2024/3/5
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国際的な活躍を続ける河村尚子 ブラームスへの期待
河村尚子さんのピアノに初めて接したときのことは忘れられない。2024年はデビューからちょうど20年の由。とすれば、デビュー後3年にあたるだろうか、あれは2007年の秋、東京でモーツァルトの協奏曲第23番イ長調を聴いたのだが、これが後にも先にない魅力的な23番だったのだ。
喋っている時の声、その喋り方、間の置き方、表情。そういったものがすべて人を惹きつけてやまない、そんな人間に、ごくまれに出会うことがあるだろう。言ってみれば、そうした「今どき珍しい」例に出くわした感じ。「これはずっと日本で音楽をやってきた人じゃないぞ。」そう直感してプロフィール欄を見たら、果たして、「5歳でドイツにわたる」とある。その後も、自分の意志でドイツに、ヨーロッパに残り、ピアノを学び続けたという。
以後、日本での公演はできる限り聴くようにしている。この間、さまざまなレパートリーで楽しませてくれたが、ブラームス作品も、晩年の「間奏曲」をはじめ、二つの協奏曲でも実力のほどを見せつけた。いずれもピアニスト泣かせの難曲で、第1番のほうは、弾き過ぎると手を壊すという話も聞く。そんな作品を、叙情味も豊かに聴かせるのだ。
西宮に生まれた河村さんは、デュッセルドルフ育ちで、のちにハノーファーの音大で、ロシアの巨匠、故ウラジーミル・クライネフに師事した。つまり北ドイツ出身とも言えるわけで、偶然ながら、これはブラームスのケースに似ている。デュッセルドルフのシューマン家に出入りし、シューマンから「オーケストラ曲を書くように」と励まされたブラームスが、最初に書いたオーケストラ付きの曲は、今回河村さんが演奏するピアノ協奏曲第1番であった。それをハノーファーで初演したのである。1858年のことだ。そしてその4年後に、ウィーンに足を跨み入れた・・・。
河村さんは、ウィーンを訪れた当初、「明日じゃなければ、明後日どうにかなるさ」という、どこかラテン的なウィーン気質に、長く北ドイツに暮らした者として驚いたとか。ブラームスも同じように驚いたかも? しかしこの種の違和感は、芸術には大切だ。ずっとウィーン、ずっと日本、といった「純粋培養」では、驚きは生まれない。驚きこそは、魅力的な芸術の謂いなのだ。ウィーン響との久しぶりの共演。面白いものになるに違いない。
舩木篤也(音楽評論)
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《公演情報》
楽都ウィーンの名門 注目の指揮者ヴェルバーと共に謳いあげる薫り高い響き
オメル・メイール・ヴェルバー指揮 ウィーン交響楽団
2024年3月13日(水) 19:00 サントリーホール [河村尚子 (ピアノ) 出演]
2024年3月14日(木) 19:00 サントリーホール
https://www.japanarts.co.jp/concert/p2061/
◆河村尚子のアーティストページはこちらから
⇒ https://www.japanarts.co.jp/artist/hisakokawamura/
◆ウィーン交響楽団のアーティストページはこちらから
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