2022/6/18

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来日迫る! フランソワ=グザヴィエ・ロトのインタビュー “聴き手が旅をした気持ちになれるようなプログラムを” 初来日のケルン・ギュルツェニヒ管とともに(文・中村真人/音楽ジャーナリスト)

フランソワ=グザヴィエ・ロト指揮ケルン・ギュルツェニヒ管弦楽団の来日に寄せて

取材・文=中村真人

 この7月、ケルン・ギュルツェニヒ管弦楽団が首席指揮者のフランソワ=グザヴィエ・ロトと共に待望の来日公演を果たす。この名門楽団が単独で来日するのは、意外にも今回が初めてだという。2015年から首席指揮者を務めるロトが、滞在中のパリからオンラインでのインタビューに応じてくれた。

フランソワ=グザヴィエ・ロト

 「1827年に創設されてから約200年の歴史をもつ、ドイツでも重要な楽団です。かつてブラームス、マーラー、R・シュトラウスといった大作曲家が頻繁に客演し、自作を指揮しました。例えば、ブラームスの『ヴァイオリンとチェロのための二重協奏曲』、マーラー『交響曲第3番』と『第5番』、シュトラウスの《ドン・キホーテ》はこの楽団が初演しています。20世紀に入ってからはバルトーク、B・A・ツィンマーマン、シュトックハウゼンらと密接な関わりがあり、同時代音楽への取り組みも積極的。ケルン歌劇場の専属オーケストラとして、コンサートとオペラの両方に比重を置く稀な楽団でもあります」

 今回のツアーの演目に選ばれたのがベートーヴェンとシューマン。まさにライン地方で活躍した作曲家であり、彼らの名刺代わりともいえる。

 「シューマンは、すでに交響曲全曲を録音するほど力を入れている作曲家。我々にとって交響曲第3番《ライン》が特別なのは、第4楽章がケルン大聖堂のオマージュとして描かれているからです。また、私はケルンから近いボンのベートーヴェン・ハウスを何度も訪れ、彼の自筆譜や手紙を研究しました。これらの作品を日本で上演するため、ナチュラルトランペットや小型ティンパニといったピリオド楽器を持って行くつもりです」

ケルン・ギュルツェニヒ管弦楽団

 もう1つのメイン演目がブルックナーの交響曲第4番。かつて首席指揮者を務めたギュンター・ヴァントをはじめ、ギュルツェニヒ管弦楽団はブルックナー演奏に豊富な伝統を持つ。今回、上演稀少な1874年第1稿を取り上げることにロトのこだわりを感じる。

 「初めてこの第1稿を勉強したとき、五連符が多用されていることに気付きました。実際に演奏してみてわかったのですが、一般に知られる第2稿よりもテンポや旋律を通じて音楽の流れの線を紡ぎ出している。実験的でラディカルな響きに満ちたこの版は、私には『より美しい』第2稿よりずっと魅力的なのです」

 これらの演目に、ロトのお国ものであるフランス音楽からサン=サーンスのヴァイオリン協奏曲第3番(独奏:樫本大進)、モーツァルトのピアノ協奏曲第20番(独奏:河村尚子)が華を添える。特に樫本大進は、毎シーズンのようにベルリン・フィルに客演するロトにとって気心の知れた存在だという。「サラサーテのために書かれたこの名作を、現代を代表するヴァイオリニストである樫本さんと共演できるのは嬉しい」と期待を寄せる。

樫本大進

 17世紀からアバンギャルドまで幅広いレパートリーを持つロトに、その好奇心の源泉を聞いてみると、こんな答えが返ってきた。

 「私が音楽に惹かれるのは、それがまさに旅だからです。これとこれだけをやる、というような限定はしたくない。さまざまな時代のレパートリーを指揮することで、聴き手が旅をした気持ちになれるようなプログラムを作ることに興味があります」

 なかなか自由に旅行ができない昨今、ロトがケルン・ギュルツェニヒ管弦楽団と届けてくれる音楽からは、どんな風景が聴き手の前に立ち上がるだろうか。


〈公演情報〉
フランソワ=グザヴィエ・ロト指揮 ケルン・ギュルツェニヒ管弦楽団(樫本大進)
至高の響き——名匠ロト&ギュルツェニヒ管、待望の来日!
フランソワ=グザヴィエ・ロト指揮 ケルン・ギュルツェニヒ管弦楽団
2022年7月2日(土) 19:15~ ミューザ川崎シンフォニーホール
2022年7月4日(月) 19:00~ サントリーホール
2022年7月5日(火) 18:30~ 赤穂市文化会館大ホール
https://www.japanarts.co.jp/concert/p963/

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