2021/4/13

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公演迫る!「入魂のショパン」そして、デビュー30周年について語る(横山幸雄)

横山幸雄さんならではのみずみずしい美音で奏でられるショパン。作品に長らく向き合い続けてきたピアニストならではの、考えぬかれた細やかな音楽づくりが効いていながら、その表現は自然発生的。
横山さんにとって、ショパンの音楽の“浸透具合”は演奏会の回を重ねるごとに増し続けているはず。12回目となる「入魂のショパン」がまたどのようになるのか、楽しみなところです。
今回は、次回の「入魂のショパン」によせる想い、デビュー30周年の節目に考えることについて伺いました。

横山幸雄

—恒例となった「入魂のショパン」も、2010年にショパンの全ピアノソロ作品を弾くという形でスタートしたときは、周囲はびっくりというリアクションでしたよね。

確かに、こういう形の演奏会をする人はあまりいませんからね(笑)。
実際にやってみて、ショパンの作品をより自信をもって表現できるようになりました。全曲を弾けたらそれで良いということではありません。でも、当然自分はショパンではないので、作品を全て知ることには大きな意味がありました。
昔、7年かけて全曲演奏会をしましたが、それだとやはり、最初のものは忘れてしまうんです。そのため次のステップとして、全作品を一度に見て消化してみたいと思いました。
そして回を重ねるうち、ショパンの作品は自分のもののような感覚になりました。むしろ自作曲のほうがよほど他人事のように思えます(笑)。

—今年の「入魂のショパン」は、どんな形になるのでしょうか。

全曲演奏を何度も行なって、その度に来てくださるお客様もたくさんいらっしゃるので、このところは少しコンセプトを変え、曲目を絞っています。
今回は1日で、ショパンの若き日、20代後半までの作品を演奏します。これまでの全曲演奏で消化を繰り返してきた感覚を踏まえて、また一つ一つの作品に集中して取り組んでいく形です。

―4月17日には、別プログラムによる大阪公演があります。

第1部はエチュードOp.10を中心とした若き日のショパンの作品、第2部はショパンの人生を追う4つのバラード、第3部は、すでに体調を崩していたショパンが最後の力を振り絞って書いた3番のソナタを中心とした作品を演奏します。ショパンの全貌を見ることができるプログラムです。

―この長いプログラムの真ん中でバラード4曲をまとめて演奏するのは、エネルギーが要りそうですが。

スケルツォ4曲よりは楽なんですよ。スケルツォは急速な部分も多いから、1曲終わると、「まだ次がある!」という感じがする(笑)。
その点バラードは、静かなゆったりした部分も多いし、自然な気持ちで弾くことができます。小曲が多いショパンにしては長い曲で、ショパンが伝えようという意識とともに、気合を入れて書いた作品といえます。心情をそのまま音にしている、独り言のようなマズルカやノクターンとは、少し違いますね。
その意味でバラードを演奏するにあたっては、行き当たりばったりではなく、しっかりと構成を考えて、起承転結のドラマを表現しなくてはいけません。

—今年でデビュー30周年。演奏活動、教育活動、さらにはレストランのプロデュースもあって、ずっと忙しく活動し続けていらっしゃいます。振り返っていかがですか。

自分でも、どうしてこうなるのかなぁと思うんですけれど(笑)。本当は、海を見てのんびり過ごす時間もほしいし、忙しいのが好きというわけでもないので。
振り返ると、20代のはじめ、デビューから5年くらいは、もっと精神的に追われていたように思います。新しいレパートリーもあるし、コンチェルトも初めてのものばかりで、オーケストラの方々も自分より年上。そのうえ、ショパンコンクール入賞者”としてのプレッシャーの中で舞台に立ち続けていましたから。
そんな“入賞者”としての活動がひと段落した20代半ばで、次の段階に入ったように思います。それ以降は、気持ち的にあまり変わっていないんですよね。

