを融合させ、そこに、テクノロジー、人間の抱く感情や気持ち、エネルギーなど、すべてを込めているのが、エイフマン・バレエです。古典でもない、モダンでもない、まさに「エイフマン・バレエ」スタイルなのです。
世界中の聴衆が感動してくださるように、日本の皆さんの心にも、感動をお届けすることが出来ればと願っています。日本の聴衆は素晴らしいですから。芸術の“特典”
まさにエイフマンさんがされていることは、言葉の壁や国境を超越したことだと思います。

B.E.:言葉、とおっしゃいましたが、私は言葉は好きです。でも、身体が物語る言葉(身体の動きで表現するコトバ)こそ、より強く、よりオープンに、人々の秘密を表現できるのではと私は考えています。身体は、嘘をつきません。身体は真実しか語りません。
日本語とロシア語で、私たちが理解し合うためには、通訳が必要です。でもバレエの世界では通訳は必要ありません。これは、とても大切なことです。
ですから、私のバレエは、現代の世界でとても重要な存在意義を持っています。
(バレエを通じて)互いに近しい存在となり、互いに分かり合うことが出来る。みんなの共通語です。それは、芸術が持つ大きな“特典”ともいえますね。
私は、このような才に恵まれたことを、とても誇りに思います。私のバレエによって、様々な民族、文化、宗教を越えて、人々が一つになることができるのですから。

いかがでしたでしょうか?
含蓄ある言葉のひとつひとつが、ボリス・エイフマンが歩んできた創作人生の重みを物語ります。
世界で唯一無二の“エイフマン・バレエ”。生きた感動を、そしてエネルギーをチャージしに、是非劇場にお越しください。

Vol.1はこちら
Vol.2はこちら

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エイフマン・バレエ
「ロダン ~魂を捧げた幻想」

2019年7月18日(木) 19:00
2019年7月19日(金) 19:00
「アンナ・カレーニナ」
2019年7月20日(土) 17:00
2019年7月21日(日) 14:00
会場:東京文化会館
公演の詳細はこちらから

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