2023/6/15
ニュース
鈴木優人プロデュース/BCJオペラシリーズ Vol.3 ヘンデル:歌劇「ジュリオ・チェーザレ」の記者会見が行われました。
6月14日(水)鈴木優人プロデュース/BCJオペラシリーズ Vol.3 ヘンデル:歌劇「ジュリオ・チェーザレ」(セミ・ステージ形式)の記者会見がありました。会見はZoomと対面のハイブリッド方式で行なわれました。
登壇者は下記の皆様です。
プロデューサー・指揮・チェンバロ:鈴木優人
クレオパトラ役:森麻季
演出:佐藤美晴 (ウィーンからオンラインで参加)
チェーザレ役:ティム・ミード (動画メッセージ)
ヘンデル:歌劇「ジュリオ・チェーザレ」は、鈴木優人プロデュース/BCJオペラシリーズ Vol.3 として東京と神奈川県立音楽堂では3回目を迎えます。また、今回は兵庫県立芸術文化センター主催によるバロック・オペラ・エボリューション2023として関西における公演が初めて実施されます。
はじめに、登壇者よりそれぞれご挨拶がありました。
鈴木優人
前回の「リナルド」はコロナ感染拡大が始まってまもなくの2020年秋でした。制約がある中でもオペラが可能であるということを証明しようと、出演者、スタッフが一丸となって取り組みました。今回3年ぶりにヘンデルのオペラを、東京、神奈川、さらに今回から兵庫も加わって3会場で開催できることを本当に嬉しく思っています。3つの異なる会場で、それぞれの会場のサイズにあわせて、演出の佐藤美晴さんと「セミステージ」の舞台を作ります。笑いとエネルギー、歴史の深さもお届けしたいと思います。
続いて、今回のオペラの演出を担っている佐藤美晴がウィーンよりオンラインにて皆様にご挨拶しました。
佐藤美晴
BCJのみなさん、ソリストのみなさんと、また、こうしてご一緒できることが本当に嬉しく、胸高まっております。「ジュリオ・チェーザレ」は、冒頭にポンペイウスの頭が届けられる場面もあり、舞台にはずっと血の匂いが漂っています。チェーザレもクレオパトラも死が迫りくるなかで今を生きている。血の匂いが漂うなかで生きていく、人間のエネルギーを描きたいと思っています。
続いて、BCJオペラシリーズ Vol.1モンテヴェルディ<ポッペアの戴冠>ではタイトルロールを務め、Vol.2ヘンデル<リナルド>ではアルミレーナ役、そして今回もヒロインのクレオパトラ役でさらに期待が高まる森麻季よりご挨拶。
森麻季
今回はクレオパトラを歌います。初めてティム・ミードさんとご一緒したのは、BCJさんとの「リナルド」でした。ティムさんは、素晴らしい才能で、キャリアも長く、世界の主要歌劇場で主役を務められる最高のカウンターテナーでいらっしゃいます。圧倒的な美声で、「リナルド」の舞台では、隣りにいて、自分の歌を忘れてしまいそうなほど感動しました。そんなティムさんとまたご一緒できるのは本当に幸せ。私にとって、初めて全幕で歌うクレオパトラです。BCJ、ソリストのみなさんとどのような世界を創れるか、心から楽しみにしています。
そしてタイトルロール チェーザレ役を務めるティム・ミードより、メッセージ映像が紹介されました。
ティム・ミード
「ジュリオ・チェーザレ」はヘンデルの最も有名で最も愛されているオペラのひとつですが、その理由は、それぞれの役に素晴らしいアリアが与えられていて、ドラマティックな作品となっているからだと思っています。チェーザレは気高い政治家から勇敢な戦士、さらには優しい恋人へと姿を変え、ヘンデルの音楽はこうした彼の歩みを鮮やかに描写しています。チェーザレは、私の声によくあった声域で、自由かつ創造的に歌うことができます。熱心に聴いてくださる日本のみなさんの前で歌うのを大変楽しみにしています。
リナルドのアルガンテ役に出演し、今回のオペラではアキッラ役を務める大西宇宙は、直前まで会見への出席を調整していましが、兵庫県立芸術文化センターで行われる佐渡裕芸術監督プロデュースオペラ「ドン・ジョヴァンニ」のタイトルロールの稽古中のため欠席、代わりにメッセージが届きました。
大西宇宙
