2024/2/20

ニュース

  • Facebookでシェア
  • Twitterでツイート
  • noteで書く

【インタビュー】モンテカルロ・フィルハーモニー管弦楽団 芸術監督兼音楽監督 山田和樹に聞く

山田和樹

――マエストロとモンテカルロ・フィルとの出会いについて教えてください。

出会いはとても特別なものでした。
何しろ、当時音楽監督であったヤコフ・クライツベルクさんが逝去された直後で、その代役として訪れたのが最初でしたから。2011年のことでした。オーケストラが深い悲しみに包まれているのが目に見えるようでした。監督が不在となって、今後の方向性を持つのも難しい時期で、オーケストラにとっても辛く苦しい時期だったのだと思います。
初めての共演が大成功し、すぐに良い関係が始まりました。
クライツベルクさんの後に音楽監督に就任されたのがジャンルイジ・ジェルメッティさんだったのですが、これもまた運命的でした。というのも、僕が初めて自分のお小遣いでチケットを買って行った演奏会がジェルメッティさんが指揮する日本フィルだったのです。
2回目のモンテカルロ・フィルとの共演の際に、ジェルメッティさんはわざわざリハーサルからお越しになり感激しました。そして彼の推薦によって、2014年から首席客演指揮者となり、2016年から音楽監督兼芸術監督となり、現在に至っています。
指揮者から指揮者への「禅譲」はとても珍しいケースで、大変に感謝しています。

モンテカルロ・フィルハーモニー管弦楽団

――このオーケストラの皆さんは、どのようなメンバーなのでしょうか?マエストロとはどのような関係を築いていらっしゃいますか?

モナコという土地柄もあって、フランスの気質とイタリアの気質が混じり合っているように思います。モナコはもともとサルディーニャ王国の一部でしたが、現在はイタリアの近くにありながらフランスに囲まれる形で存在しています。
ラテン気質満載のオーケストラで、一人一人のキャラクターが際立っています。
通常のシンフォニックな演奏会に加えて、オペラやバレエの公演も担っているので、大変に忙しいオーケストラです。もともとは歌劇場のオーケストラとして発足(1856年)したこともあり、ピットに入った時の柔軟性は見事で、それがシンフォニックの演奏会にも生かされています。今シーズンで、僕が監督に就任してから8年目になるのですが、事前に打ち合わせしていなくても目配せ一つでその場の演奏を変えることが出来るまでになりました。
モンテカルロ・フィルでの監督には、一切の人事権など強い権限が与えられている代わりに、音楽面だけでなく運営面にも深く関わることになります。メンバーの休暇届も僕が受理して許可しなければいけないのです(笑)
なので、オーケストラにとっての”父親”的な側面を強く感じながら仕事をしています。

――2016年9月に、首席客演指揮者から芸術監督兼音楽監督に就任されましたが、この時から今まで目指しているもの、そして今回の日本公演でそのオーケストラのどんな魅力を聴いて欲しいか教えてください。

一言でいうと、「今どき珍しい」サウンドを出すのが大きな特徴ですね。
音が合っていたり立派だったりするだけでなく、そこに香りや温度や色のようなものが常に同時に存在しているような、そんな音楽づくりをずっと目指してきました。
みんなが一斉に集中して、いわゆる”ゾーン”に入った時には、心から「世界一のオーケストラだ!」と思える凄さがあります。
監督として8年間紡いできた関係性をご覧いただきたいと思います。

――2015年4月3日の現地での記者会見(一部)の動画を見ることが出来ますが、この時の思いを聞かせてください。

動画はこちら(テレビマンユニオンチャンネル)

当時、スイス・ロマンド管弦楽団の首席客演指揮者はしていましたが、海外での監督職への就任は初めてのことで、すべてが新鮮であり緊張していました。
この会見では英語でスピーチしているのですが、その中で「次のスピーチはフランス語になるでしょう」と豪語してしまい、自分で自分の首を絞めることになりました(笑)
まだ監督職の本当の仕事を理解していない頃だった代わりに、未来への希望に胸膨らませていたとも言えます。

藤田真央

――藤田真央さんの魅力についてお聞かせください。

真央君は一種の天才です。
確かに地球上に存在していながら、どこか違う星から来たのではないかという超人間性を音楽の中に感じることができます。屈託のない透き通った直向きな彼の心に触れているだけで、周りの人は幸せになることができます。
どこか顔が似ているのか、ちょうど20歳離れていることもあって、よく「親子」と言われたりします。真央君には本当のお父さんがもちろんいる訳でお会いしたこともあるのですが、真央君は僕のことを「パパ」と呼んでくれて慕ってくれるのがまた嬉しいです。
彼の魅力は、音楽を超えたところにも存在していて、それこそが誰もが持っている才能ではなく、多くの人を惹きつけてやまずに、常に更なる上のステージへと向かう原動力にもなっているのでしょう。次々とやってくる大舞台を飄々とこなしている真央君がまたカッコイイし、カワイイのです。

――今回のプログラム(特に、幻想交響曲、オルガン付き)の聴きどころを教えてください。

大変に思い入れのある曲目ばかりが並んでいます。
幻想交響曲は、(優勝した)ブザンソンコンクールでの本選で指揮した曲目だったのと、それから程なく客演したパリ管弦楽団とも演奏しました。最近では、ボストン交響楽団でのデビューでも取り上げていて、いわゆる”勝負曲”になっています。一言でいうと「狂気」に溢れた作品ですね。
2014年のスイス・ロマンド管弦楽団との日本ツアーでも演奏しましたが、それからちょうど10年経った今、さまざまな経験を経て進化した「幻想交響曲」を聴いていただけたらと思います。
一方、サン=サーンスのオルガン交響曲はツアーで取り上げるのは初めてになりますが、これも”勝負曲”と言えます。1楽章の後半で初めてオルガンが出てきてからの美しい旋律にはいつも涙が滲んでしまいます。豪華・壮麗というスペクタクルな面も強くありますが、美しいハーモニーによる微妙な色の変化などの繊細さにも富んでいる曲です。
どちらの交響曲も非常にドラマティックであり、毎回違ったドラマが展開していくでしょう。

――マエストロとモンテカルロ・フィルとの日本公演は初めてです。このツアーへの思いや意気込みをお聞かせください。

実は、もっと早くに日本公演を行う計画もあったのですが、時期尚早ということで見送った経緯があります。都合8年間も計画を温めていたツアーだけに、まさに「満を持して」といった面持ちです。メンバー全員が来日を心待ちにしています。お客様との出会いを得て、日本公演ならではの化学反応が起こることを期待しています。


《公演情報》
山田和樹指揮 モンテカルロ・フィルハーモニー管弦楽団 ピアノ:藤田真央

躍動する若き巨匠が南欧の名門と魅せる壮麗な響き
<RMF&山田和樹 グローバル プロジェクト>
山田和樹指揮 モンテカルロ・フィルハーモニー管弦楽団 ピアノ:藤田真央
2024年5月27日(月) 19:00 サントリーホール
2024年5月28日(火) 19:00 サントリーホール
2024年5月31日(金) 18:30 ロームシアター京都 メインホール
https://www.japanarts.co.jp/concert/p2071/


◆山田和樹のアーティストページはこちらから
https://www.japanarts.co.jp/artist/kazukiyamada/

◆藤田真央のアーティストページはこちらから
https://www.japanarts.co.jp/artist/maofujita/

◆モンテカルロ・フィルハーモニー管弦楽団のアーティストページはこちらから
https://www.japanarts.co.jp/artist/orchestrephilharmoniquedemontecarlo/

ページ上部へ