2019/6/30
ニュース
チャイコフスキー国際コンクール 現地レポート Vol.5
ファイナルの結果も、ほぼ予定通りに(演奏時間が押した分を考えるとだいぶスムーズに)発表されました。
冒頭、デニス・マツーエフ審査委員長は、参加者、そしてファイナリスト全員の演奏を讃えたうえで、「みなさんは、明日からが大変です。チャイコフスキー・コンクールの受賞者という称号と共に生きていくことになるのですから…」と話し、審査結果の発表に移りました。
第5位、第6位はなしというアナウンスがあったのち、第4位から順に発表されました。最終結果は以下のとおりです。
第1位 アレクサンドル・カントロフ (フランス)
第2位 藤田真央 (日本)
第2位 ドミトリー・シシキン (ロシア)
第3位 アレクセイ・メルニコフ (ロシア)
第3位 ケネス・ブロバーグ (アメリカ)
第3位 コンスタンチン・エメリャノフ (ロシア)
第4位 ティアンス・アン (中国)
モスクワの聴衆を虜にした藤田さんの演奏は、審査員からも高く評価されました。結果が出る前から、ロシアはじめ世界各地から次々と演奏会のオファーが入っていたそう。このコンクールに出場したことは、第2位という称号はもちろん、世界中にファンを作るという、ピアニストとしてのこれからにとってすばらしい成果がもたらされたようです。藤田さんのファイナルの演奏は、結果発表のあった最終日に行われました。チャイコフスキーコンクールでは、ファイナルでチャイコフスキーの協奏曲と、任意の1曲、あわせて2曲の協奏曲を一度に演奏します。コンチェルトのレパートリーの多さはもちろん、体力や集中力の持続性も求められる、ハードなステージです。
藤田さんは、1曲目にチャイコフスキーのピアノ協奏曲第1番を演奏。どっしりと落ち着いた音で始めたあとは、ひとフレーズずつ、自由に繊細にニュアンスを変えながら音楽を進めます。オーケストラとコミュニケーションをとりながら音楽をふくらませ、感情を放出させるようなフィナーレで魅了しました。
そしてすぐに続く2曲目、ラフマニノフのピアノ協奏曲第3番へ。ロマンティックなフレーズをたっぷりと歌わせ、若くフレッシュな情熱と、二十歳と思えぬ堂々とした強さが共存する演奏で、大曲を弾ききりました。
藤田さんは、ロシアのオーケストラならではの音、それぞれの奏者とアイコンタクトをしながらの演奏を楽しんだといいます。その言葉の通り、オーケストラのメンバーをぐいぐいと音楽に巻き込んで突き進んでいく、藤田さんのソリストとしての魅力が発揮されたステージとなりました。
第一次からファイナルまで、アーティスティックでユニークな彼だけの音楽を聴かせ、毎ステージ楽しませてくれました。ファイナルの1曲目は、チャイコフスキーのピアノ協奏曲として第2番を選択。この選択はカントロフさんのキャラクターによく合い、思い切りの良い表現でこの動きのある音楽が運ばれていきました。
2曲目は、ブラームスのピアノ協奏曲第2番。ブラームスのロマンティックさと、ため込んだ情熱をほとばしらせる瞬間のコントラストも見事で、ドラマを見ているような音楽を聴かせてくれました。
カントロフさんは、チャイコフスキーの協奏曲第2番を選択して初めて、このコンクールのピアノ部門優勝に輝いた人物となりました。そして彼は、著名なヴァオリニスト、ジャン=ジャック・カントロフさんの息子さん。今回が初めての大きな国際コンクールへの挑戦だったといいます。自らの足で一歩を踏み出したいという願いが実る結果となりました。
高坂はる香(音楽ライター)
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