2022/5/19
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アリス=紗良・オット インタビュー
音楽ジャーナリストの伊熊よし子さんによる充実のインタビューをどうぞご覧ください。
[アリス=紗良・オットの人生の旅路を表現する、音楽と映像とのコラボレーション]
アリス=紗良・オットの演奏は迷いがない。モットーは「常に新鮮な気持ちで作品と対峙し、演奏するたびにその作品の新たな発見をすること」。そんな彼女が演奏と映像作品のコラボレーションを展開する「Echoes Of Life(エコーズ・オブ・ライフ)」と題したコンサートを行う。先ごろリリースされたCDとリンクするプログラムで、ショパンの「24の前奏曲」(全曲)の合間に7つのインタールード(間奏曲)が挟み込まれる。7曲はそれぞれアリスに影響を与えた作品で、生き方を映し出し、精神状態を表現し、人生の旅路ともなっている。その7曲をご本人に説明してもらうと…。
「ショパンの《24の前奏曲》の各曲は短く、個々のキャラクターがとても個性的で、人生の旅路を思わせます。私も病気を経験し、自分の人生と真正面から向き合うようになり、7曲を間奏曲のように挟み込んで人生の旅路を表現したいと考えるようになりました。友人のフランチェスコ・トリスターノ(ルクセンブルクのピアニスト)には、バッハの前奏曲を想像させる曲を依頼しました。《イン・ザ・ビギニング・ワズ》は私がピアノと出会ったころを表しています。ジェルジュ・リゲティ(ハンガリー系オーストリア人の作曲家)の《インファント・レベリオン》は、反抗期の私が何でもノーといって親を困らせていた時代を意味し、それがあるときイエスに変わる。最後に新しい音が出てくるところが鍵です。ニーノ・ロータ(イタリアの作曲家)の音楽は映画で親しんできました。《ワルツ》は悩み多き10代を思い起こさせてくれます。チリ―・ゴンザレス(カナダ出身の音楽家)の《前奏曲》は、私が思春期から大人になり、自分の行動に責任を持たなくてはならないころを映し出しています。《雨だれ》のあとに演奏しますが、曲の流れがとても自然に聴こえると思います。武満徹の《リタニ》は私にとって特別な意味をもっています。彼は《音楽は私のアイデンティティを見出す上で大きな助けとなる》ということばを残していますが、まさに私の気持ちを代弁してくれます。アルヴォ・ベルト(エストニアの作曲家)の《アリーナのために》は、親密的でとても深い内容を備えています。病気が判明したときには自分のもろさに気づき、自信を失うこともありましたが、やがて生きていく自信を取り戻すことができました。この曲は耳を開いて最新の注意を傾けないと真意が理解できません。最後は私がモーツァルトの《レクイエム》をアレンジした曲が登場します。これは自分への問いかけ。と同時に、聴衆の方たちも自分の人生への問いかけをしてほしいのです。
今回は建築家のハカン・デミレルの映像とのコラボレーションで、音楽と映像が共鳴し、感情の揺れを意味し、それぞれの旅へといざないます。当初は私の人生の旅を表現する形だったのですが、各地で演奏するにつれ、聴き手のみなさんたちの旅へと変化してきました。日本のみなさまの感想と反応をとても楽しみにしています」
伊熊よし子
アリス=紗良・オット ピアノ・リサイタル
日時:2022年5月30日(月) 19:00開演
会場:サントリーホール
⇒ 公演の詳細はこちらから
⇒ アリス=紗良・オットのアーティストページはこちらから
https://www.japanarts.co.jp/artist/alicesaraott/