—ずいぶん早い段階で安定したんですね。

そう、生活のペースもその頃から基本的には変わらない感じ。

—ショパンコンクールのドキュメンタリーを拝見しても、19歳の頃からすでに今と同じようなノリというか、発言に落ち着きがありましたよね。

なんか、えらそうだったよね(笑)。

—いえ…あの年齢ですでに、やりたいこともはっきりしているし、周りのことも冷静に見ている感じで。そこからずっとフレッシュでいられるのはすごいですよね。

確かに、変な意味での慣れが出てくることはなかったですね。
そもそも、周りに何か言われてこうしようということはなく、自分がやりたいからやるというタイプなので。ベテランといわれる年齢になって、周りとの関係性が変わるところはあっても、それは周りが変わっているだけで、自分のやりたいようにするというスタンスはずっと同じという感覚かな。

横山幸雄

—これから音楽家として一番大切にしていきたいことはなんでしょうか。

演奏についていえば、ショパンとベートーヴェンという、これまで突き詰めてきた作曲家の作品を活動の柱にしていきたいと思っています。弾いたことのない曲に取り組むことは、自分の楽しみとして続けますけれど。
一方、音楽家としてどうありたいかについていえば、クラシック音楽をより多くの人に広げる活動をもっと考えていきたいです。
今は情報が溢れているので、人はどうしてもわかりやすいもの、楽しいものに流れがちです。クラシックは表面的に楽しめるものではないので、その意味で、もしかすると時代に逆行するかもしれない。でも、こういう種類のものは絶対に必要で、もし失われたら、世の中が軽薄なものばかりになってしまうと危惧しています。
レストランをやっているのは、食やワインが好きだということの延長ですかとよく言われるのですが、実際はその面よりも、新しい何かを切り拓く方法として捉えている部分が大きい。
ピアノの腕を磨き続けることは当たり前だけれど、一方で、音楽家が音楽だけやっていることへの違和感、閉塞感を解消したかったんですね。こうした活動により、多くの方にとって演奏家の距離が近くなることで、何かが変化するのではと考えていました。
クラシックというすばらしい音楽を、どうやってより多くの人に体験してもらうか。そして、今日も音楽を聴いて幸せだったとか、気持ちが豊かになったと感じてもらえるようにするか。そのために何ができるかを、常に考えています。

インタビュー:高坂はる香 (音楽ライター)


横山幸雄 ピアノ・リサイタル ~デビュー30周年記念~
入魂のショパン in 大阪 2021
日時:2021年4月17日(土) 13:00開演(12:00開場)
会場:ザ・シンフォニーホール
詳細:https://www.asahi.co.jp/symphony////event/detail.php?id=2467

ショパン ― 孤高の天才の人生と作品を追う ―
横山幸雄 “入魂のショパン” Vol.12
日時:2021年5月5日(水・祝) 11:00開演(10:20開場) 第1部~第6部:各部券販売もあり
会場:東京オペラシティ コンサートホール
詳細:https://www.japanarts.co.jp/concert/p893/

5月5日(水・祝) 横山幸雄 “入魂のショパン” Vol.12
2021年5月5日(水・祝)に東京オペラシティ コンサートホールにて開催を予定していました「横山幸雄入魂のショパンVol.12」は、日本政府からの緊急事態宣言の要請に従い、当初の5月5日(水・祝)の公演を延期し、6月20日(日)に振替公演を行なうことといたしました。
本公演を楽しみにされておられたお客様各位におかれましては、何卒ご了承の程お願い申し上げます。
※公演内容は5月5日(火・祝)と変更ありません。
※5月5日(火・祝)の公演チケットをお持ちのお客様はこの度振替となった6月20日(日)に現在お手持ちのチケットにて、そのままご入場いただけます。
振替公演のお知らせ


⇒ 横山幸雄のアーティストページはこちらから
https://www.japanarts.co.jp/artist/yukioyokoyama/

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