2024/10/9

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山田和樹、バーミンガム市交響楽団、熱き現地公演レポート到着!

2024年9月19日(木)に、バーミンガム市シンフォニーホールで行われた山田和樹指揮の「ベートーヴェン:交響曲第9番<合唱付き>」の現地レポートが届きました。音楽ライターの高坂はる香さんによる熱き公演レポートをぜひご覧ください。
バーミンガム市交響楽団は来年2025年6月~7月に来日ツアーを行います。ソリスト決定!曲目およびチケット発売情報は11月に発表します。どうぞご期待ください。

(c) Andrew Fox

“Kazuki Conducts Beethoven 9″と題し、9月19日に行われたバーミンガム市交響楽団のシーズン・オープニング公演。2024年5月より音楽監督となった山田和樹が、彼にとって特別なレパートリーであるベートーヴェンの〈第九〉をメインに据えたプログラムを披露した。
 ご存知のとおり日本では年末の風物詩といえる作品なので、かつての彼は年に5、6回も〈第九〉を演奏していたという。しかし30歳で拠点を海外に移してからは取り上げることをあえて避け、逆に作品と深い繋がりを感じるようになったそうだ。

(c) Andrew Fox

 今回の公演がそれ以来まだ2回目の〈第九〉であり、あわせて演奏するストラヴィンスキー、R.シュトラウスの作品とあわせて、「生きることの意味を探る」ことになるだろうと、山田はプログラムに記していた。

 山田がステージに現れると、まずそれだけで客席から歓声が上がる。
 ストラヴィンスキー「管楽器のための交響曲」で、華やかな個々の管楽器を混ぜ合わせ、ともに歩むような音楽で冒頭を飾る。
 ここで彼がマイクをとると、客席はそのユーモアを交えたトークをお待ちかねという雰囲気。日本でもお馴染みのまるで噺家のような絶妙な間合いの喋りに、客席が笑いに包まれる。
 そしてガラリと雰囲気を変え、R.シュトラウスが第二次世界大戦の終戦直前に書いた「メタモルフォーゼン」へ。

(c) Andrew Fox

 山田のタクトに弦楽奏者たちが応え、注意深く柔らかい音を重ね合わせていく。綿密なリハーサルと互いの信頼関係があってこそ実現すると思われる、極限まで絞られた弱音、集中力の高い表現に、鳥肌が立った。
 こういう曲なので、最後の音から拍手までにいくらかの静寂があったわけだが、その間、近くで誰かが思わず「Brilliant…」とささやいたその言葉に心から同意しつつ、拍手を贈ることになった。

 そして後半、すでにホールにはこれから始まるベートーヴェンの世界への期待が溢れた状態だ。
 無から何かが生まれ、膨らんでいく。1楽章の終わり、客席から思わずパラパラと拍手が起きると、山田がそれを促す。そう、これは人類愛を叫ぶ芸術なのだから、楽章間の拍手が良いも悪いもない。心をざわつかせる時点でナンセンスだ。そんな平和で友愛的な空気を自然と作り出せることも含めて、バーミンガムの聴衆は“カズキ”を愛しているのだろう。
 オーケストラはもちろん、客席もひとつになり、その一体感の中で音楽は進んでゆく。山田のタクトに応えてオーケストラから大きなパワーが放出される。舞台後方に立つ4人のソリストの力強い歌声と、合唱による歓喜の歌が、明るい希望にあふれるエネルギーを放ちながらフィナーレへ。一斉にスタンディングオベーションが起こり、特別な高揚感がホール全体を満たした。
 音楽家たちの関係性の良さがわかる丁寧なカーテンコールを終え、会場を出てもなお、聴衆から滲み出る「楽しかった!」という雰囲気が、コンサートの幸せな余韻をより大きくしてくれた。

「バーミンガムは気取ったものは好まない。地に足のついた人が好かれるのだ。だからカズキ・ヤマダは愛されているのだろうね」と、この地出身の友人が話していた。
 ステージと客席の境界を取り払い、音楽の喜びを分かち合いたいという山田の姿勢が、バーミンガムの人々から大いに受け入れられ、愛されている様子を目の当たりにする一夜だった。

(c) Andrew Fox

高坂はる香(音楽ライター)


《公演情報》
RMF & 山田和樹 グローバル・プロジェクト
山田和樹指揮バーミンガム市交響楽団
ソリスト決定!
https://www.japanarts.co.jp/news/p8764/

2025年6月30日(月)19:00 東京オペラシティ コンサートホール チェロ:シェク・カネー=メイソン
2025年7月1日(火)19:00 サントリーホール ピアノ:河村尚子
2025年7月2日(水)19:00 サントリーホール ピアノ:イム・ユンチャン
2025年7月5日(土)15:00 ロームシアター京都 メインホール チェロ:シェク・カネー=メイソン

[チケット発売情報は2024年11月に発表予定!]

主催:公益財団法人 ローム ミュージック ファンデーション/ジャパン・アーツ
特別協賛:ローム株式会社

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