2013/10/18

ニュース

  • Facebookでシェア
  • Twitterでツイート
  • noteで書く

シベリウスの協奏曲へと向かうスペシャル・チケットを手に。

ヒラリー・ハーン&ネルソンスが誘うシベリウスへの旅。

ヒラリー・ハーン&ネルソンス

 ほぼ例外なく自らのCDには寄稿するヒラリー・ハーンだが、シベリウスの協奏曲を収録したディスクには初めてそれを聴いたときの想い出が綴られている。「なぜそうしたのか覚えていない……」と述懐するその場所はどういうわけか野球場であり。当然ながら(と書くとシベリウスに失礼かもしれないが)音楽が彼女を虜にすることはなかった。彼女がその魅力に気がつくのは数年後だが、それを導いたのは10代の旺盛な好奇心だったのかもしれない。知識と見聞を積み上げることで人は「仕組み」を理解し、キラキラと輝く感受性がほんの少しの美も見逃さなくなるからだ。そしてシベリウスの協奏曲はたしかに初めて接する者に対し、そう簡単には扉を開いてくれない作品である。だからこそ、それを心から愛し、理解し、さらに奥深い世界を探求しようとするガイドが私たちには必要なのだ。

ヒラリー・ハーン&ネルソンス
<ハーンのシベリウスとシェーンベルク収録したアルバムは2008年にリリースされ、各誌から絶賛された。>

 少年時代には飽きることなくヴァイオリンを弾き続け、即興的に奏でる音楽で自然と対話をしていたというエピソードも伝えられるジャン・シベリウス。ヴァイオリニストになる夢は断たれたが、この楽器への限りない愛情と自らが習得した演奏テクニックのすべてが、ヴァイオリン協奏曲には込められていると言ってよい。世界は20世紀を迎え、シベリウス自身は充実した30代のラストスパートをかけようとしている時期の意欲作である。それだけに作品(またはスコア)が発する存在感は強力だ。冒険心を忘れないヴァイオリニストであればその世界に魅了され、自分もそこに新しい刻印を残そうと努めるのが当然だろう。

ヒラリー・ハーン&ネルソンス
<ヴァイオリンを生涯愛したシベリウス。その名を冠した国際ヴァイオリン・コンクールも開催され、カガン、ムローヴァ、カヴァコス、バティアシヴィリなどの名演奏家を輩出している。>

 作曲家がその作品を生み出した年齢に演奏家が近づき、人生というドラマを体験したがゆえにインスピレーションを得ることができるのだとしたら、1979年生まれのヒラリー・ハーンはまさに今、シベリウスの協奏曲へと向かうスペシャル・チケットを手にしているはずだ(そしておそらく、聡明な彼女のことだからそれに気がついていることだろう)。その機会は人生において一時期しかないものであり、聴き手である私たちにとってもそれが共有できるのだとしたら貴重な体験になる。今回の来日公演ではアンドリス・ネルソンスという頼もしいパートナーを迎え、充実したシベリウスへの旅へと連れて行ってくれるだろう。
「誰かが歩いた道を追従するのではなく、道のないところを歩いて跡を残すのだ」というエマーソン(アメリカの思想家・作家)の金言は、ヒラリー・ハーンにこそふさわしい。

ヒラリー・ハーン&ネルソンス

オヤマダアツシ(音楽ジャーナリスト)


世界中から熱い視線!光り輝く俊英&イギリスの名門!!
アンドリス・ネルソンス指揮 バーミンガム市交響楽団

2013年11月18日(月) 19時開演 東京オペラシティ コンサートホール
<曲目>
ワーグナー:歌劇「ローエングリン」~第1幕への前奏曲
シベリウス:ヴァイオリン協奏曲 ニ短調 作品47 (ヴァイオリン:ヒラリー・ハーン)
ドヴォルザーク:交響曲第9番 ホ短調 作品95「新世界」

2013年11月19日(火) 19時開演 東京オペラシティ コンサートホール
<曲目>
ベートーヴェン:バレエ音楽「プロメテウスの創造物」序曲
ブラームス:ピアノ協奏曲第1番 ニ短調 作品15 (ピアノ:エレーヌ・グリモー)
ブラームス:交響曲第4番 ホ短調 作品98

公演の詳細はこちらから

ページ上部へ