2014/3/10

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調律師が語るミハイル・プレトニョフとの出会いとピアノの魅力

 マエストロに初めてお会いしたのは、2012年6月。マエストロが芸術監督を務めるロシア・ナショナル管弦楽団と来日中に、浜松のカワイ本社までピアノの相談に来られた時でした。
 それまでマエストロとの接点は全くなく、巨匠ピアニストとして世界の頂点を極めながら突然ピアニスト引退宣言をして世の中を驚かせた人が何故カワイを訪問したいのか?正直言って良く分からない状況でした。しかし、並べた SHIGERU-KAWAI の鍵盤を一つづつポンポンと叩いて、「あれがモスクワ音楽院に有るピアノに一番近い」と指差された時には驚きました。まさしくそうだったからです。何故鍵盤一つで全て分かるのか?その瞬間に畏敬の念が生まれました。

プレトニョフ

 2013年3月にイタリアでクレメラータ・バルティカとのツアーでピアニスト再開を果たしたマエストロですが、私は幸運にもその時からマエストロのピアノを調律させて頂いています。それまでマエストロの生の演奏を聴いたことがありませんでした。初めて聴くマエストロのピアノ演奏には、ただただ驚くばかりでした。長年ピアノの調律に携わってきましたが、マエストロのピアノからは、「これがピアノなのか!?」と驚く様な音が流れてきました。ピアノがこれほどの可能性を秘めた楽器なのだという事に気付き、ピアノの新たな奥深さを知りました。音色もテンポも、楽譜通り。自分が弾けるからこう弾く、というのでなく、この楽曲があるからこの様に弾く、というマエストロの演奏は譜面に忠実で、ここまで譜面通りに演奏をする人は他にはいないのではないか?と思われました。

 ヨーロッパ各地でのコンチェルトでの調律を経て、昨年12月にモスクワ音楽院小ホールで行われたリサイタルの調律も行いました。モーツァルトの2曲のソナタ、シューベルトのユモレスク、バッハのイギリス組曲からの作品に加えて最後にはスクリャービンの24のプレリュードというプログラムでしたが、マエストロはリハーサル時から入念に音色とホールの響きをチェックし、ピアノから出てくる音をご自分でコントロールされていました。ピアノの88鍵の一つ一つの性格を見出し、鍵盤とペダルの関係も把握されている様で、この様に一つ一つの鍵盤の性格を知ろうとするピアニストには今迄会ったことがありませんでした。

 600席位のホールでしたが、演奏会ではマエストロのピアノから流れてくる音に驚きました。曲によって全く違う音色が流れ出してきたからです。まるで作曲当時の音色を感じさせる様な演奏。モーツァルト、バッハにはあたかも宮廷や教会で聴いている様な錯覚を覚えましたし、スクリャービンの雄大なる響きも見事でした。

 マエストロは巨匠ピアニストですが、一つ一つのステージ真剣に取り組まれ、超人的な集中力を持ったピアニストです。昨年の3月に初めて演奏を聴いた時には、“ただただ仰天”したのですが、何回調律を重ねてもその驚きは全く薄れることなく、逆に毎回違う一面を見ることが出来、驚きの連続です。

 この5~6月に、8年のブランクを置いて行われるアジアでのピアニスト再開ツアーでは SHIGERU-KAWAIを使用。私共が調律を担当させて頂きます。今度はどの様な驚きがあるのか?私も心待ちにしております。

カワイ音楽振興会
アーティストサービス室
コンサートピアノ技師
小宮山 淳

プレトニョフ

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ついに復活!ロシア・ピアニズムの巨匠
ミハイル・プレトニョフ リサイタル&コンチェルト

<<協奏曲の夕べ>>
2014年05月27日(火) 19時開演 東京オペラシティ コンサートホール
<<リサイタル>>
2014年05月29日(木) 19時開演 東京オペラシティ コンサートホール

プレトニョフ

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