2013/9/19
ニュース
ラモン・ヴァルガスのインタビュー[トリノ王立歌劇場]
世界の一流歌劇場から信頼を受けている、ベテランのテノール、ラモン・ヴァルガス。
2013年8月には、南仏オランジュ音楽祭の《仮面舞踏会》でリッカルドを歌い、1万人の野外劇場には感動の渦が沸きました。現在はサンフランシスコ・オペラでの《メフィストフェレス》で、ファウストを演じています。
今回のトリノ王立歌劇場の来日公演では、久しぶりに日本で歌声を聴かせてくれるヴァルガスのインタビューを紹介します。
『仮面舞踏会』の主役は、もちろんスウェーデン国王グスタフ3世をモデルに創り上げられたボストン総督リッカルドである。だからリッカルドに真実味がないと、オペラ全体が嘘っぽくなってしまう。
流石はトリノ王立歌劇場、世界で最高のリッカルド歌いの1人であるラモン・ヴァルガスに白羽の矢を当てた。このオペラの結末は一種信じ難い。自分を撃った親友を赦して死んでいくリッカルドに現実味を与えられるテノールでないと、いくら完璧に歌えても観客を感動させられないオペラなのである。
その点ヴァルガスは最高だ。現在最高のヴェルディテノールの1人でありながら、総督としては多少頼りないような印象を与えるほど優しい。決して権力をひけびらかさない。愛に溢れている。だからこそ、ヴァルガスが最後までヴェルディのレガートを駆使しながら、レナートに赦しを与えて死んでいく時、観客は素直に涙するのである。
「そのように思って頂けて光栄です。私はこの役が大好きで、沢山歌ってきました。そのためにもちろんモデルとなったグスタフ3世のことも研究しました。歴史から読み取れる通り、グスタフ3世は政治家に向いている人間ではありませんでした。芸術を愛し、物事を政治的に解決するのではなく、より精神的な発展を望んでいたのだと思います。
トリノの演出は、現代的な読み替え演出が台頭する現在においては、比較的クラッシックな方だと思います。どのような演出でも、このリッカルドの姿を現実的に演じきれるかどうかがこの役の一番難しい点だと思っていますので、一見軽薄にすら見えるこの人物像をどう表現するか、そしてオペラ全体を通して彼をどう成長させていくのか、皆さんに観て頂きたいと思います。
幸い、指揮者のノセダは伝統を大切にしてくれます。彼の豊かな経験と音楽を読み込む繊細さ、そして彼の表現力はイタリアオペラの伝統を将来につないでくれるような、素晴らしい公演を日本でも実現させるでしょう。
日本は、最近急激にオペラ界のレベルがあがってきていると感じます。そのような日本で私の大好きなリッカルドを歌える事が楽しみです。
モデルとなったグスタフ3世についても研究しました。彼の心は政治よりも芸術の方向を向いていたと思います。音楽会開催にも積極的でした。そんなロマンチストな性格はヴェルディのオペラにも引き継がれています。ですから、この役の難しさは音楽的な観点より、演者としていかにリッカルドを演じきれるか、というところに成敗がかかっていると思います」。
中 東生(音楽ライター)
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≪トリノ王立歌劇場 2013年日本公演≫
<「仮面舞踏会」より>
⇒ 公演詳細:https://www.japanarts.co.jp/special/torino_2013/
[公演日程] 会場:東京文化会館
《仮面舞踏会》
□12月1日(日) 15:00
□12月4日(水) 18:30
□12月7日(土) 15:00
《トスカ》
□11月29日(金) 18:30
□12月2日(月) 15:00
□12月5日(木) 18:30
□12月8日(日) 15:00
《特別コンサート“レクイエム”》
□11月30日(土) 14:00 サントリーホール