2012/8/10

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ソフィア国立歌劇場の指揮者サンジョルジのインタビュー

オペラ指揮者として油の乗り切った時期を迎えたマエストロ、アレッサンドロ・サンジョルジ(1960年生まれ)。インタヴュー当日はヴェルディ《アッティラ》の指揮台に立ち、その翌日にプッチーニの《トスカ》を振るという多忙な中、快く取材に応じてくれた。

アレッサンドロ・サンジョルジ

 「ヴェルディとプッチーニの二人が、19世紀後半からのオペラ界における両巨頭であることは疑うべくもないですね。でも、この二人は実に対照的な存在で。若い頃のヴェルディは、ファンの方もよくご存知のように、愛国心に燃える男であり、イタリア統一運動における象徴とも看做されていました。VIVA VERDI!というキャッチ・フレーズが、Viva Vittorio Emanuele Re D’Italia(統一イタリアの国王ヴィットーリオ・エマヌエーレ万歳!)という掛け声との語呂合わせになったからです。
 一方、プッチーニの活躍期には、その種の「時代の潮流」は特に絡んできませんでした。でも、彼は「音楽の潮流」には巻き込まれましたね。ワーグナー以降のライトモティーフ(指示動機)の流行に足を踏み入れたからです。例えば《トスカ》だと、歌姫トスカが登場する直前に鳴り渡るモティーフがことに優美でしょう。彼女の女性らしさを表す、とても印象的な響きですね」
 そこで、作曲家プッチーニの音楽的な「個性」をさらに突き詰めて。
 「プッチーニは、『映画音楽の祖』と呼ばれるほどに情景描写の才能を有していました。私の息子が7歳の時、《修道女アンジェリカ》のピアノ稽古にたまたま居合わせたのですが、その際、終盤の盛り上がりで突然ワーワー泣き出したことがあるのです。何故泣いたのかいと訊ねたら、幼いなりにはっきりと『音楽に泣かされた!』と言いましたよ(笑)。ドラマを理解できない子供にすら、プッチーニの音楽はダイレクトに訴えかけるのです。人間の最も深い本能にすっと入り込むような、特別な力がありますね。《トスカ》は台本もよく纏まっていて、三人の主要人物の関係性だけでほぼ全編が進みますし、プッチーニの音楽が余りにも雄弁なので、例えイタリア語が判らなくとも、シーンの『空気』が鮮烈に伝わってきます。強い嫉妬と強い愛が絡まって。トスカとカヴァラドッシが最後にユニゾンで声を合わせるとき、二人の間柄が最も崇高なものとして輝きます。何度振っても、本当に心動かされるパッセージです」

 インタヴューの締め括りに、日本のオペラファンへのメッセージを。
 「ヴェルディの生家から100kmほど離れた辺りに生まれました。フェラーラとパルマの中間ぐらいに位置する町です。最初はピアニストとして活動していて、オペラは全然好きでもなかったのですが、母から『(オペラの良さが)今に判るわよ!』と凄まれたことがあります(笑)。その後、指揮者に転向した今では『オペラの良さを誰よりも判っているぞ!』と言いたいぐらいです。《トスカ》のシンプルで劇的なドラマは、オペラは初めてと仰る方にもお勧めしやすいです。皆様のご来場を心よりお待ちしています」

取材・文:岸 純信(オペラ研究家)


ソフィア国立歌劇場

 《マスカーニ:カヴァレリア・ルスティカーナ
       プッチーニ:ジャンニ・スキッキ》
 □11月4日(日) 15:00 よこすか芸術劇場
 □11月11日(日) 17:00 千葉県文化会館
 □11月15日(木) 18:30 東京文化会館

 《プッチーニ:トスカ》
 □11月3日(土) 15:00 川口総合文化センター・リリア
 □11月17日(土) 14:00 東京文化会館
 □11月18日(日) 14:00 東京文化会館

→ 公演の詳細はこちらから

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