2021/12/15
ニュース
<0歳児とおでかけ応援プロジェクト Vol.3> ポール・ メイエ&カルテット・アマービレ 2021年11月25日 公演レポート
2020年1月から始まった「0歳児とおでかけ応援プロジェクト」は、2021年11月25日に第3回を迎えました。
東京オペラシティ・コンサートホールの入り口、少し奥まったところには、ベビーカーがずらりと並んでいます。コンサートの舞台は、同ホールのホワイエ。大きな窓からあたたかな太陽の光が差し込み、柔らかな明るさに包まれています。
<ベビーカーでお席まで>
床の上には、ふかふかの大きなマットが1枚ずつ敷かれ、ソーシャルディスタンスもしっかりとキープ!マットの上には、抱き枕とともに、育児に頑張るお母さんのための美容パックのプレゼントもさり気なく置かれていました。授乳室やおむつ替えスペースも別に用意され、人目を気にすることなく授乳やおむつ替えができます。
この企画、ジャパン・アーツのお子さんをもつ社員さんが企画したそうです。
赤ちゃんや幼いお子さんと一緒にコンサートを聴くとき、床の上の方が赤ちゃんやお子さんの世話もしやすいし、疲れたら横にもなれます。育児を経験したお母さんの視点ならでは…ですね!
<ご家族の思い出になるひとときを>
さて、第3回のゲスト、クラリネット奏者のポール・メイエさんとカルテット・アマービレのみなさんが、ホワイエに登場しました。
天使のような愛くるしい小さなお客さまを前に、メイエさんの表情がほころびます。
「かわいい赤ちゃんのお顔を見ることができ…本当にかわいいですね!」
メイエさんも育児経験者。その時の思い出を語ってくれました。
「音楽は、生活の一部です。一日に何時間も練習することがあります。ただ、子どもが寝ている中で練習するのは難しいですし、彼らが起きている時は世話もあるので、そこで練習するのは難しかったですね」
メイエさんは、お子さんも音楽が好きであってほしいと思ったそうです。
「結果的にうまくいきました。今は、クラシック音楽だけではなく、ジャズやポップスなどいろんな音楽を聴いていますよ。
子どもの聴く音楽のジャンルについて、私は特に気にしていませんでした。ちなみに、クラシック音楽では、ストラヴィンスキーやバルトークのような音楽を、子どもたちは気に入っていたみたいです」
さらに、お子さんを音楽の専門家にしたい親御さんへのアドヴァイスもありました。 「ソルフェージュを早い時期から始めることをお勧めします。音符が読めるようになるので、(曲を)習得するのがとても速いからです」
<クラリネットのポール・メイエ>
この日は30分間のコンサート。
1曲目は、モーツァルト《クラリネット五重奏曲》K.581より、明るく朗らかな楽想の第1楽章。そして2曲目は、ブラームス《クラリネット五重奏曲》作品115より、美しい叙情性に満ち溢れた第3楽章。
ちなみにこの2曲は、このコンサートのあとにホール内で開催されるプログラムの1部。
「0歳児とおでかけ応援プロジェクト」は、日ごろ育児にたずさわり、なかなかクラシック音楽のコンサートヘ足を運ぶことができないお母さんやお父さんたちに向けられたもの。赤ちゃんの目の届くところで、本格的なプログラムを聴くことができれば、お母さんお父さんも安心ですね。
石造りの壁や床に反射する豊かな響きがホワイエ全体を包みこみ、身体いっぱいに音楽を浴びているような感覚をおぼえました。
<リラックスした雰囲気のなかでお楽しみ頂けるコンサート>
お母さんやお父さんに抱っこされる赤ちゃん、マットの上に寝転がっている赤ちゃん、元気よく動き回る赤ちゃん、音楽を聴きながらすやすや眠る赤ちゃん、ミルクを飲んでいる赤ちゃん…みんな思い思いに音楽と触れ合っていました。
床の上にずっと座っていると、疲れることもありますが、抱き枕を利用して体勢を自由に変えたり、少し横になったり、授乳の時に使ったりと、お母さんお父さんもゆったりと音楽を楽しんでいました。
このコンサートを通して、激しく泣く赤ちゃんがほとんどいないことにびっくりしました。きっと、赤ちゃんも、お母さんやお父さんがすぐそばにいるという気配を察し、安心して過ごすことができたのでしょうね。
泣いていても、それを咎める人は誰もいません。この日のお客さまは気兼ねなく、みなさんがリラックスして音楽を聴くことができたようでした。
文:道下京子(音楽評論)