2020/10/23

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千住真理子に聞く

デビュー45周年を迎えたヴァイオリニストの千住真理子が、今年12月、5年ぶりにバッハ無伴奏ヴァイオリンのためのソナタ&パルティータ全曲演奏会に挑む。
コロナ禍により、千住をはじめ殆どのアーティストがしばらくの間ステージに立つことのない時間を過ごした。今どのような気持ちで45周年記念のコンサートに向き合うのか。

千住真理子

ジャパン・アーツ(以下JA):バッハ:無伴奏ソナタとパルティータ全曲演奏会は、デビュー20周年以来5年毎に続けていますね。

千住真理子(以下MS):バッハの作品は、私自身の節目に必ずそばにありました。12歳でデビューした時、二十歳で挫折を経験した時、その2年後に復活した時にも。いつも、「ありがとう」と思いながら演奏していますが、越えられない壁でもあるのがバッハなのかもしれません。
20周年を迎えた時、「私がヴァイオリニストとして生きている限り、バッハを弾き続けたい」と心から思いました。以来5年に一度『バッハの無伴奏全曲演奏会』を行い、毎回自分と向き合い、自分自身を見つめ直しています。

JA:コンサートのタイトルを「平和への祈り」と題されています。

MS:バッハの音楽は「祈り」です。私たち人間の周りには戦争や紛争、予期せずして天災があります。不安な気持ちがあるから人々は平和への憧れを抱いている、それが広い意味での「平和への祈り」につながるのですよね。静謐な空間でバッハの音を出す瞬間、あぁ音楽の神様が私を導いてくれているのだ、と思えてきます。

JA:千住さんは、毎年100回ほど北海道から沖縄まで至る所で演奏会を行い、休む時間などない印象ですが、今年は新型コロナウイルス感染拡大の影響で暫くのあいだ演奏をお休みされていました。

MS:3月から演奏会のキャンセルが続き、ようやく8月にコンサートを再開することができました。それまでは、コンサートの後にサイン会でお客様と会ってお話したり、共演者と喜びを分かちあいハグしたり、人と人とが愛情を育み、人同士交わりのある生活が当たり前でしたが、そのようなコミュニケーションが奪われてしまった数ヶ月でしたね。 私がステージで演奏し、聞いてくださるお客様がいて、お互いの心が通い合う・・・一期一会の心の触れ合いがこんなにも大切なのだと、あらためて気付かされた時間でもありました。

JA:今回のコンサートは、さらに特別なものになりそうですね。

千住真理子

MS:今、お客様の前で演奏ができることをこれまで以上に貴重に思い、毎回大切に演奏しています。そして喜びと共に、責任をも感じています。
私も皆さんと同じように悩んだり苦しんだり、憧れを抱いたり、夢を追いかけている。そのような私の声を、バッハの音楽に乗せてお客様に伝えたいですね。コンサートに来てくださるお客様と一体となって演奏することの大切さを噛み締めて演奏しながら、私の胸の奥底の、自分でも気づかなかった心の声までもを音楽と一緒に届けられると思います。

JA:ありがとうございました。12月6日のリサイタル、私たちスタッフ一同も楽しみにしています。

(聞き手:ジャパン・アーツ)

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