2024/8/23
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【インタビュー】庄司紗矢香
唯一無二の芸術性が世界中で評価されているヴァイオリンの庄司紗矢香。近年、美術や舞踏の第一人者とのコラボで芸術の新境地を切り開く姿も注目されています。10月来日のアラン・アルティノグル指揮フランクフルト放送交響楽団とはブラームスの協奏曲で共演!インタビューでは、ブラームスの内省的な静けさ、爆発的なエネルギーなどについて語っています。
2024年1月にフランクフルト放送交響楽団と現地で共演しています。共演はいかがでしたか?
「恐らく現在世界最高峰のオーケストラ」と音楽仲間から聞いていた通り、素晴らしいオーケストラでした。初めての共演でシューマンの協奏曲を依頼していただき、とても光栄でした。また日本ツアーもご一緒できると決まり、とても嬉しいです。
オペラの指揮者としても大活躍のアラン・アルティノグルさんとの共演は初めてでしょうか。どのような共演になると期待していますか?
インタビューで「言葉とルバート*のつながり」に関してお話しされていたのが印象的でした。私自身、言葉と音楽は切り離せないものだと思っています。またルバートは最も重要なエレメントの一つです。時々ブラームスやシュトラウスの歌曲をヴァイオリンで弾いてみることがありますが、それは作曲家の音楽と、言葉の響き、色、長さ、意味や抑揚などを、いかに音に込められるかを試みるためです。
*テンポを揺らす演奏表現
ブラームスはお好きですか?ブラームスのヴァイオリン協奏曲の魅力について、お聞かせください。
ブラームスとシューマンは異なった性質ながら、私が一番近く感じる二人の作曲家です。内省的な静けさと動揺、大地へ響く爆発的なエネルギーを持っています。ブラームスの協奏曲は長年弾いていますが、近年はブラームスの生徒達の証言や録音からインスピレーションを得ています。ルバートや流動性、不均等な音の長さ(イネガル)は特筆すべきです。また直筆のスコアからは、ヨアヒム*の直しが入る以前、ブラームスがピアニスト的な視点から楽譜を書いている(音楽を感じている)ことがよくわかります。ヨアヒムの直しは最もなのですが、彼は常にヴァイオリニスト的視点から決めているので、時として大切なブラームスのフレージングを不必要に変えてしまっている箇所もあります。何処までがヨアヒムの意見に合意であり何処まで反対かは個人それぞれだと思いますが、私はブラームスにできる限り寄り添う形で私なりの結論を出して取り組み直しています。
*ヨーゼフ・ヨアヒム ブラームスのヴァイオリン協奏曲の初演ヴァイオリニスト
美術や舞踏の第一人者とのコラボも多く、芸術の新境地を切り開いていらっしゃる姿も注目されています。異なる分野の芸術家たちとのコラボに、どのような影響を受けますか?音楽にも影響は大きいでしょうか。
2007年からシンエステジア(共感覚)というプロジェクトをコツコツと続けています。私は元々純音楽が何より大好きですが、音楽は芸術の一部であり、他の美的感覚(社会)を知らずに音楽のみ切り離すことはできないと考えます。ベートーヴェンの音楽は万人に理解されますが、演奏家としてはゲーテやシェークスピアの世界に全く共感せずにベートーヴェンの世界を「表現」することは難しいと思うのです。別の例えで言えば、現代社会に共感せずしてラップやヒップホップを作曲/表現するのは困難でしょう。私が、音楽が芸術の一部であると言うのは、その意味です。音楽のためにコラボが必要であるとは思っていませんし、表面的なコラボに何かしらの意義があるとは考えていません。勅使川原三郎氏と杉本博司氏のお二方とは長年コラボさせていただいていますが、それは深いところで共鳴する感受性と分かち合う哲学が背景にあるからです。シネステジアを始める際、多様なジャンルの芸術家のやり取りがもっとあってもよいのではないかという考えが根底にありました。別のジャンルの芸術家と一丸となって、エンターテイメントとは異なる「芸術」としての音楽は何なのか?を問いかけるエキサイティングな挑戦なのです。
これからの抱負をお聞かせください。
まだ弾いていなくて勉強したい曲はありますが、近年は私にとって本当に大切に感じるレパートリーを深めていくことを目標にしています。今後も音楽職人として一つ一つの演奏会へ全精神を注いでいければと思っています。
日本のファンへのメッセージをお願いいたします。
日本にはコロナ以後、帰る機会が少なくなってしまいましたが、やっとまた帰国できることが楽しみです。フランクフルト放送響は本当に素晴らしいのでお楽しみに!
取材:ジャパン・アーツ
《公演情報》
大和証券グループ Presents
フランクフルト放送交響楽団
指揮:アラン・アルティノグル
2024年10月15日(火)19:00 サントリーホール [ブルース・リウ(ピアノ)出演]
2024年10月20日(日)13:30 横浜みなとみらいホール [庄司紗矢香(ヴァイオリン)出演]
2024年10月21日(月)19:00 サントリーホール [庄司紗矢香(ヴァイオリン)出演]
https://www.japanarts.co.jp/concert/p2082/
◆フランクフルト放送交響楽団のアーティストページはこちらから
⇒ https://www.japanarts.co.jp/artist/hr/
◆庄司紗矢香のアーティストページはこちらから
⇒ https://www.japanarts.co.jp/artist/sayakashoji/