2024/11/5

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【インタビュー】パーヴォ・ヤルヴィ

お待たせいたしました!パーヴォ・ヤルヴィのインタビューをお届けします!ドイツ・カンマーフィル芸術監督20周年記念公演の翌日のインタビューです。「モーツァルトの旅を始めることこそが私の願いであり、夢だった」と語るパーヴォ・ヤルヴィ。モーツァルトをたっぷり楽しめる今回のプログラムも、まさに夢のようです。

パーヴォ・ヤルヴィ インタビュー

中村真人(音楽ジャーナリスト/ベルリン在住)

パーヴォ・ヤルヴィ

-今の時代、一人の指揮者が20年間オーケストラのシェフを続ける例は稀です。ヤルヴィさんにとってドイツ・カンマーフィルとはどのようなオケでしょうか。

 ドイツ・カンマーフィルはすべてにおいて特別なオケです。もともとは一緒に演奏しようという若者の熱狂的なグループから活動が始まりました。ゆえに、彼らは受け身でいることを何より嫌い、メンバー一人ひとりが自主的に楽団を運営しています。芸術的な決定にも自ら関わろうとする。つまり彼らは「誰かのために」働いているのではありません。その類まれな集団的な意志により、このオケは永遠の若さを保っていられるのです。

 もうひとつ、他のオーケストラとの違いは、常に長期的なプロジェクトを持っているということです。我々は一人の作曲家を取り上げ、完全にその世界に没頭します。レコーディングの前にツアーを行い、さらにリハーサルを重ねます。

-2006年の初来日では横浜みなとみらいホールでベートーヴェンの交響曲ツィクルスを行い、日本でのこのコンビの評価を一気に高めました。

 まず申し上げたいのは、私は日本の聴衆の皆さんが大好きだということ。とても熱心かつ献身的です。あの時のベートーヴェン・ツィクルスの後、私たちに「新しい仲間」ができたのを感じました。ですから、このオケと日本に来る度に、故郷に帰ってきたような、心温まる気持ちになるんです。

-今回のプログラムを見ると、モーツァルト、ベートーヴェン、シューベルトというウィーンゆかりの作曲家の作品が並びます。現在、ヤルヴィさんとドイツ・カンマーフィルは、その祖といえるハイドンのロンドン交響曲集に集中的に取り組んでいらっしゃいますね。

 ええ、すべてはつながっています。ハイドンがなければベートーヴェンもないし、モーツァルトもシューベルトもシューマンもありませんでした。最後はハイドンにつながり、帰結するのです。私は小さい頃からハイドンが大好きで、父(ネーメ・ヤルヴィ)とよく連弾で彼の交響曲を弾いていました。父はモスクワやレニングラードのオーケストラと国外ツアーを行うことを許されたので、ハイドンの重要な録音をすべて持っていました。私とハイドンとのつながりは、文字通り幼少期からのものなんです。

パーヴォ・ヤルヴィ ドイツ・カンマーフィルハーモニー交響楽団

写真提供:ドイツ・カンマーフィルハーモニー交響楽団
(写真は2024年4月24日公演のもの)

-昨晩のブレーメンでのコンサートではシューベルトの第1番と第2番の交響曲が取り上げられましたが、実に素晴らしかったです。12月の来日公演では、第7番《未完成》が演目に含まれています。初期交響曲との違いをどう見ていらっしゃいますか?

 私は交響曲を年代順に演奏するのが好きです。その発展段階を直に感じることができるからです。私はシューベルトの第1番が好きですが、第2番では明確な進歩が見られます。第3番で彼はすでに別の次元にいます。特に第1番と第2番では初期のベートーヴェンと同じ音の世界を持つ必要があり、古典的なリズムの活力が求められます。フィナーレなど、まさにハイドンの精神ですよね。

 それに比べると、のちの《未完成》は極端なほどの隔たりがあり、感情的に成熟しています。ここでのシューベルトは、人間存在の死と深さ、悲劇を理解している人です。

パーヴォ・ヤルヴィ ドイツ・カンマーフィルハーモニー交響楽団

写真提供:ドイツ・カンマーフィルハーモニー交響楽団
(写真は2024年4月24日公演のもの)

-今回の来日公演では、モーツァルトの交響曲第41番《ジュピター》がメインに組まれているのが目を引きました。

 ドイツ・カンマーフィルはモーツァルトの経験が豊富です。しかし、私は彼らと他のプロジェクトがあったので、これまであまりモーツァルトを共演していません。モーツァルトの旅を始めることこそが私の願いであり、夢でした。そして今、私たちがどのように一緒にやっていくのかを見てみたいと思っています。このプログラムの3曲はすべて天才的な傑作で、中でも《ジュピター》交響曲ではモーツァルトが成し遂げた最高の業績を聴くことができます。私はモーツァルトのドラマに理解のあるこのオーケストラと、日本の聴衆の皆さまにこれらの作品を紹介したいのです。

ヒラリー・ハーン、ラファウ・ブレハッチ

-プログラムの前半では、ヒラリー・ハーンがベートーヴェンのヴァイオリン協奏曲を、そしてラファウ・ブレハッチがモーツァルトのピアノ協奏曲第23番を披露しますね

 ヒラリーは私たちのオーケストラにとって長年の友人であり、これまで数多く共演してきました。事実上、ドイツ・カンマーフィルのメンバーと言っていい特別な存在です。私たちは、彼女と一緒に音楽を作ることをいつも楽しみにしています。偉大な音楽家であり、人間的にも素晴らしい。

 ラファウ・ブレハッチとは今回が初共演になります。彼との共演にも私たちは期待に胸をふくらませています。

(2024年4月12日、ブレーメンにて)


《公演情報》
SEKIDO クラシックシリーズ
パーヴォ・ヤルヴィ指揮 ドイツ・カンマーフィルハーモニー管弦楽団
2024年12月8日(日)16:00 横浜みなとみらいホール [ラファウ・ブレハッチ(ピアノ)出演]
2024年12月9日(月)19:00 東京オペラシティ コンサートホール [ヒラリー・ハーン(ヴァイオリン)出演]
2024年12月12日(木)19:00 東京オペラシティ コンサートホール [ヒラリー・ハーン(ヴァイオリン)出演]
https://www.japanarts.co.jp/concert/p2097/

[そのほか全国公演日程]
12月7日(土)熊本県立劇場コンサートホール [ラファウ・ブレハッチ(ピアノ)出演]
12月10日(火)文京シビックホール [ヒラリー・ハーン(ヴァイオリン)出演]
12月13日(金)所沢市民文化センター ミューズ アークホール
12月14日(土)兵庫県立芸術文化センター KOBELCO大ホール [ヒラリー・ハーン(ヴァイオリン)出演]
12月15日(日)iichiko総合文化センター iichikoグランシアタ [ヒラリー・ハーン(ヴァイオリン)出演]

ドイツ・カンマーフィルハーモニー管弦楽団 パーヴォ・ヤルヴィ芸術監督20周年記念公演レポート

【インタビュー】パーヴォ・ヤルヴィ

ヒラリー・ハーン


◆パーヴォ・ヤルヴィのアーティストページはこちらから
https://www.japanarts.co.jp/artist/paavojarvi/
◆ドイツ・カンマーフィルハーモニー管弦楽団のアーティストページはこちらから
https://www.japanarts.co.jp/artist/dkambremen/

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