2022/3/25

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「ヤンネ舘野 ヴァイオリン・リサイタル2022 ~遙かなる地への旅~」曲目解説が届きました!

ヤンネ舘野&舘野泉のために書かれた“委嘱作・世界初演”の2作品について、作曲家より曲目解説が届きました! ぜひご覧下さい。

ヤンネ舘野 ヴァイオリン・リサイタル2022 ~遙かなる地への旅~

【曲目解説】

◇ソールデュル・マグヌッソン(1973― )

『オルマルの狂詩曲』

103年前に作られた無声映画「農夫」のサウンドトラックを、3年前に書いた。完成後直ぐに、その音楽のいくつかをコンサート用に書き換えるべきだと感じた。映画音楽を書く場合、場面や動きに合わせるため非音楽的な処理をしなければならないことがよくあるからだ。主人公がヴァイオリニストであることを暗示するように、ヴァイオリンとオーケストラのために、いくつかのヴァイオリンのカデンツァとソロを書いた。ヤンネからヴァイオリンとピアノ(左手のための)の曲を依頼された時、私はこのサウンドトラックのことを考えた。この音楽の性質がとても気に入っていたので、映画のサウンドトラックに留まることなく更に、独立した音楽として演奏されるべきだと考えていたため好都合であった。映画の主人公のオルマルは非常に落ち着きのない男である。常に目標を変え、新しいものを見つけてはそれ以前のものをすべて投げ打ってしまう。第一主題は冒頭の数小節にあり、私は彼の性格をいくつかの音符で模倣しようとした。最初に彼はプロのヴァイオリニストを目指すという大望を抱き、次に会社経営に興味を持つ。そして最後に芝土でできた昔からのアイスランドの農場に落ち着く。このラプソディーの音楽は彼の人生の旅路をたどっている。

◆映画のあらすじ
グンナー・グンナルソンの小説「片目の客」に基づく無声映画「農夫」は、アイスランド・ボルグの大農場主の息子オルマルとケティル兄弟の物語である。オルマルが海岸で救った農夫の娘Rúnaと3人一緒に育つ。オルマルはヴァイオリニストになるためコペンハーゲンに渡るが挫折、次にビジネスを始めたが、コペンハーゲンに突然やって来たケティルに恋人アルマを奪われ、失意のうちに故郷に戻る。ケティルもアルマと共に故郷に戻り聖職者となるがRúnaを傷つけ、アルマを精神病に追い詰め、家族に不幸をもたらし、父親の死をも導いてしまい姿を消す。20年後、オルマル、妻になったRúna、Rúnaとケティルの間にできた息子Örlygurの 3人は大農場で幸せに暮らしていた。Örlygurが恋人バッガと共に偶然助けた「片目のさすらい人」は、キリスト教の伝道をしながら国中をさすらい、謙虚な無宿者の暮らしをして許しを求めているケティルであった。3人は和解し、Örlygurとバッガに祝福を与え、若い二人に明るい未来が訪れる。


◇パブロ・エスカンデ(1971― )

『グラフィティ エリア』

アートは美術館やギャラリーに飾られるとは限らない。グラフィティは、全ての人に開かれた街のアートである。しかし残念ながら落書きとみなされ、違法とされている。グラフィティは、古代エジプト、ギリシャ、ローマ帝国時代から存在していた。しばしば批判的、悪魔的性格を持っていた。そのため、違法にならざるを得なかったのであろう。
現代グラフィティアーティストたちは、壁面に絵を描くことで不正やシステムの腐敗に対して声を挙げたり、ユーモアを含ませて人々の目を楽しませるなど、世間の評価の的となっている。
グラフィティと音楽の間には、一時的なアートして共通点がある。グラフィティは通常、壁面に長く残ることはない。音楽も時間と共に消えてゆくものである。音は、私達の脳内で消化され、数秒後には消えてしまう。
レオナルド・ダ・ビンチもこう述べている。「音楽は哀れな運命のごとく、生まれてすぐに消えてしまう」
この作品は、私がグラフィティアーティスト、バンクシーからインスピレーションを得て生まれた。バンクシーは、私達にダイレクトで深いメッセージを与え、常に考えさせてくれる。絵だけの作品もあるが、このようなフレーズだけの作品もある。「アートは、虐げられている人々を快適にし、快適な人々を虐げるものである」
「創造的な大人は生き残った子供である」「私はアートで飾られただけの世界ではなく、アートにより創られた世界に生きたい」
この組曲は、バンクシーの8つの作品をイメージした6つの楽章で構成されている。1、3、5楽章は、同じテーマが基となる変奏で、子供と風船が描かれた3つの絵のイメージである 4楽章は、面白おかしく3つの絵を表現しており、2、6楽章は、フレーズと絵の自由な解釈である。音楽はストレートで、気取ったものではない。クラシック音楽のコンサートでは滅多に見られない他のジャンルのアートをシェアして楽しむことを意図している。

  • 1楽章 Girl with Red Balloon ( “There is always hope”)
  • 2楽章 The “Earth” without “Art” is just “Eh”
  • 3楽章 No Future
  • 4楽章 Couple Dancing / Ⅳa – Mobile Lovers / Ⅳb – Boy meets Girl
  • 5楽章 Flying Balloon Girl
  • 6楽章 Flower Thrower

アートはコミュニケーションである。演奏家を通して聴衆と作曲家を繋ぐコミュニケーションでもあり、そのプロセスでは、聴衆をも含めて全ての人がアーティストとなる。多種のアートがあり、それらを融合させることで無限の可能性が生まれる。そして発見は続くのである。


<公演情報>
ヤンネ舘野 ヴァイオリン・リサイタル2022 ~遙かなる地への旅~
日程:2022年4月2日(土) 14:00開演
会場:東京文化会館小ホール
プログラム:
久保 禎:「5つの風景画」(舘野泉とヤンネ舘野に捧ぐ)♪より
パブロ・エスカンデ:グラフィティ エリア (舘野泉とヤンネ舘野に捧ぐ、委嘱作・世界初演) ♪
ソールデュル・マグヌッソン :オルマルの狂詩曲 (委嘱作・世界初演) ♪
エルネスト・ショーソン:ヴァイオリン、ピアノと弦楽四重奏のためのコンセール ニ長調 作品21
(♪「舘野泉左手の文庫」助成作品)

公演情報 ⇒ https://www.japanarts.co.jp/concert/p949/


⇒ ヤンネ舘野アーティストページはこちらから
https://www.japanarts.co.jp/artist/jannetateno/

⇒ 舘野泉アーティストページはこちらから
https://www.japanarts.co.jp/artist/izumitateno/

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