2023/7/27

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10月来日!パーヴォ・ヤルヴィ指揮チューリッヒ・トーンハレ管弦楽団と共演! ブルース・リウ(ピアノ) インタビュー Vol.2

10月来日!
パーヴォ・ヤルヴィ指揮チューリッヒ・トーンハレ管弦楽団と共演!
ブルース・リウ(ピアノ) インタビュー Vol.2

新しいことにはいつでもわくわくするし、夢中になります。

〜ブルース・リウ

ブルース・リウ

—チューリッヒ・トーンハレ管弦楽団との共演で楽しみにしていることはありますか?

 すばらしいオーケストラです。ピアニストと同じでその時で変化するものだと思うので、今から何か言うのは難しいですけれど、リハーサル時間が短い中でどんなケミストリーを感じるか、“スピード・デート”を楽しみにしています。

—今回はショパンのピアノ協奏曲第1番と、ラフマニノフのピアノ協奏曲第2番という二つのレパートリーでツアーをされます。

 何度も演奏しているレパートリーに再び取り組むことができる喜びと、別のレパートリーに触れられる喜び、それぞれの良さがありますね。ショパンについてはコンクール以降、おそらく40回ほど弾く機会がありましたが、2022年秋からしばらく離れているので、今度の公演は久しぶりになります。
 一方ラフマニノフのほうは10年ぶりに弾くことになるので、楽しみなんです。

—10年ぶりということは、前回がずいぶん若い頃なのですね?

 そう、15歳の時に一回演奏しているんです。僕にとって、初めてオーケストラと弾いたメジャーな協奏曲の一つでした。

—ブルースさんは、ピアノと同時に水泳も本格的にやっていて、14歳の頃にどちらか選ぶことになってピアノを選んだとおっしゃっていました。つまりそれは、水泳でなくピアノを選ぼうと決めた直後の時期ということですか?

 はい、ちょうどその頃ですね。15歳で、モントリオール交響楽団やクリーブランド管弦楽団という、子供の頃から夢見ていたオーケストラとこの協奏曲を演奏できました。すばらしい音楽家たちのオーケストラ・サウンドを聴いた瞬間は、ああ、これまでCDで聴いてきたあの音だと思いましたね。
 とはいえもちろん、勉強して弾くだけでも決して簡単でない協奏曲で、しかも経験のない状態で迎えたステージでしたから、多くのことを学ぶことになりました。
 この曲を信じられないほど難しく感じさせるのは、作品が有名で誰もが知っているという現状だと思います。さらに、ラフマニノフの3番やチャイコフスキーの1番のように難しそうに聴こえないわりに、テクニック的に手の感じが心地よくない作品という印象もあります。この10年で僕の手とメンタルがどんなふうに発展したか、これでわかるかもしれません。

—ラフマニノフの2番は、ピアノソロで始まる数少ない協奏曲の一つで、そこの部分が特に有名だと思います。あのソロパートを弾くときはどんなことをイメージしているのですか?

 手をしっかりストレッチすることをイメージしていますね(笑)。とても広い音域をおさえなくてはいけませんから、いつも、ラフマニノフの手ってなんて大きかったんだろう、この和音を分散させないでどうやって弾くっていうんだ、ということを考えています。いずれにしてもすぐにピアノのパートが始まるのは、手が冷えてしまうこともないから良いですね。

—ショパンの協奏曲と違って。

 そう! あれは何分も待っている間に手がすごく冷えてしまうから。

—以前、水泳選手はある年齢になると引退するけれど、ピアニストは年を重ねることがプラスにしかならないラッキーな仕事だと話していました。ただピアニストもフィジカルの面で求められるものが多く、若さや身体能力が関係する部分もあると思います。ブルースさんは、そちらの不安は何も感じていないということになりますか?

 そういうフィジカルの心配をするのは40年後でいいかなと思うので、今はただ楽しんでいます(笑)。それに、自分のことを支えてくれる聴き手の方たちは、きっと30年後もコンサートに来て、その時々の音楽を楽しんでくれると思いますから。今はエネルギッシュで情熱的かもしれませんが、30年経ったら哲学的で深い演奏になっているかもしれない。そいういう成長を見届け理解してもらえることが、ピアニストの活動の良さです。

—お話を聞いていると、ブルースさんはとてもポジティヴな思考の持ち主なんだなと思うことがよくあります。

 そうですね、ポジティブですよ。

—でも同時に、ご自身のコンサートの印象をきいたら、それについてはネガティヴなことしかいえないとおっしゃっていたことを興味深く思いました。その反省思考とポジティブ思考は、どんなふうに共存しているのですか?

 演奏のあといつもハッピーとは限らないというのは、どんなピアニスト、アーティストにもあることだと思います。そういう完璧主義的な感覚もないと、自分に求め、高みを目指す気持ちがなくなってしまうのではないでしょうか。
 ただ僕の場合、その完璧主義的な感覚が、ポジティブさを邪魔することはないんです。なぜなら、そのことを長く考えないから。コンサートは終わった、満足はしていない、でもおいしいご飯でも食べに行こう、と思うことができる。もちろんそのことは心のどこかに残っているから、ピアノのもとに戻ると全て思い出して、問題を改善するための練習をします。その頃にはうまくできなかったというネガティブな感情ではなく、あのときはこうだったという詳細を思い出し、それを改善するための練習に入り込んでいくことになります。
 僕は、ネガティブなことは不平を言っているときに起きるものだと思っています。不平をいわず、自分がしていることの詳細に集中してものを考えていれば、ネガティブなことは起きません。

—そのあたりの思考をコントロールする方法がわかっているのですね?

 そうかもしれない。でも意図的にコントロールしているというより、これは僕の性質だろうと思います。とにかくすぐ忘れてしまうほうなので。もちろんいろんな経験することは必要だけれど、人生は短いから、不幸な出来事について考えることに時間を割くほど、暇ではないですよね。
 プーシキンが、“すべてのことは時とともに良い思い出になる”と言っています。普通の人にとって10年、20年かかるそのことが、数日や数時間ですむなら、そのほうがいいに決まっています(笑)。

インタビュアー:高坂はる香(音楽ライター)

■ブルース・リウ インタビュー Vol.1はこちら
https://www.japanarts.co.jp/news/p8008/



パーヴォ・ヤルヴィ指揮チューリッヒ・トーンハレ管弦楽団

https://www.japanarts.co.jp/concert/p2033/
スイスの名門オーケストラと今最も注目されているピアニスト のブルース・リウによる壮麗なる響き。音楽監督パーヴォ・ヤルヴィが魅せる新境地にご期待ください。

[公演日程]
10月15日(日) 北九州ソレイユホール
10月16日(月) サントリーホール(完売)
10月18日(水) サントリーホール(完売)
10月19日(木) 所沢市民文化センター ミューズ
10月20日(金) 富士市文化会館 ロゼシアター
10月21日(土) ザ・シンフォニーホール

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