2024/1/6

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~第2回ショパン国際ピリオド楽器コンクール優勝者コンサートに向けて~ プレイエルの魅力に迫る。技術者 高木裕 ×ピアニスト 川口成彦 インタビュー【前編】

執筆:音楽ライター高坂はる香
撮影:松尾淳一郎

 ショパンが生きた時代の音楽を探求するため、国立ショパン研究所によって2023年10月に第2回目が開催されたショパン国際ピリオド楽器コンクール。
 1月30日(火)東京オペラシティコンサートホールで開催の優勝者記念コンサートでは、優勝者のエリック・グオが、1843年製プレイエルを用いて鈴木優人指揮バッハ・コレギウム・ジャパンとショパンのピアノ協奏曲第1番、第2番を演奏します。
 コンサートに先駆け、1843年製プレイエルを所蔵・調律するタカギクラヴィアの高木裕社長と、第1回ショパン国際ピリオド楽器コンクールで2位に輝き、フォルテピアノ奏者として国内外で広く活躍する川口成彦さんに「ピリオドピアノ」の奥深い世界を語っていただきました。

古楽器にのめり込んだら、すごい奏者になるかもしれない!

—ショパン国際ピリオド楽器コンクールをご覧になって、どんなことを感じましたか?

川口 今回のコンクールの結果は、第1回とはまた違った傾向で興味深かったです。なかでも優勝したエリック・グオさんは、コンクールをきっかけにようやく古楽器に触れたというモダンピアノ奏者です。僕は特に、彼の1次の1835年製グラーフによる演奏に感動しました。繊細なウィーン式アクションの楽器をあれだけしっかり操れるということは、これから古楽器にのめり込んで勉強したらものすごい奏者になるかもしれません。その期待もあって、審査員の先生方も評価されたのだろうと思います。まだ21歳なので、これからどうなっていくのか楽しみです。

高木 ピリオド楽器コンクール開催の話を聞いたときは、古楽器を知ることから音楽にアプローチする流れがやはり来たな、嬉しいことだと思いましたね。クラシック音楽というのは古い時代から引き継がれてきたもので、だからこそ表面的でなく奥の深い魅力がある。そこを見直す風潮が生まれたということです。
 ただ、ファイナルでは大きなホールでプレイエルを弾かなくてはならなかったので、音量を出したいと思ってついモダンピアノの弾き方になったり、叩いたりしてしまうピアニストもいます。楽器を愛する技術者としては、そういう演奏のあとは楽器に駆け寄って大丈夫だったか確かめたくなってしまうけれど(笑)…しかもそれで順位が決められてしまうのですから、コンテスタントは大変だと思いました。

納屋に放置されていた、貴重なオリジナルのプレイエル

—エリックさんが出演する今回の優勝者コンサートでは、タカギクラヴィアさん所蔵の1843年製プレイエルが使われます。どんな楽器なのでしょうか?

高木 最近、この楽器の“出生証明”が確認できました。プレイエルの台帳の記述によると、1843年7月18日に完成し、10月9日に最初のオーナーとなるベルサイユのエピネイ子爵という貴族が購入したそうです。しかしいつからかずっと納屋のような場所に置かれたままになっていました。そのため虫食いなどがひどかったのですが、逆に全くオーバーホールされていない、オリジナルのとても貴重な状態でした。弦などの消耗品はフランスで仕入れたものに替え、演奏できる形に丁寧に修復しました。

川口 同じプレイエルでも時代によって変化していますから、この楽器はショパン存命中のオリジナル楽器ということでとても貴重です。アクションがダブルエスケープメントになる前という構造上の違いもありますが、使われている木材の年輪の緻密さも大きな違いなんです。地球環境の変化により、今の木材は年輪の幅が広くなってしまっているので、どんなに精密なコピー楽器を作っても、全く同じようにはならないのだそうです。

高木 そうなんですよね。ピアノには、木材の違いはもちろんですが、交換してオリジナルの状態が保てるパーツとそうでないパーツがあり、全体的にオーバーホールされると、直し手の裁量でいろいろ変わってしまうのです。その意味でこのプレイエルは貴重です。しかも内部には、ショパンの調律師だったドノゴエさんのサインが入っているので、彼が出荷前、最終仕上げのチェックをしたことは確実です。

・・・後編では、この貴重なプレイエルの魅力について、技術者・奏者双方の観点から紐解いていきます!

⇒ 後編はこちら


《公演情報》
第2回ショパン国際ピリオド楽器コンクール優勝者コンサート

第2回ショパン国際ピリオド楽器コンクール優勝者コンサート
日時:2024年1月30日(火) 19:00
会場:東京オペラシティ コンサートホール
出演:エリック・グオ(第2回ショパン国際ピリオド楽器コンクール優勝者)、鈴木優人(指揮)、バッハ・コレギウム・ジャパン
https://www.japanarts.co.jp/concert/p2059/

第2回ショパン国際ピリオド楽器コンクール優勝者 ソロ・リサイタル
2024年1月25日(木)19:00開演 静岡・アクトシティ浜松中ホール
2024年1月26日(金)19:00開演 兵庫県立芸術文化センター神戸女学院小ホール

ポーランド文化・国家遺産省/アダム・ミツキェヴィチ・インスティチュート ポーランド国立フレデリック・ショパン研究所(NIFC)
Concerts are co-organized by Adam Mickiewicz Institute / The Fryderyk Chopin Institute
Adam Mickiewicz Institute : https://culture.pl/jp/topic/asia https://iam.pl/en
The Fryderyk Chopin Institute : https://nifc.pl/pl

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