2023/5/6

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【公演レポート】ウィーン少年合唱団2023 Aプログラム”プレミア” 初日!

2023年5月3日(水・祝)、4年ぶりとなるウィーン少年合唱団の日本ツアーがスタートしました! 初日はプログラムAの“プレミア”。日本初披露となる曲が数多く入ったプログラムです。ゴールデンウィークのサントリーホールには、お孫さんを連れたシニアや若い女性など幅広い層のファンが集まっていました。

ウィーン少年合唱団

あたたかい拍手に迎えられ、舞台に登場したハイドン組の24人のメンバーたち。モーツァルトのカンタータ《汝、宇宙の魂に》の輝かしいハーモニーでコンサートの幕開けです。カペルマイスターのジミー・チャン先生が日本語で挨拶をしたのち、同じくモーツァルトの《アイネ・クライネ・ナハトムジーク》のアカペラ・ヴァージョンが初披露されました。ときにボイスパーカッションのようにリズムを刻む中低音の上で、美しいボーイソプラノが立ちのぼってきたとき、「ああ、天使の歌声!」と実感した方も多いことでしょう。

続いて、祝祭感あふれるクープランの《歓喜せよ》。はじめての海外ツアー、初日の大舞台ということで最初は緊張気味だったメンバーたちですが、のびのびとした声が出てきました。ハイドンの《アニマ・ノストラ》では、ローレンツ君、ゲオルギ君、アルタイア君の3人がソリストを務めます。ソロだけでなく、ふたりずつ掛け合いながら歌ったときの妙なる響きが印象的でした。

ウィーン少年合唱団

シューベルトの《反抗》は少年らしい元気さと穏やかさを併せ持った合唱曲で、ウィーン少年合唱団にぴったり。ロッシーニの3つの聖歌より《愛》も、流れるような美しいメロディが心に残る曲です。エレン君とアルタイア君が透き通るようなソロを聴かせてくれました。

ウィーン少年合唱団

ビーブルの《アヴェ・マリア》は1964年に作曲された比較的新しい合唱曲ですが、古くから歌われてきたグレゴリオ聖歌のような厳かな雰囲気と、聖母マリアの優しさを感じる曲です。今から525年前に王宮礼拝堂の聖歌隊として創設され、現在も王宮礼拝堂のミサで歌っているウィーン少年合唱団の聖なる歌声がサントリーホールを満たすと、まるで大聖堂にいるような気持ちになりました。

今回の日本ツアーでは「本日のソロ曲」というコーナーがあり、メンバーが日替わりでソロを披露します。誰がどんな曲を歌うのかは当日のお楽しみ。この日は、ゲオルギ君がチェザーレ・アンドレア・ビクシオの《マンマ》を歌いました。ゲオルギ君はもともとオデーサの合唱団で歌っていましたが、ウクライナ侵攻のためオーストリアに避難し、ウィーン少年合唱団に出会ったそうです。人を惹きつける声と卓越した歌唱で、ひとりの「歌い手」として聴衆を魅了していました。

ウィーン少年合唱団

ウィーン少年合唱団

そしてオーストリア民謡《森のハンス》と、ヨハン・シュトラウスⅡ世のワルツ《ウィーンの森の物語》というウィーンらしい2曲で前半のプログラムが終了しました。

現在、ウィーン少年合唱団には世界から30か国にもおよぶメンバーが在籍しているそうですが、後半のプログラムにはより多彩な曲たちが並びます。太鼓の音に合わせて、メンバーたちが舞台に入場しながら歌っていたのは、ニュージーランドの労働歌(シー・シャンティ)の《ウェラーマン》。次々とメンバーが前に出てきてソロを披露しました。

ウィーン少年合唱団

その歌が生まれた国の言語で歌うのも、ウィーン少年合唱団の特徴です。スペイン語で歌われたイラディエルの《ラ・パロマ》は、ハバネラのスタイルで書かれたエキゾティックな曲。続くオードウェイの《家と母を夢見て》は、もともとアメリカの南北戦争時代の愛唱歌でしたが、日本では《旅愁》、中国では《送別》というタイトルで歌われていたとのこと。ここでは英語で《家と母を夢見て》、日本語で《旅愁》、中国語で《送別》が通して歌われました。

ローレンツ君のソロではじまった滝廉太郎の《荒城の月》は、もちろん日本語で。けれどウィーン少年合唱団のハーモニーで聴くと、まるで「西洋から見た日本」のように感じられるのが面白いところです。アカペラで歌われた岡野貞一の《ふるさと》は、東日本大震災の被災地への支援を行なってきた合唱団にとっておなじみの曲。明瞭な日本語の発音や、美しく揃ったアンサンブルから、いかにメンバーたちがこの曲に特別な想いを抱いているかが伝わってきます。チャン先生はハイドン組の特徴について「エネルギーに満ちている」と語っていましたが、その言葉通り、力強く、生きる勇気を与えてくれるような歌唱でした。

シークレット・ガーデンの《ユー・レイズ・ミー・アップ》、インドの献身歌(バジャン)の《ラーマ卿よ、ラグーの子孫よ》でもメンバー数名ずつがソロで登場。今年のハイドン組はひとりひとりがソリストと言ってもいいほど個性豊かなメンバーが揃っているようです。合唱というと一糸乱れぬアンサンブルの統率が重視されがちですが、ウィーン少年合唱団はメンバーの個性を伸ばすことを大切にしているのです。

ウィーン少年合唱団

コンサートもあっという間に終わりの時間。最後はヨーゼフ・シュトラウスのポルカ・フランセーズ《上機嫌》とポルカ・シュネル《永遠に》、そしてウィーンといえばこの曲、ヨハン・シュトラウスⅡ世のワルツ《美しく青きドナウ》というウィーンづくしで締めとなりました。

鳴り止まぬ拍手に応えてのアンコールは、映画『天使にラブソングを』より《ヘイル・ホーリー・クイーン》と、ヨハン・シュトラウス1世の《ラデツキー行進曲》。手拍子で会場が一体となって初日の幕が下りたのでした。

ウィーン少年合唱団

ウィーン少年合唱団

文:原典子(音楽ライター/編集者)
写真:居坂浩文


ウィーン少年合唱団 2023来日公演

《公演情報》
“天使の歌声”4年ぶり待望の来日公演!
ウィーン少年合唱団 (カペルマイスター:ジミー・チャン)
日時・会場:
2023年
5月20日(土) 14:00 東京オペラシティ コンサートホール
6月15日(木) 19:00 東京オペラシティ コンサートホール
6月16日(金) 13:30 東京オペラシティ コンサートホール
6月17日(土) 14:00 東京オペラシティ コンサートホール
6月18日(日) 14:00 東京オペラシティ コンサートホール
他 全国公演スケジュールは特設サイトをぜひご覧ください!
https://www.japanarts.co.jp/special/wsk/

<終了公演>
5月3日(水・祝) 14:00 サントリーホール
5月4日(木・祝) 14:00 サントリーホール


◆ウィーン少年合唱団のアーティストページはこちらから
https://www.japanarts.co.jp/artist/wsk/

 

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