「リナルド」に続きBCJオペラ・シリーズは2回目となります。「リナルド」はBCJデビューであり、その後の私のキャリアにとっても重要な舞台となりました。優人さんとは何度も共演させていただいております。今回は陰謀を秘めた敵役、アキッラの多面性を表現していきたいと思います。
さらに、鈴木優人からは、「セミステージではあるが、オペラである以上、演出されるべきものであると思っている。常に創意工夫に満ちている佐藤美晴さんに演出をお願いできたのは幸運。今まさに、さまざまなディテールをつめているところ。サイズが違う東京、神奈川、兵庫の3つの会場のそれぞれの特徴を生かした舞台を作ることができると思います。」とありました。
森麻季さんについては、「いつも入念な準備の上で、麻季さんご本人のキャラクターを失うことなく、素晴らしく演じてくださる。「リナルド」のBCJ公演で、ティムさんと共演した麻季さんが、ティムさんのことを「声楽家として憧れる歌声」と言っていたことが印象的でしたので、今回、この二人を主役にして、うまくいくことに確信がありました。」
またその他のソリストについて「ヨーロッパでひっぱりだこのアレックス (アレクサンダー・チャンス)、死ぬまでに全てのヘンデルをやろう!と約束している藤木大地は舞台でキーパーソンを演じていて、彼の演技もとても楽しみ。演技力といえば、加藤宏隆さんで、彼はとてもおもしろい。舞台を笑いにも包んでくれると思います。ノルウェーを代表するアルトのマリアンネは新国立劇場の「ジュリオ・チェーザレ」ではタイトルロールでした。彼女は、歌う前のルーティーンがないそうで、健康的な声とマインドの持ち主ですが、本当に繊細な声です。セスト役の松井亜希もご存知の通り、BCJの素晴らしいソリストです。今回主役級のソリストがそろっているということもすごいことです。オーケストラも素晴らしくて、特筆すべきはホルンです。勝どきをあげる首席ホルン奏者の福川伸暢なども参加する豪華なメンバーです。」
会場ではこの後、質疑応答へ。
バロック・オペラの奏法について、鈴木優人から「バロックの特徴であるダ・カーポはただの繰り返しではなく、もう一度聴きたいと思ってもらえる仕掛けをしているもの。どのような歌い方にするか、音楽の流れを深く刻む役割があります。ダ・カーポをカットしたほうがよいのでは、という声もありますが、カットしてしまえば、バロック・オペラの魅力は半減してしまうと思っているので、さらにストーリーに巻き込む要素として大切にしたい 」とのコメント。
バロック・オペラではノン・ヴィブラートなどの奏法があると思うが、歌うときに留意していることは?という質問に対して、森麻季から「ヴィブラートのあつかいについてだと思う。自然に歌うとヴィブラートがかかるので、コントロールして、ヴィブラートを使いながらも、かけないところで表現を極めたり、強めたりをしている。ダ・カーポで戻ってきたときには、より思いを込めるなど、個性がでるところなので、私も試行錯誤しながらやっているところ」とありました。
最後に、鈴木優人から「記者会見の場をもたせてもらえたことに感謝。東京オペラシティはBCJの定期演奏会会場で、慣れたホールが別世界になることの楽しみがあります。神奈川県立音楽堂は、昨年亡くなられた一柳慧さんが芸術総監督を務めていて、一柳先生はバロックがご専門ではないのに、多くのことを教えていただいた。今回は先生に捧げるつもりで演奏したいと思う。そしてPAC (兵庫県立芸術文化センター) では、魅せることへのこだわり、熱い現場に度々感動してきました。今回PACでバロック・オペラの舞台上演は初めてときいている。盛り上げていきたいと思いますので、ご声援よろしくお願いします。」とのコメントで締め括られました。
最後はフォトセッションです。
古代ローマの愛と権力がからみあうバロック・オペラの最高傑作ヘンデル「ジュリオ・チェーザレ」、今回もどうぞご期待ご期待ください!
<ジュリオ・チェーザレ>の公演情報
10月7日(土)15:00開演 兵庫県立芸術文化センター KOBELCO 大ホール
10月11日(水)16:00開演 東京オペラシティ コンサートホール
10月14日(土)15:00開演 神奈川県立音楽堂