2023/6/5
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【来日直前インタビュー】ラハフ・シャニ – 欧州でいま最も注目を集める若きマエストロ
オランダを代表する強豪ロッテルダム・フィルが、欧州の若きマエストロ、ラハフ・シャニに率いられて来日
音楽評論家 山田真一
欧州で今、最も注目を集める若きマエストロ、シャニ
オランダ南部の国際貿易都市ロッテルダムを本拠地とするロッテルダム・フィルハーモニー管弦楽団は、北部のロイヤル・コンセルトヘボウ管弦楽団とともに、クラシック音楽国オランダを代表する世界でも指折りのオーケストラだ。
日本でも親しまれた名匠ジャン・フルネやバイロイト音楽祭にも出演したエド・デ・ワールトが、古典から大規模作品まで何でも演奏できる一流のオーケストラに育て、世界でオペラとオーケストラで活躍するヴァレリー・ゲルギエフ、ヤニック・ネゼ=セガンへとバトンが引き継がれてきた。
その実力はネゼ=セガンによる来日で十分知られている通り。この強豪オーケストラに、二十代でありながら2018年に首席指揮者に就任したのが、ラハフ・シャニだ。
シャニは1989年テルアビブ生まれで、まだ三十代前半の若きマエストロだ。ソリストと違って経験がものをいう指揮者の場合、三十前後でマエストロと呼ぶことは珍しい。だが、シャニはすでにベルリン・フィル、ウィーン・フィル、ロンドン響、ボストン響など世界の名だたるトップ・オーケストラを指揮しており、ロッテルダム・フィル以外にイスラエル・フィル音楽監督、ウィーン交響楽団首席客演指揮者を務め、26年からミュンヘン・フィル首席指揮者就任が決まっている。イスラエル・フィルは半世紀にわたり現役最高峰指揮者のメータ。ミュンヘン・フィルはカラヤンのライバルで、ベルリン・フィル首席指揮者でもあったチェリビダッケが育てたオーケストラ。その二つのシェフというだけで、年齢に関係なく、その音楽的才能と指揮の手腕の凄さが理解できる。
世界指折りの名指揮者たちからの薫陶
八面六臂のごとく活躍をする多忙なマエストロに、今回、来日直前インタビューをする機会に恵まれたので、ご紹介しよう。
―メータといえば、現役では最長老、最高峰の指揮者ですが、その後を継ぐとは驚きです。
「イスラエル生まれなので、イスラエル・フィルは常に身近な存在でした。子どもの時からコンサートはもちろん、オーケストラ団員や指揮者と親しくする機会を持てましたし、音楽や楽器について教わったり、リハーサルを見て音楽づくりについて知ることができました。ですから、音楽監督のメータには長年にわたり大きな影響を受けました」
―シャニさんには、もう一人親密な著名音楽家がいると聞いています。
「ダニエル・バレンボイム…彼の場合は、メンターといって良いほど、音楽そのものについて多くのこと学んでいます。指揮そのものの指導もですが、共演も何度もあります。ベルリン・フィルでは彼の指揮のもと、私はピアニストとしてブラームスの協奏曲第一番を演奏しました」
―それは、確かに凄い経験ですね。プロとしてはピアニストとしてのデビューが先ということですね。
「幼少の頃からピアノばかり弾いていました。しかし、十代になってオーケストラにも興味を持ち始め、ピアノにはない素晴らしさ、オーケストラでないとできない音楽表現があることに気づきました。それからは一生懸命、指揮の勉強も始めました」
―ピアノの名手は譜読みが速く、すぐれた指揮者になれると聞いたことがあります。
「譜読みではピアノは必要ありません。スコアを見れば、音は頭に浮かびますから」
強豪ロッテルダム・フィルに二十代で就任
―2018年にネゼ=セガンを継いで、二十代でロッテルダム・フィル史上最年少の首席指揮者となったことに驚きを隠せません。
「ネゼ=セガンもほぼ同じ年齢の就任でしたから、それじたい特別ということはありません。確かにポストを打診されたことに驚きましたが、初共演は驚くほどうまく行きました。マーラー指揮者コンクールに優勝してから数年たち、指揮経験も深くなってきた頃だったので、嬉しかったのは事実です」
―ロッテルダム・フィルとはすでに五年の実績があるわけですが、パワーがあり、分厚い音を出すオーケストラをコントロールするのは、なかなか大変ではないですか。
「ロッテルダム・フィルはとてもパワフルなオーケストラです。しかし、指揮は力でするものではなく、オーケストラの楽員たちのコミュニケーションで成り立っています。作りたい音楽をきちんと示して、それをオーケストラと一緒に作ることができれば、自然と良い演奏になります」
真っ向勝負のプログラム
―来日プログラムについて教えてください。「日本では、ブラームスの交響曲第1番とチャイコフスキーの交響曲第6番《悲愴》というロマン派のコア・レパートリーをご披露します。ロマン派は私の得意とするところです。ブラームスの交響曲は全曲指揮していますし、チャイコフスキーも主要な交響曲、協奏曲なども同様です。ロッテルダム・フィルも十八番とするレパートリーなので、素晴らしい演奏になると思います」
―協奏曲では、日本人二人の名手との共演ですね。
「藤田真央さんにはヨーロッパで会ったことがあります。若いがとても優れたピアニストですね。共演は初めてですが、とてもエキサイトな共演になると思います。ラフマニノフのピアノ協奏曲第3番は、20世紀の作品ですが、ロマン派的な魅力ある作品です」
「諏訪内晶子さんは、とても優れたヴァイオリニストと聞き及んでいます。チャイコフスキー・コンクールで優勝され、本場で高い評価を得たヴァイオリン協奏曲での協演ですが、お互いプロフェッショナルなので、臆することなく良い共演ができれば嬉しいです」
―最後に日本の聴衆へ一言お願いします。
「日本には読売日本交響楽団とパシフィック・ミュージック・フェスティバル(PMF)で訪問したことがあり、とても素晴らしい国で、すばらしい聴衆がいることを知っています。今回も、良い音楽をお聞かせできること楽しみにしています」
欧州楽壇を席巻する“時代の寵児”シャニがロッテルダム・フィルと共に待望の来日!
豪華ソリストたちと魅せる多彩な響きの世界
ラハフ・シャニ指揮 ロッテルダム・フィルハーモニー管弦楽団
日時:2023年6月23日(金) 19:00 / 2023年6月26日(月) 19:00 / 2023年6月27日(火) 19:00
会場:サントリーホール
出演:ロッテルダム・フィルハーモニー管弦楽団、ラハフ・シャニ (ロッテルダム・フィルハーモニー管弦楽団首席指揮者)、諏訪内晶子 (ヴァイオリン)【6/23出演】、藤田真央 (ピアノ)【6/26, 6/27出演】
https://www.japanarts.co.jp/concert/p2018/
◆ラハフ・シャニのアーティストページはこちらから
⇒ https://www.japanarts.co.jp/artist/lahavshani/