2019/12/1
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【マリインスキー・オペラ】活躍する女性ソリスト イリーナ・チュリロワ、アンナ・キクナーゼ
初日の幕を開けたマリインスキー・オペラ『スペードの女王』。男声・女声とも粒ぞろいの歌手たちが並ぶ中でも、ドラマティックな悲劇性の表現で聴衆を釘付けにしていたのがリーザ役のソプラノ、イリーナ・チュリロワだ。オペラの中で熱愛、葛藤、恋人ゲルマンの裏切りと悲嘆、という激しい感情を表す役で、歌も演技も高度な技術を求められる。ノヴォシビルスク生まれの若手チュリロワはヴェルディも得意で、2016年の来日では『ドン・カルロ』のエリザベッタも歌っていた。普段話す声はとても低く、落ち着いている
「リーザ役は、数年前の初演のときから長い時間をかけて準備してきました。今回の来日でも演出家のステパニュクさんのもとでリハーサルをしたので、とても安心して歌うことが出来ましたね。ステパニュクさんの指導はとても素晴らしく、リハーサルのときに詩の朗読をしてくださったり、『こういう本を読んでおくといい』というアドバイスを与えてくれたりするんです。他の国の歌手たちと違って、私たちはペテルブルグに住んでいますので、日本に来る前にも伯爵夫人が住んでいた家の近くを散歩したり、リーザが飛び込んで自殺する運河沿いを歩いたりして、役のイメージを膨らませていきました。生きた舞台セットがあるということは、大変な助けになりますよ」
「バーデン・バーデンでもダブルキャストの歌手が病気になって連日歌ったことがありますので、大丈夫です」
明日のゲルマン役はウラディーミル・ガルージンさんですが、相手役が変わると様々なことが変わるのではないですか?
「私自身も変わります。演技も気持ちも…明日は今日と違ったリーザになると思いますよ」
チャイコフスキーのオペラの特徴はどんな点にあると思いますか?
「作品によってまったく異なります。それぞれ違った個性があるのです。とても濃密で凝縮された世界で、まぎれもなく天才の音楽です。そんなチャイコフスキーのオペラを歌わせていただくことは、私にとってもとても勉強になる、貴重な機会なのです」
タイトルロール(!)であるスペードの女王=伯爵夫人を、特異な存在感と超自然的な歌声で演じたアンナ・キクナーゼ。声域はメゾ・ソプラノだが地の底から湧き上がるような低音も聴かせ、すべての登場人物の運命を左右するカリスマ的な演技を見せた。ステパニュクの演出では、白塗りのエリザベス一世のような凄味のある姿で登場する。衣装とメイクを取ったキクナーゼはとても優しい笑顔で、そばにいると癒されるような心地になる女性だった。
実際よりだいぶ年上の役ですよね。
「声質が声質ですので、おばあさんや魔法使いの役を演じることが多いのです。私自身、とても楽しんでいるんですよ」
「リュボフはお母さん役で、娘のマリアを遥か年上のマゼッパに奪われて、夫とともにマゼッパを憎んでいる役です。憎しみだけでなく、様々な感情を表現する奥深いパートです」
『マゼッパ』はチャイコフスキーのオペラの中でも日本では上演回数も少ないですし、ぜひこのチャンスに作品の魅力を知りたいです。キクナーゼさんのご活躍を楽しみにしています。
取材・文:小田島久恵(音楽ライター)
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巨匠ゲルギエフ&ロシア芸術の殿堂 マリインスキー歌劇場が総力を結集して贈る
マリインスキー歌劇場 チャイコフスキー・フェスティヴァル2019
▼画像をクリックするとPDFで詳細をご覧頂けます▼
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<公演情報>
マリインスキー歌劇場 チャイコフスキー・フェスティヴァル2019
歌劇「スペードの女王」
2019年11月30日(土)15:00 東京文化会館
2019年12月1日(日)15:00 東京文化会館
歌劇「マゼッパ」(コンサート形式)
2019年12月2日(月)18:00 サントリーホール
マリインスキー 歌劇場管弦楽団 演奏会
2019年12月5日(木) 19:00 サントリーホール(チェロ:アレクサンドル・ブズロフ)
2019年12月6日(金) 19:00 東京文化会館(ヴァイオリン:五嶋龍)
2019年12月7日(土) 13:00 東京文化会館(ピアノ:セルゲイ・ババヤン、辻井伸行)
2019年12月7日(土) 18:00 東京文化会館(ピアノ:セルゲイ・ババヤン)
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