2014/1/9

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練木繁夫インタビュー「漆原啓子& 練木繁夫 デュオ・リサイタル」に向けて

練木繁夫

 今回のプログラムの大きな柱のひとつがベートーヴェンだと思います。漆原さんとはソナタの全曲録音、そして1日での全曲演奏会という恐るべき演奏会も敢行されました。改めて今、感じられているベートーヴェンのヴァイオリン・ソナタ第5番「春」、第7番の魅力を教えていただけますか?
 ヴァイオリン・ソナタ第5番「春」作品24は作品23(ヴァイオリン・ソナタ第4番)と同時に書かれ、本来ならば作品23の2として演奏されるべきだった作品です。これは、作品25セレナードを除いた、作品22から作品28にかけてのソナタの連作7曲のうちの1つです。作品25は編曲されてピアノとヴァイオリンでも演奏されます。 作品27の2曲を含む8曲の調を並べると、作品22(ピアノ・ソナタ第11番)B♭/変ロ長調、作品23 a/イ短調、作品24(ヴァイオリン・ソナタ第5番「春」) F/ヘ長調、作品25 D/ニ長調、作品26(ピアノ・ソナタ第12番)A♭/変イ長調、作品27の1(ピアノ・ソナタ第13番) E♭/変ホ長調、作品27の2(ピアノ・ソナタ第14番「月光」) c♯/嬰ハ短調、作品28(ピアノ・ソナタ第15番「田園」)D/ニ長調となり、丁度、真ん中のD調/ニ長調で和声進行が落ち着き、作品28のD調/ニ長調で終結しています。
 ここで演奏されるヘ長調(ヴァイオリン・ソナタ第5番「春」)とハ短調(ヴァイオリン・ソナタ第7番)は、シンフォニーの第6番「田園」と第5番「運命」と比較されても面白いと思います。この2つの調で作曲されたベートーヴェンの世界をお感じ頂ければ嬉しいです。

 これまでさまざまな演奏家と共演をされていると思いますが、漆原啓子さんの演奏家としての特徴と美点を教えていただけますか?
 漆原さんと再び演奏できるのは、僕にとってこの上ない幸せです。彼女の音楽はとても真摯で、僕にはとても勉強と励みになります。リハーサルのときから音楽に対する愛情と情熱が調和されて楽しいリハーサルになります。音楽家として真摯に演奏すればするほど、その人の性格がはっきりと出るものです。鎧兜で弱みを隠し、飾りもので装飾された演奏が多い昨今、漆原さんのように精髄を表す音楽は貴重であり音楽道にかなった美徳だと思っています。品位の高い音楽は、聴いていても弾いていても気持ち良いです。

練木繁夫

 長年のキャリアの中で、練木さんにとって「教える」というファクターがあると思います。練木さんにとって「教える」ということはどういうことですか? また「教える」ことはご自身の演奏にどのような影響を与えていますか?
 教える、イコール、発見です。教える、ということは僕の経験を分けることもありますが、僕にとっては、例え同じ曲を教えていても、常に新しい発見を求めるよう努力をしています。舞台経験も大きく次の演奏へと影響しますが、教えることがないと、音楽が主観だけの世界で作られてしまうような気がします。生徒の演奏を聴いているとき、自分の脳内に起きる感情、思考、情報の交錯はとても興味ある過程です。
演奏と教え、この密接な相互関係は僕の人生で最も大切なものです。


漆原啓子(ヴァイオリン)& 練木繁夫(ピアノ)デュオ・リサイタル

<プログラム>
ベートーヴェン:ヴァイオリン・ソナタ 第5番 へ長調「春」
ベートーヴェン:ヴァイオリン・ソナタ 第7番 ハ短調
フランク:ヴァイオリン・ソナタ イ長調
サン=サーンス:序奏とロンド・カプリチオーソ イ短調
サラサーテ:ツィゴイネルワイゼン

公演の詳細はこちらから

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