2024/10/11

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指揮者サカリ・オラモ インタビュー【前編】

インタビュー・執筆:高坂はる香(音楽ライター)

ーケルン・ギュルツェニヒ管の音に包まれると
 最高品質のオリーブオイルでマッサージを受けているような心地よさがありますー

 2025年2月、ドイツの歴史ある楽団 ケルン・ギュルツェニヒ管弦楽団を率いて日本ツアーを行う指揮者のサカリ・オラモに、インタビューを行いました。
前編・後編に分けてお届けいたします。

—ケルン・ギュルツェニヒ管弦楽団の特徴や魅力を教えてください。
 オペラのオーケストラでもあるので、非常に反応が早いところが魅力です。ただ走り続けるだけで細かい変化に注意を払わないオーケストラを、私は“ロールス・ロイス・オーケストラ”と呼んでいるのですが(笑)、そういう楽団とは全く異なり、大きな室内楽団のような反応があります。
 そして、ドイツの伝統的な音色を持っています。メンバーは国際的ですが、彼らの多くはドイツで学び、活動してきた人たちです。金管楽器など典型的で、丸みを帯び、ロマンチックで温かいドイツの音がします。
 例えるなら、最高品質のオリーブオイルのようです。彼らの演奏を聴くと、温めたエクストラ・バージン・オリーブオイルでマッサージを受けているような心地よさが感じられると思います!
 例えば比較すると、イギリスのオーケストラは、もう少し華やかで、ストレートでパンチが効いていて、リズミカルです。私はBBC交響楽団の首席指揮者を務めていますが、音の特徴が全く別です。
 今や世界のオーケストラは似てくる傾向にあり、100年前ほどの違いは見られなくなりましたが、演奏の文化、一緒に音を出す時の習慣はそれぞれ異なり、それが音楽に違いをもたらします。それを感じながら、オーケストラの奏法を存分に生かし、長所を最大限に引き出しつつ、私自身も聴きたいと感じる音楽を目指しています。

—さまざまなオーケストラで指揮をされる中、心地よさを感じるのはどんな楽団ですか?
 まずひとつのポイントは、オーケストラが、私が何をしようとしているかを理解してくれるか、私の考えに賛成してくれそうかというところ。
 もう一つのポイントは、探究を厭わないオーケストラかどうかというところ。私が好きなのは、途中で痺れを切らすことなく、熱心にリハーサルをしてくれるオーケストラです。細部に言及していると苛立ちが見えてくるオーケストラでは、ああ、ここは私の場所ではないのだと思います(笑)。
 細かいリハーサルを続けるうち、オーケストラが「この指揮者は我々を真剣に受け止めてくれている」と理解し、互いに平和を感じる瞬間があります。すると私も、できる限りのものを提供したいと思えるようになるのです。そしてこれはまさに、私がケルン・ギュルツェニヒ管弦楽団と初共演したときに起きたことでした。

—ソリストには、ヴァイオリンの諏訪内晶子さん、ピアノの藤田真央さんを迎えます。
 晶子さんとは20年以上前にバーミンガムで録音をご一緒したことがありますが、今回はとても久しぶりの共演です。藤田真央さんは、先日BBCプロムスの出演者としてお名前を見かけました。今度が初共演となるので、楽しみです。

後編はこちら

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