2023/8/14

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森麻季 インタビュー【後編】~美しい声でやさしく歌われる新境地~

ワシントン・ナショナル・オペラにデビューしてから今年25周年を迎え、9月にリサイタルを予定するソプラノの森麻季。
演奏会に向けて、オペラ評論家の香原斗志さんがインタビューを行いました。インタビュー後編をお届けいたします。
【前編】はこちら

森麻季

 自分を冷静に見つめて課題を設定する力があるから、森麻季はもてる力を伸ばし、それを磨き続けることができている。さらには、自身が携わる芸術の意味と意義について、アメリカの9.11および日本の3.11を機に思いを深めている。そんな彼女の姿勢は、「愛と平和への祈りをこめて」と題するリサイタルに象徴されている。

 毎年聴いている人から、初めての人や、歌を勉強している学生まで、だれもが歌の力を実感できるように選曲に工夫が凝らされ、それらの曲には、過去から今日までの森が詰まっている。

「恒例の〈アヴェ・マリア〉に加え、普段はあまり聴けない曲ですが美しいレーガーの〈マリアの子守歌〉も歌います。ブラームスの《ドイツ・レクイエム》も、コンサートではあまり歌われませんが、美しく、詩の内容もステキで、このあたりの曲は『愛と平和への祈りをこめて』の趣旨に沿っています」

森麻季

 一方、後半は、ドニゼッティ《シャモニーのリンダ》や《ランメルモールのルチア》、ヴェルディ《椿姫》の、聴き応えがあるアリアが並ぶ。

「昔は声が軽く、動かすのも得意だったので、これらの曲をラクに歌えた半面、中音域は出ないし、技術的にも不足がありました。いま時間が経過して声が変わってきて、以前より頑張らないと歌えないところもありますが、全体としては、いまやっと普通に歌える声と技術が備わったと思う。それを聴いていただければと思います」

 ミレッラ・フレーニやバーバラ・ボニーのように、美しい声でやわらかく歌うことを目指してきた森の、ひとつの到達点を確認できるだろう。
 そして森はいま、さらに先に進もうとし、そういう予定が目白押しである。
 7月には山田和樹&バーミンガム市交響楽団とBBC Promsにデビューして《カルミナ・ブラーナ》を歌った。そして10月には、鈴木優人の指揮でヘンデル《ジュリオ・チェーザレ》のクレオパトラに挑戦。来年にはふたたび山田和樹の指揮の下、バーミンガムで《蝶々夫人》のタイトルロールにデビューする。
 しかし、クレオパトラと蝶々さんは、求められる声がかなり異なるのではないか。

「そう思うでしょ? でも、実は《蝶々夫人》は、思っていたよりずっと繊細に歌う部分が多く、クレオパトラは意外とドラマティックな部分が多い。音楽もドラマも全然違いますが、求められる声に大きな差があるわけではないようです」

森麻季

 おそらく、クレオパトラも蝶々さんも、美しい声でやさしく歌われるだろう。芸術が平和を呼ぶための魂をこめて。

(前編はこちらから)

取材・文:香原斗志(オペラ評論家)


森麻季 ソプラノ・リサイタル
《公演情報》

ワシントン・ナショナル・オペラデビュー25周年
~感謝をこめて~
愛と平和への祈りをこめて Vol.13
森麻季 ソプラノ・リサイタル
https://www.japanarts.co.jp/concert/p2031/
日程:2023年9月10日(日) 14:00
会場:東京オペラシティ コンサートホール


◆森麻季のアーティストページはこちらから
https://www.japanarts.co.jp/artist/makimori/

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