2019/7/17
ニュース
エイフマン・バレエ「ロダン」の世界をもっと楽しむ ロダンとカミーユの彫刻
いよいよ、明日7月18日に開幕するエイフマン・バレエ 東京公演。
舞踊鑑賞ライター西原朋未さんが、「ロダン~魂を捧げた幻想」の作中で登場する彫刻作品についてをご紹介いたします。ご覧いただき、ぜひ会場へお越しください!
東京の最初の公演『ロダン~魂を捧げた幻想』は、バレエの中にロダンや、その弟子にして恋人であり、またミューズでもあったカミーユ・クローデルの彫刻作品も登場します。今回は作中に登場するおもな彫刻作品とともに、観賞の小ネタもちょっとご紹介いたします。ただ彫刻の形をなぞるだけではなく、物語と心理描写に組み込んだ、エイフマンならではの世界観がお楽しみいただけるでしょう。
なお東京文化会館の向かいにある国立西洋美術館の庭園では《カレーの市民》《地獄の門》が見られます。お時間があれば、ぜひ舞台鑑賞前にご覧ください。
■オーギュスト・ロダンの作品
ロダンとカミーユの出会いの場で生み出される作品。音楽《月の光》がそのロマンティックなシーンを彩ります。この彫刻は国立西洋美術館にも所蔵されており、《地獄の門》の一部にもなっています。
1幕中盤、この作品が生み出されていく場面はバレエの見どころの一つで、人間の塊から彫刻が生み出されていく様は息を呑みます。舞台では「市民」一人ひとりの容姿も忠実に描写されています。ロダンの作品はそのリアリティから「人間の型を取って作品を作ったのではないか」と言われましたが、ロダン役のガブィシェフさんの、まるで彫刻の中から生命を取り出すような演技も必見です。なおガブィシェフさんは「粘土をこねる」という表現のために、時間があればハンドグリップを握り手首を鍛えたそうです。
1幕のクライマックス、音楽《死の舞踏》とともに踊られるシーンで登場します。エイフマン氏いわく、「吸血鬼――ヴァンパイアのようにカミーユや他者から全てを吸いつくし、己の作品を創り上げようとするロダンの、創作への容赦ない執念」が炸裂しています。
バレエでは先の《うずくまる女》や《フギット・アモール》など、単独でも有名な作品をはじめ、《地獄の門》の様々な彫刻が再構築されています。カミーユはこの作品の女性像のモデルとなっているほか、作品の一部を手がけました。
ロダンの代名詞ともいえる《考える人》もまた、《地獄の門》の一部を成しており、振り付けにもしばしば登場する、重要なモチーフとなっています。
■カミーユ・クローデルの作品
カミーユの代表作のひとつで、1幕クライマックスの《死の舞踏》のバレエシーンや2幕の酒場でカミーユと「謎の男」が踊るシーンなどに登場する作品です。
ちなみにその「謎の男」、実は初演時には「クロード」という役名がありました。……というと、ご存じの方はピンときたかもしれませんね。実はカミーユはロダンと別れた後、《月の光》を作曲した音楽家、クロード・ドビュッシーと短い間ですが交際していたといわれています。恋人同士だったのかという点には諸説ありますが、ドビュッシーはカミーユの作品《ワルツ》を生涯大切にしていたということです。
クロトーは運命を象徴する古代ローマの三女神の一人で、死を司る女神。ロダンと別れ、自身の作品をつくり出そうとするカミーユが挑んだ作品で、その斬新な造形は発表当時、様々な物議を醸しました。またカミーユは自身の作品を作ってもロダンとの類似性を指摘され、それも彼女が心を病む一因となったのです。
ローズに連れ去られるロダンと追いすがるカミーユを連想させる作品ですが、カミーユ役のアンドレーエワさんによると「1人の人物の、現在・過去・未来を表している」という解釈もあるそうです。
《ワルツ》と並ぶカミーユの代表作。3人の女性が踊るように波間に遊びますが、バレエではどのように使われているのか……これはぜひ、舞台でご覧ください。
西原朋未(舞踊鑑賞ライター)
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ロダン ~魂を捧げた幻想」と「アンナ・カレーニナ」の使用楽曲のプレイリストを公開中!
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エイフマン・バレエ 日本公演 2019
7.18 [木] 19:00 「ロダン ~魂を捧げた幻想」
7.19 [金] 19:00 「ロダン ~魂を捧げた幻想」
7.20 [土] 17:00 「アンナ・カレーニナ」
7.21 [日] 14:00 「アンナ・カレーニナ」
会場:東京文化会館
(問)ジャパン・アーツぴあ 0570-00-1212